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坂道を登りきって見える景色

前の職場でのこと。
隣の席の同僚と話してて何かの拍子に、過去に通った講座の話が出た。

「えっ、あの講座通ったの?高かったでしょう!どうだった?」
と訊かれたので
「わたしは通って良かったと思う。後悔はしていない」
と答えたら、
「後悔してないのは、どうして?」
と返ってきた。

「……自信がついたから。この道に進んでいいんだなぁって自信がついた。……課題が出されるでしょう。成績上位の常連になれたの。1回きりだったらまぐれかも、って悩んだと思うけど、何回も1番貰えたからこの道に進んでいいんだなぁって思えた」

って話をしたら、同僚は納得した表情を見せた。

フルタイムで働きながら講座に通って、課題も山。
睡眠時間が本当に少ししか取れなくてしんどかったときもあったし、正直、一人暮らしのわたしにとって受講料は高かった。

「ずっとずっと憧れてきたこの職業に就けるかどうかの瀬戸際にわたしはいる。
ここでなんとかしなければ一生、この業界には入れない」
というプレッシャーもあった。

プレッシャーと仕事の重圧で倒れそうな中、プライベートの時間を削って頑張って課題を提出し続けた。


課題の返却時、最後の最後に名前を呼ばれた。ふわふわとした足取りで歩いて、課題上位に入った人だけがもらえる記念品と自分が書いた課題を受け取った。

「うわぁ……。」


泣きそうだったのを必死でこらえた。


いろいろなことが重なってご飯を食べられなくなってひと夏で6キロ痩せたり、精神的にも極限に追い込まれた中で受講を決意した。
正直、死ぬか頑張るか、という感じだった。
大変だったけれど、本当にちっとも後悔していない。

いまでも思う。
頑張れる時に頑張らなくて、何が人生だ。

あの頃のわたしがあるから、いまのわたしがいるのだ。

坂道を何度、どれだけ登っても坂道はさらに続く。
それが人生というもの。

だけれども、苦しい思いをして登りきって見下ろす景色には、なんとも言えないものがある。
もちろん坂道は続いていく。
人生が続く限り。

だけれどもわたしは、逆境のなか登りきった坂道のことを決して忘れない。

人生には、諦めずに頑張り続けた人にだけ見える尊い景色があるのだ。

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歌久妃(かぐや)
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