#BlackLivesMatter: 動物園に展示されたオタ・ベンガの一生
今からたった100年前のこと、欧米諸国にある動物園では”動物以外”のモノも展示されていました。
今日の私たちには衝撃的なものに聞こえますが、いわゆる人種展示がヨーロッパ全域でたくさんの人々の関心を引いていたのです。
19世紀末の動物園の発達の中で、登場することになった<人種展示>
哲学者・Olivier Razacによると、1877年から1912年まで24回にわたる人種展示会がパリで開催されたと言います。
この展示会の主人公は”エスキモー人・南アメリカ・パンパの子供・”ガリビ族・インド人・カリブのインディアン”など。
”黒色人種”もその、見世物の1つでした。
1904年に開催されたセントルイス万国博覧会では、『人類の全ての人種をパノラマのように見せるという抱負』を掲げ、彼らは多様な種族たちを見せることに力を注ぎます。
セントルイス博覧会で人気を特に引いたのがアフリカのガーナからきたピグミー族の展示でした。
今回は、ピグミー族のオタ・ベンガ(1883~1916)の悲劇的な人生についてお話をしたいと思います。
ベンガをコンゴからアメリカに連れてきたのは、「ピグミー族の一人を連れて来い」との注文を受け、コンゴを旅行していた探検家であり事業家であるサミュエル・ヴェルナー。
彼は、ベンガを連れて行く対価として1パウンドの塩といくつかの服を商人に支払いました。
アメリカに到着するやいなやセントルイス万国博覧会に展示され始めたベンガーは、すぐに沢山の観客の注目を集めます。
ベンガはとても温厚な性格を持っていました。
ピグミー族は儀礼のひとつとして、歯を鋭く研ぐのですが、観客たちはそれを見に博覧会に足を運び、当時の新聞たちは、アメリカにいる唯一の本当の”食人種”という言葉とともにベンガーの写真を掲載しました。
セントルイス万国博覧会が終わった後、ヴェルナーとともに一度コンゴに戻ったベンガはもう一度アメリカに連れ戻されました。
今度は、ニューヨークの自然史博物館とブロンクス動物園にある<猿の家>で”野蛮人”の標本として、猿と同じ檻の中で展示されたのです。
<猿の家>はたくさんの論争とともに幕を下ろすこととなりました。展示品として連れてこられたベンガの需要は無くなり、当時すでに成人であったにも関わらず彼は孤児院に送られました。
その後、タバコ工場の労働者としてなんとかアメリカで生活を続けていましたが、
32歳になった年に、銃で自らの命を絶ちました。
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この全てのストーリーが、実際に起こったことというのが信じられませんよね。
何よりも、当時は当然のように違う人種を檻の中に入れて見世物にしていたという事実がとても怖いです。
オタ・ベンガと彼の悲しい人生は、18 世紀に登場し、20世紀の初めまで大きな人気を集めた人種進化論の産物です。
人種進化論は、ダーウィンの進化論と植民主義的”人種”概念が結合したものであり、多様な人間集団たちを1つの進化論的発達状態、またはヒエラルキーの中で人種をランク付けし、規定しようとする試みでもありました。
そもそも、人種という用語は17世紀に登場し、はじめから”違い”を優越観念の中で見ようとする概念でした。
例えば、19世紀のフランスの知識人であったジョセフ・ゴビノーは<諸人種の不平等に関する試論>において、ヨーロッパ人たちの優越性を賛美し、白色人種から離れて行くほど極度の醜さと劣等さの形態を大量生産するようになるだろうと主張しました。
人種進化論は、社会的論議として持ち出される人種的ヒエラルキーを、進化論という科学的知識に結びつけ確固たるものにしようとし、当時のヨーロッパとアメリカでは、権威のある人類学的知識として受け入れられました。
その時の人類学的イラストを見れば、白人を象徴するアポロンとヒト科に属するチンパンジーの間に黒人の頭を描いた絵や、木の上に黒人、チンパンジー、オラウータン、ゴリラが共に描かれています。
前者の場合、白人・黒人・ヒト科の動物の進化論的違いとヒエラルキーを。
後者はヒト科動物と同じように考えられる黒人の進化論的状態、またはいまだに”自然”の状態に置かれているとみなされる黒人の人種的劣等さを象徴しています。
つまり、ここから”黒色人種”は文明:自然、または人間:動物という近代的二分法から後者に近い存在として規定されていたことが分かります。
同じ人間であるのに、なぜこうも残酷な行為や発言ができるのか…全く理解ができませんよね。
白人至上主義者たちは、自分は誰かよりも優越な存在であると思うことで、自分の存在を認めていたのでしょう。
今アメリカで社会問題となっているGeorge Floydさんの悲しい事件を始め、罪のない沢山の方が、アメリカのみならず世界各国で命を落としています。
もちろん、今回言及したオタ・ベンガさんもその被害者です。
これからnoteでは今までの人種差別の流れや、変革を色々な視点から調査し、皆さんにお伝えします。
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