ビリー・ホリデイが歌っていた「奇妙な果実」、黒人への暴力を告発
「奇妙な果実(Strange Fruits)」という歌曲はかつて米国で多発していた黒人への凄惨なリンチを告発しています。1930年代にユダヤ人の高校教師ルイス・アレンによって作られた曲です。1939年にジャズ歌手ビリー・ホリデイ(Billie Holiday、1915~1959)が初めてレコーディングしました。
「奇妙な果実」とは惨殺されて木につり下げられた黒人の遺体を意味しています。この歌の歌詞は「南部の木々には奇妙な果実が実っている。その葉も根も血に濡れている。黒い体が南部の風にゆれている」というものです。
ビリー・ホリデイの死後も「奇妙な果実」は歌い継がれています。今、BLM運動が盛り上がる中でこの歌が注目されています。しかし、彼女が歌い始めた頃はまだ黒人解放運動も活発ではなく、米国政府はビリー・ホリデイがこの歌を歌うことを執拗に妨害しました。
妨害に屈することなく歌い続ける彼女の姿を描いた映画「ザ・ユナイテッド・ステイツ vs. ビリー・ホリデイ」(リー・ダニエルズ監督)が2月11日に公開されます。
参考
『奇妙な果実 ビリー・ホリデイ自伝』 ビリー・ホリデイ 油井正一・大橋巨泉訳 晶文社
『ビリー・ホリデイと『奇妙な果実』』 デーヴィッド・マーゴリック 大月書店
映画「ザ・ユナイテッド・ステイツ vs. ビリー・ホリデイ」公式サイト
「奇妙な果実」を歌うビリー・ホリデイ(動画)