ミャンマーでの非暴力不服従運動の歴史的意義
2021年2月1日、ミャンマー軍部がクーデターを起こしました。軍部は昨年の総選挙が不正選挙であったと言い立てています。そして、アウン・サン・スー・チー氏ら最大政党であるNDL(民主連盟)の幹部を拘束しました。
ミャンマーの人びとはクーデタ発生以降、粘り強く軍事政権への抗議行動を続けています。軍事政権は次第に弾圧を激化させ、非暴力の人びとを銃撃しています。すでに子どもを含めて死者は200人以上と報じられています(3月20日現在)。
人びとはさまざまな手法で非暴力不服従運動を展開しています。CDM(Civil Disobedience Movement:市民的不服従運動)と呼ばれています。2月22日には「22222運動」と呼ばれる大規模な抗議行動が行われました。
鍋やフライパンを叩いて音を出す。自動車のクラクションを鳴らす。
自発的ストライキ(就業拒否)。
医療従事者、工場労働者、公務員、教員、鉄道職員、税務職員、銀行員など幅広い職種の労働者がストライキに参加しています。3月7日、複数の労働組合が「民主主義を救うためのゼネスト」を呼びかける共同声明を出しました。
デモ・集会。
路上で音楽演奏する、抵抗歌(プロテストソング)を歌う、踊るなどの行動も展開しています。バイクや自転車で集団走行しながらの抗議も。
「ダイ・イン」(死者のように地面に横たわって意思表示する)
プラカードや横断幕に英語表記のメッセージを書き記す。
ニュース、動画・画像を通じて世界の人びとに伝えようという意図がうかがえます。「私たちは軍事クーデターを受け入れない」「私たちの投票を尊重して」「私たちは正義、民主主義を求めている」といった訴えが読み取れます。「CDMに参加しよう」「CRPM(NLD議員らによる政府組織)を支持する」も多くなりました。ある女性が掲げていた「軍事政権が手にしているのは銃、私たちが手にしているのは連帯」という言葉は胸に迫りました。また、ある女性は「希望、未来、夢、人権」と書かれた紙を持って「ダイ・イン」をしていました。
不買運動。
国軍関係企業の商品を購入しない動きが広がっています。「ミャンマービール」やマイテルのSIMカードなどが不買運動の対象になっています。
納税拒否。
勤務先に対して所得税の源泉徴収をしないように要求する人びとが増えています。商業税(消費税)を受けとらない店舗も現れています。顧客の多くが「消費税を払いたくない」と言っているそうです。
自動車の故障を理由として治安部隊の通行を妨害する。
路上にロープを張って、女性が着用するスカートをつり下げる。
「その下を通ると縁起が悪い」という言い伝えがあるそうです。
国軍司令官の画像に「恥を知れ、独裁者よ。私たちは決して赦さない」という言葉を書き添えたチラシを大量に道路に貼りつける。
治安部隊の車両の通行を妨げるためのアイデアです。
職務を放棄したり、隣国のインドに逃れる警察官も増えています。僧侶も抗議行動に参加しています。
警察が誰かを拘束しにやってきたら、地域住民が集まって取り囲み交渉して追い返すことも行われていました。
抗議行動は、相互信頼、社会的知性に根ざした人間的連帯の力を生き生きと示しています。ミャンマーの人びとの社会倫理の質の高さは尊敬に値します。非暴力的抵抗は多くの人びとの共感と支持を得ています。
かつて、イギリスの植民地支配に対抗して人びととともに非暴力不服従運動を実践したマハトマ・ガンディー。今、ミャンマーの人びとにその精神が受け継がれています。ガンディーは「暴君や殺戮者はそのときには無敵に見えるが、最終的には滅びてしまう」という言葉を残しています。
2021年3月21日