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生還した母と待ち望んでいた父の夫婦の話 傍で聞きながら高齢者医療を考えた

母が退院して来たことは数回noteで書きました。
明日は父の90歳のお誕生日です。
昨年は母が入院中、帰ってから盛大にお誕生会をしたいと父は外食から遠ざかっていました。
そして今年は母が寝たきりのため、春になって元気に鳴るまで誕生日祝いは延期すると父は宣言しました。
それだけでも、父の母の回復に対しての期待が大きいことがわかりました。

そして、結局は普通のショートケーキ(個別)を買ってお茶でお祝いしました。
母も4口、ケーキと生クリームを舐められました。
甘いものが好きではない父もぺろりと食べて、美味しい!とご機嫌です。

先ほどうつらうつらしていた母は
「パパをいたわってあげてね。家族のために一所懸命に尽くしてきた。
みんなでパパを大切にしてほしいの」
と真面目な顔で話していました。
一方、退院して来たばかりの母に触りたい父。何かと世話を焼きます。
飲み物を飲ませたり、おでこに手を当てて熱を測るような仕草をしたり。お布団をなおしたり。
微笑ましいというか、うらやましい。
心が通っている様子を見ていると一緒に住む、会って話ができる、手を握ることができるって大事なこととしみじみ思いました。

振り返ってみると、病院では人としての交流はないのです。
医療者と患者、マスクをして、触るときは手袋、食事介助も顔を背けるようにしてスプーンを向けるのが感染対策と聞いたことがあります。
家族や周囲のとの対話や働きかけが必要な高齢者や認知症の方には厳しすぎる環境です。
私たち家族は何とか心を合わせて、寝たきりであっても退院させてほしいと繰り返してお願いすることができました。
また、それをわかってくれる医師にも巡り会えました(容態が悪くなって転科した主治医は家族が自宅に受け入れたい気持ちをわかってくれたようです)

入院中、老衰だから仕方がないと病院が説明されて諦めてそのまま命が全うする人もいるのかしら、
感染対策で家族と隔絶されている高齢者、障がい者の入院を心配する気持ちが強くなります。
今まで医師として働いていて、こんなふうに不安になったことはありませんでした。

もう長くない介護生活とは思いますが入院中も含めてこの経験を伝えたいと思っています。

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