このエモさを知らない世代がいるんだな…と思った話。
こんにちは。カモネギ、です。
突然だが、宇多田ヒカルのデビュー曲『Autmatic』を一番最初に聴いた時のことを覚えているだろうか。
(Hikaru Utada公式YouTubeチャンネルより)
私はデビュー時から彼女の大ファンなので、彼女の作り出した曲は全て名曲で、後世に残すべき曲であると信じて疑っていないのだが、その中でもこの曲の冒頭の歌詞は他のどんな名曲も勝てないフレーズだと信じている。
しかし、私は気付いてしまった…。そう、今の若者はこのフレーズの持つエモさが分からないということに…。
言われてみればそうだ。
携帯電話は電話がかかってきたら、画面に発信者の名前が表示される。だから、名乗らなくても誰からかかってきたか分かるし、それに一喜一憂したりしない。
また、七回目のベルというが、携帯電話で電話する時、七回目まで待つだろうか。いや、待つ人もいるかもしれないが、正直七回目のベルで電話を出たとしても普通で、特別なことではない。
そう、この曲で歌われているのは、家の固定電話でやりとりをするカップルなのだ。
固定電話では、発信者の名前は出ない。そのため、基本的には名乗らないと誰からかかってきたか分からない。仮に名乗らなかったとしたら、それは悪徳業者からのセールスか、オレオレ詐欺くらいだろう。不審に思われ、切られるのがオチだ。それが名前を言わなくても分かってくれるということは、相手は自分の声を知ってるということだし、電話がかかってきても何もおかしなことはない存在であるという証拠なのだ。それが自分の恋している相手だと、どれだけ幸せなことだろう。
また、恐らく多くのカップルが電話で連絡をとるにあたり、最も頭を悩ませていたのが「本人以外の家族が出てしまった時の対応」だ。固定電話である以上、必ずしも電話をかけたい相手が出るわけではない。相手が出る前に、他の家族が出る可能性はかなり高い。もちろん何事もなく相手を呼び出せることもあるだろうが、恋人の異性の親(彼女なら父親、彼氏なら母親)が出た時の気まずさと言ったら言葉にならなかった。
電話する時間を約束すればいいじゃないかと思うかも知れないが、その約束の時間に電話の前で陣取るわけにもいかない。特に、思春期の多感な年頃の子は、いかにも電話を待っていますという姿を家族に見られることを嫌がる。そもそも約束したところで、その時間に他の電話が来ないとも限らないのだ。
そのため、カップルにとって電話とは、現在では考えられないくらいハードルが高いコミュニケーションツールだったのだ。
そう考えると、この冒頭の歌詞はかなりエモいと私と同じ世代、もしくは上の世代は感じるのだが、きっと今の若者はこのエモさを知らないのだな…と少し寂しくなった。
これからの時代、益々便利になるだろう。今街で流れている人気曲の歌詞が、ピンと来なくなる時代もくるだろう。
もちろん、いつの時代も感じ方に変わりがない曲もたくさんある。宇多田だと、『First Love』がそれに当たるだろうか。もちろんそういった曲は名曲だが、それと同じように『Autmatic』のように、時代によって感じ方が変わる曲にも名曲はたくさんあることを、少なくとも私自身は忘れたくないと思う。