生命の起源と宇宙とのかかわりについて(その2)
アーサー・クラークのSF小説『2010年宇宙の旅』は木星とその衛星エウロパに生命体が存在するという設定の作品です。『2001年宇宙の旅』の続編として執筆され、映画化(タイトルは「2010年」)されています。
エウロパは厚い氷(固体の水)におおわれていて、その下に塩類が溶けた液体の水が存在すると推測されています。光が届かない、塩分が多い、低温の水中でも生存できる微生物が生息している可能性があります。ハッブル宇宙望遠鏡がエウロパの表面から水蒸気が噴き出しているように見える現象を撮影しています。
土星の衛星エンケラドゥスも表面は氷でおおわれています。さらに、その氷の割れ目から水や有機物が噴き上がっているのが確認されています。やはり、氷の下には「海」が広がっているようです。近い将来、噴出物を試料として採取し、地球に持ち帰って分析するプロジェクトが実現するかもしれません。生命の痕跡が発見される可能性があります。
土星の最大の衛星タイタンは窒素やメタンを含む大気につつまれています。表面には液体のメタンやエタンがたまった海があります。地下にはアンモニア水が存在する可能性があります。地球とはかなり異なった環境においても、何らかの生命体が発生する可能性はあると考えられています。
このように、火星なども含めて、太陽系の中だけでも生命体が存在する、あるいはかつて存在した可能性のある天体はいくつもあります。また、20世紀末以降、太陽系の外に存在する惑星が次々と発見されています。現在では5千個以上の存在が明らかになっています。銀河系(天の川銀河)の中だけでも億単位の数の系外惑星が存在すると推測されています。ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡による観測成果も期待されます。
地球上の生命体が宇宙における唯一の生命現象ではないことが明らかになる日はそれほど遠くないかもしれません。そうなれば、地球上の生命のあり方(構成物質、機能、進化の仕組みなど)も多様な可能性の中のひとつに過ぎないという認識が定着するでしょう。
ESA(ヨーロッパ宇宙機関)は2023年に木星に向けて探査機JUICEを打ち上げる予定です。木星と三つの衛星(エウロパ、ガニメデ、カリスト)を調査する計画です。また、NASAはエウロパを探査する宇宙船エウロパ・クリッパーを2024年に打ち上げる予定です。
JUICEの飛行と探査(ESA) 動画約4分
エウロパの表面からの水蒸気噴出(NASA) 動画約2分
参考文献
『地球外生命』 小林憲正 中央公論新社(中公新書)