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ひつじ雲 #シロクマ文芸部
夏の雲は時折黒い羊のように見える。夕立がやってくる前、空は黒い羊たちでひしめき合っているようで、雨が上がるといつの間にかいなくなって、白い羊たちが現れる。途端に空は朗らかな空気に包まれる。
放牧された羊たちはみんな家族のようで仲間のようで、なのに戯れ合う事もなく、素知らぬ顔で草をむしゃむしゃと食べている。暑い日には小さな木陰にピッタリとくっついてひしめき合う。なんといってもウールのセーターを着ているような毛皮同士でピッタリとくっついたらさらに暑いのではないかと心配になる。
白い羊たちがエバーグリーンの牧草地に点々と散りばめられて、ごく平和に見える。不思議なことに時折一匹だけ黒い羊が混じっている。一匹だけ黒くて寂しくないのかな、なんていう人間の勝手な気遣いは、てんで必要なさそうな様子で白い羊たちとご一緒している。
ところでイギリスには「Black Sheep」という言葉がある。ありのまま「黒い羊」という意味と別に、仲間(家族)の中で一人ちょっと違う人のことを指す。どんな感じの言葉かといえば、例えば、ダイアナ妃の羊柄のセーターの話がある。ダイアナ妃はロイヤルファミリーの中に迷い込んだ自分を黒い羊に重ねていたのかもしれないと。
少し脱線するけれど、そういえば「Black Mail」という言葉もイギリスの犯罪ドラマを見ているとよく出てくる。こちらは、脅迫する、という意味で使われる。強請る、にあたる。黒ってそういう色なんだな、黒魔術とか魔女とか、そういう物に繋がるせいなのか。
黒い羊の話だった。ところで黒い羊の毛皮から紡いだ糸は黒くない。焦茶。またはグレー。夜に浮かぶ雲も真っ黒ではなくて、グレーだ。よくみるともっと複雑な色をしている。いや羊じゃなくて、雲の話だった。
雲は雲だから、空と仲良くしているだけなんだ。夜になればしっとりと黒を装う。なのにどうして青空の雲は青くないのかしらとか、つい考えてしまう。どこまで行っても脱線から抜け出せない。
🐑
小牧部長、今週はエッセイを書いてみました。どうぞよろしくお願いします。
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関東地区でも地震がありましたね。
びっくりして、母と二人でダイニングテーブルの下に隠れました。
すぐに娘に電話したら
揺れてる😢 揺れてる😢
娘は12階に住んでいるのできっと体感震度5くらいだったことでしょう。
みなさん、お互い気をつけて過ごしましょうね。