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正しいことだったら、どんな伝え方をしても良いか問題

医師として診療していると、患者さんにとって不都合なことがらを伝える機会があります。
「後遺症が残ります」
「手は元のように動きません」
「認知症は進行していくでしょう」

初見のヒト(医師であったとしても)に、このようにストレートに伝えられて、患者さんはどう感じるでしょうか。
涙を流して「私の思うとおりでした、ありがとうございます」と喜ぶなんてことはないのです。
戸惑い、腑に落ちない感、怒りとなります。
もう二度と受診したくなくなります。

リハビリテーション科医師はラッキーなことに、患者さんと経過を共にできるんです。
診察して、入院患者さんであればコミュニケーションを通して信頼関係をつくり、徐々に受け入れられるように伝えていきます。
外来では私は高次脳機能障害の方も多く診察しています。
病院の受付を一人でする、検査の手順を説明して理解するなど検査の結果だけでなく行動を通して患者さんの状態を把握をして、得意不得意両方を説明できるようにしています。
予約日を間違えた(メモがあっても忘れて行動する)
間違えたことを電話で連絡できた(失敗してもリカバリーできる)
検査は集中してできた(一定時間集中できる)
結果はどれも低い点数(机上の課題は苦手)
単純に〇と✖では評価できませんが、できなかったこととできたことを同じ数くらい伝えます。

辛い言葉も信頼している人からだったら受け入れられます。
信頼はともに過ごした時間、行動によって培われるものです。
最初にリハビリテーション科医師はラッキーと書きましたが、もっと良い立場にいるのはリハビリテーション技士たちです。
20分、40分、60分と1対1で患者さんと向き合い、行動を共にします。
訓練の時には私が以前いた病院ではリハビリテーション技士は見本となって同じ行為をするのです。
同じ動作をすると心が通ってきます。
実際に主治医よりもリハビリテーション技士の言葉をよりどころにしている患者さんは多いのです。
患者さんが信頼すれば家族にも伝わります。

忙しい医療機関ですと、医師が一人で奮闘、伝え方も急ぎ足になり、正しいことを伝えても理解されず、かえって恨まれるようなこともでてきます。
訴訟を恐れて必要以上にネガティブな情報を伝えてしまう、そういうケースも見てきました。

正しいことを言っているんだからあとは相手次第とは思わずに、
伝える時は思いやりを持って、言葉を尽くす。

「真実は残酷かもしれないが、真実の告げ方が残酷であってはならない」
白浜雅司さんの言葉だそうです。
この言葉を知って良かったと思います。



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