女性ヘイトの深刻な現実
2020年、あるプロレスラーの女性がSNSに数多く書き込まれた誹謗中傷を苦にして自死する事件がありました。それ以前にも韓国でも芸能人の女性が同様に自死する事件がありました。2021年、関東地方の私鉄車両内で乗客への傷害事件がありました。事件の容疑者は「幸せそうな女性を見ると殺したくなる」と供述したと伝えられました。
女性専用車両への男性の乗り込み
鉄道会社の多くが女性専用車両を運用しています。ところが、数年前から「女性専用車両は男性差別である」などと主張しながら男性たちが意図的に乗り込むという事案が発生しています。(注1、注2)
妊娠中の女性へのいやがらせなど
マタニティマークをつけている時、鉄道利用時などに被害に遭うケースが増えているようです。「妊婦が電車に乗るな」、「マタニティマークをつけて席を譲ってもらえると思うな」などと言われたり、舌打ちをされるといったケースは多いようです。突き飛ばされるなど暴力をふるわれる、マタニティマークを引きちぎられるといった犯罪行為の被害に遭うこともあります。不安を感じてマタニティマークを身につけるのをやめた方もいます。
子連れ女性へのいやがらせなど
子ども連れで飲食店を利用すると、店の人から「この時間帯には来ないでほしい」と言われたと訴える女性がいました。また、幼い子どもを連れて電車を利用していると、「ベビーカーで電車に乗るな」と言われる女性が増えているようです。ベビーカーを蹴られる、抱っこひものバックルを背後からはずされるといった悪質行為の被害を受けたという声も聞きます。「子連れヘイト」と呼ばれる事象です。(注3)
少し前、あるスープ専門チェーン店が、離乳食の無料サービスを始めると広報すると、ネット上では子育て中の女性を侮蔑する(例えば、「物乞いママ」、「クレクレのママ」)投稿がされました。さらに、さまざまな立場の女性を侮辱する投稿もされました。
問題提起をする女性への不当な非難
初めに書いた鉄道車両内の事件をきっかけに、女性が被害者となる犯罪の再発防止などを訴える活動を始めた女性たちがいました。SNSでも訴えるその女性たちに対して、「モンスタークレーマー」、「アタマ腐ってる」といったいやがらせがありました。
自身の体験から子育て応援鉄道車両の導入を要望する活動をする女性、
職場において女性従業員にハイヒールやパンプスの着用を強制しないように求める運動をする女性にも理不尽な非難ががありました。性暴力の被害を受けて加害者への訴訟も提起した女性に対してもネット上で多数の誹謗中傷の投稿がされました。
民族ヘイトに加えて
ヘイト・スピーチに抗議する活動を続けている在日コリアンの女性に対してはリアルでもネットでも侮辱的な言葉が数多く投げかけられました。
近年、米国においてアジア系住民が暴力などの被害を受ける事件が多発しています。女性が被害者となるケースがかなり多いということです。
こうした女性ヘイトと言えるさまざまな出来事の背景要因のひとつに男性優位の価値意識が根強く残っていることがあるように思われます。また、今の日本社会が「いじめ社会」とでも言うべき状態になっていることも背景としてうかがわれます。
女性が安心して外出、子育て、発言などができるためにはどうすればよいか、社会課題として取り組んでいかなければと思います。
注1:多くの女性が鉄道車両内で性被害に遭っているという客観的現実があります。そして、女性が安心して鉄道を利用できるようにするために、一部の車両を女性専用とすることは合理的な方法であると言えます。
注2:性的問題行動(痴漢行為、覗き、盗撮、下着窃取など)をやめられない方は性嗜癖障害と呼ばれるアディクションの状態になっている可能性があります。専門医療機関などが実施している治療プラグラムに参加して回復を図ることが推奨されるべきです。
注3:子連れの男性がいやがらせなどの被害を受けたという話はあまり聞きません。男性より女性が被害を受けるケースが圧倒的に多いのではないでしょうか。
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