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完璧を目指すリハビリテーションで幸せから遠ざかる話
完璧を目指すと幸せから遠ざかる話
脳卒中の患者さん、骨折後の患者さんを診療している。数年前までは入院患者のリハビリテーション期間の担当をしていた。
そこで、あ、この人は難しいなと思わせる患者さん、家族さんがいた。
一つのタイプとしては、完璧に治る、全く元の生活に戻ることを当然と思っているタイプ。
極端に言うと、元に戻らなければリハビリテーションや治療も意味がないと思っている。
All or Nothing
頑張り屋さん、社会的な地位もある、家族の協力も得られる。でも、本人は「自分の体はいつ戻りますか?」とたびたび質問していたAさん。
訓練も熱心、でも右手は以前のようには動かない、しゃべりは滑らか、でも以前のように考えが進まないのでイライラした様子。
もっと良くなりたいと思うのはみな同じだが、完璧に元に戻らなければと考えるのとは全く違う。
家族には強い口調で話し、病棟でもほかの患者と話そうともせず。
自らの病室に閉じこもっている。
不思議に思うのは今まで障害がある人を見たことがないのかな?ということ。60年、70年生きてきて、周りにいなかったはずはないのに。
ご両親の老後はどうだったのか、ぽっくり亡くなったのか、あるいは病院に入院していてあまりお見舞いもできなかったのか?
自分が見ようとしなければ、ないものと同じ。
完璧を目指す努力は美しいはずなのに、幸せから離れていく。
だからこそ、今、いろいろな生き方があること、いろいろな人がいることを、若いうちに見て欲しい。