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リハビリテーション入院の意味

とある病院で脳卒中発症後の患者さんばかりを診ていたころの思い出です。
まだ脳卒中地域連携パスが稼働していなかった時期でした。
急性期病院から患者さん家族が情報提供書を持参します。
患者さんに会うことはほとんどありません。
家族から、いまどういう状態か、これからどうしていきたいかを聞き取りながら、私の治療方針を説明します。
入院期間に制限があること。
リハビリテーション入院期間だけでは元の体に戻らないこと。
を説明していくと、家族は心配そうな表情になります。

完全にしてから家に帰してください。
長くなってもかまいません。
と話す家族もいました。
これって本音です。

長くなって、元に戻らないと分かった時はどうしたいですか?
と考えてもらいます。
家族が急に脳卒中になって、訳がわからないうちに転院と言われて困っているのにそんなこと言われても。と怒るご家族もいました。
でも、私としては考えて欲しいのです。
患者さんと家族のこれからを。そのきっかけを作りたいと思っていました。

さて、この入院期間、本人にとって重要な期間であることは確かなのですが、家族にとっても大切です。
今までの家族関係を考えて、どこまで関わるか、介護するか、経済的な援助をするか、決めなければなりません。
私は入院する家族の方に
「3ヶ月はリハビリテーションを行うには短い期間ですが、家族が患者さんのこれからを考えて手続きするのには十分な期間です。どうぞ、患者さんのことを考えてください」と話していました。

一方スタッフには、良くなるひとはぐっと良くします、よくならない人はそれなりに患者さん家族がまあ満足できる期間にしてあげましょう!と話していました。
よくなる人がよくなるのは当たり前。
よくならないかもしれない人から何かを引き出すのもリハビリテーションの魅力です。

3か月でも2ヶ月でも、その中で患者さんの生活、人生と関わって、次への希望へつなげられたなら、麻痺が治らなくても価値のある入院期間になるのではないでしょうか?
そして、家族の方がその人に思いを馳せる時間に発症前よりも意味を見いただしてほしいのです。
もしかするとこの時期が真剣にその患者さんと向き合う最後の時間になるかもしれないので。

リハビリテーション入院は機能回復だけでなく、人生を振り返って、将来を考える期間です。

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