ワープロで原稿を清書する。今考えると効率的なのかなんなのかよくわからないデジタル創生期の作業。
今までしてきた仕事や、仕事らしきものについて書いています。
今回はデザイナー駆け出しの頃の話。
写植屋やドイツでのアルバイトを経て、最初に入ったデザイン事務所。
まともなデザインの仕事をさせてもらえるようになるまでがちょっとした地獄でしたが(実際、絶望して退職しかけた)、イラストを描くというのが唯一の救いではありました。
イラストはあの頃の駆け出しデザイナーの仕事のひとつ。下働きが多い中で、これだけは先輩に引けを取らず勝負できる、数少ない仕事だったとも言えるかも。
毎月担当していたのは、住宅関係のPR誌の表4に連載されていたエッセイにつける挿絵でした。なぜかこの仕事だけは(クライアント含め)誰からもなんの指示もなく、修正すら入らず、原稿を頼りに毎回少し逸脱しながら、割と自由に描かせてもらっていました。著者である住宅評論家の先生にも気に入っていただいていた模様。
イラストを描いている流れで、写植(印刷の元となる“版下”に貼り付ける文字組の印画紙)の手配もしていました。
まだMacは普及していない頃。先生からFAXで届いた原稿に、書体、級数、行送などのほか、原稿用紙のマス目を見ながら行替えの箇所を指定し、字切りの良いところで切れるように指示を入れます。それを写植屋さんにFAXで発注。
ところがこの原稿。先生の手書きなんですが達筆すぎて、なんていう文字だろう?と首をひねること多数。学生時代に校正の仕事をしていたおかげで、なんとか読めるんですが、そんな私でも解読にちょっと時間がかかる。写植のオペレーターさんのために楷書で書き添えるんですが、推敲して欄外に書き直している箇所ももともとあったりして(昔の原稿ってだいたいそんな感じと思うけど)、なんとも見づらい。
ちょうどその頃、兄から中古のワープロを譲り受けていたので、手書きの原稿から打ち替えて見やすい原稿にするというのをやってみることにしました。
PC手前の存在であるワープロも、今のコンピュータとは様子はだいぶ異なります。使っていたのがどのくらいだったか記憶が定かでないけど、この頃の個人向けワープロは電卓のでっかいのみたいな感じで、細長い画面に出るのが1行とか3行とかその程度。
最初からの文章を打つには全体が見えないのでちょっとやりにくいと思うんですが、このくらいの作業には対応できます。それをプリントして指示を入れてFAX。
こちらで打ち込む作業は増えたものの、文字数を数えたり、行替えの指示をするのが簡素化され、また、すんなり読めるのでオペレーターさんには感謝されました。
今からすると、打ち込んだものをプリントアウトしてFAXで送って写植に打ち替えてもらうとか、デジタルなんだかアナログなんだかよくわからないですが、コンピュータ導入期はこういう行ったり来たりの作業が多かった。
私物のワープロを持ち込み、指示されていない工程を加えているので、社長に何か言われるかと少しかまえていたら、逆に思うところがあったようで、その後、コンピュータ導入のためのリサーチに駆り出されることになりました。