「ゆきねぇどこの病院か決まった?」「私は病院では働かないよ。学校の前でパーラーやりたいの。カフェとか。」「なんで看護学校通ってるの?」「看護学が学びたくて」
タイトルは、私が看護学校の最終学年の時にいろんな学生と何回も行ったやりとりだ。みんなは次々に就職したい病院に見学に行ったり面接に行く。私はどこにもいかない。事務長に呼ばれて「本当にどこも受けないの?」「どうするつもり?」と何回も面談があった。先生たちからも「早く病院決めないと」といつも言われていた。毎回同じ説明をさせていただいていたが、うまく伝わらなかった。そんな中、垣花校長先生だけが「おもしろいじゃない!」「どんどんやりなさい」と言ってくれていた。
看護学生の頃から新聞にコラムを掲載させていただいていた。そこに、私がやりたいことをめいいっぱい書かせていただいていた。訪問看護の実習の時に、指導係の看護師さんが「もしかして、新聞に連載している金城さん?いつも、なるほどな〜とか、こうなるとおもしろいな〜とか思いながら読んでます。実習大変だと思うけど、がんばって!」と声をかけてくださったことがある。看護学校の中で、一番うれしかった出来事のひとつだ。
入学する時から先生たちには「病院の中で働く、というイメージは持っていません」と伝えていた。私は地域の中に、看護学の概念が必要である、と考えていた。でも、その具体例がなかった。その時、カッコつけの意味も含めて、日本ではまだ正式に認められていなかった「ナースプラクティショナー」になりたいです。と伝えていた。なので、大分の大学院に進学することを考えています。と言っていた。(日本で唯一NPを養成する大学院が大分にあった。今もあると思う)自分の看護観を言葉にしたくて、色々検索していくと「コミュニティナース」という言葉に出会った。その前に、看護学概論の授業で垣花校長から教えていただいた復帰前の沖縄にいた「公衆衛生看護師」の存在にも出会っていた。垣花校長の話は、いつも、どれも、超エキサイティングで、超おもしろかった。
私の夢は、学生同士で話す時は「学校の前にあるパーラーで、ポーポーを焼きながら、かき氷を出しながら、女子高生の恋愛相談を聞く」だった。10個下の同級生たちはみんな「ゆきねぇ、なんで看護学校きたの?」「そのモチベで実習ツラくない?」「いますぐパーラーやったらいいさ〜」と言っていた。(今思えば、そうなのだ。学生時代からパーラーをやっていればよかった。でも、そんな余裕が1ミリもなかったのも事実。舜明がまだ2歳とか3歳とかで、ちょっとまだ身体が弱く、入院とかもよくあったりしたし、預け先も保育園以外なかった。ひとりでのバタバタ子育てにてんやわんやしていた頃だった。4、5歳になってくると、体も強くなり、ファミサポやクラスのみんなのチカラを借りて、なんとか実習を乗り切ることができるようになってきてはいたのだが、パーラーをやる余裕は、、当時はなかった。)
全然ナースと関係ないような人が、実はナースであること。そういう看護師が地域の中にたくさんいることが私は今でもベストだと思っている。なんなら、看護学が義務教育の中に埋め込まれてくれていたらいいのに。とさえ思っている。(私の愛してやまない「法学」と。「看護学」と「法学」は義務教育で必修科目にしてほしい)
沖縄は、他府県に比べて若年妊娠が多い、と言われている。私が高校の前のみんなが集まるパーラーにいて、恋愛の話を聞きたい。というのはここにあった。パーラーの高校生たちの中には、その時の高校生たちのリアルがある。話を聞いていると、それはデートDVじゃないか?と思うようなことや、後でこっそりと身近な大人である「パーラーのおばちゃん」に自分の家族についての悩みを相談したりする。そんな大きなことじゃなくても。なんでもない話でも、親や先生以外に聞いてもらえる大人がいるというのは、ちょっといい感じなんじゃないかな?と思っている。
今、私が定期、不定期で行っている「つながる保健室」もまさにそれで、テーマを決めてのイベントの時は1000円のフリードリンク制だったり、テーマを決めずに朝10:00〜15:00(でもだいたいみんな17時までいる)でいつでもきていい、帰っていいシステムの時は500円のフリードリンク制(ドリンク色々揃えているし、お菓子もあるよ)にしている。持ち込みもウェルカムで、参加者のみなさんがドーナツを買ってきてくれることもあるし、プロの珈琲屋さんが豆を色々持ってきてくれて、挽いてくれることもある。みんなが自由に集まってくれて、自由に話せる場を作っている。
そこでの私の役割はなんだろう?正直「看護師」としての「私」の出番はあんまりない。ない方がいいと思っている。はじめましてのみんなが集まって(年齢も職業も住んでる場所もバラバラ。高校生の参加者もいる)コーヒーや紅茶を飲みながら話をする。自己紹介やアイスブレイクをした後で、ポジティヴヘルスのスパイダーネットをやってもらったり、やりたいことリスト100をやってもらったりする。特に今日、これをする!というのは決まっていないけれど、みんな話しながらそれこそ参加者の方が「初めてですか?俺、先週ポジティヴヘルスの蜘蛛の巣やったよー。やったことあります?」とか勧めてくれたりする。「先週100書ききれなかったー」と言って、やりたいこと、の続きを書いたり。そうしていたら「私、コーヒーのプロなんです」と言って、いろんな種類の豆を紹介してくれて、挽いてくれて、みんなで飲んでみたりする。すると「ドーナツ持ってきました」と差し入れが入ったりする。みんなはじめまして、なのに。みんなでワイワイして、LINEの交換やFacebookの友達申請をして「つながって」帰っていく。ここでつながった後に、つながったふたりがフェイスブックで2ショットの写真を載せていたりする。私的には「つながる保健室」以外の場で、「つながる保健室」で出逢った人達が「つながっている」のが、とてつもなくうれしかったりする。
それで。「看護師」としての「私」はどうなっているのか。「看護師」としての「私」の出番はない方がいいけれども、やっぱりあって、何度か「つながる保健室」に参加した後で、メッセンジャーにDMが来たりする。(ここが実はポイントだと思っていて、1回目から相談に来る方はあまりいらっしゃらない。みなさん、だいたい何回か参加された後で、DMが送られてくる)。みんなみんな笑顔でも、元気そうでも、色々あったりするのが人だと思う。そんな時は看護師の出番が必要になることがあるかもしれない。そして、そのために私は看護学校に行ったのだ。看護学を学び、看護師になったのだ。
看護師は病院にいて、医療的な看護技術を行うだけじゃない。疾病の予防もするし、病後のケアもする。そしてまさに病気を抱えながら地域で生きている人のサポートも行う。私たち看護師は病気の診断はできないけれど、身体的、精神的、社会的にその人を看て、アセスメントを行うことができる。これからの人生についてを本人含め、ご家族と話をすることもできる。残された人生の伴走をする手助けをすることができる。医療行為は、確かに病院にいることでしかできないことも多いけれど、私は看護師こそ、病院の外で、地域でできることがたくさんあるのではないか、と思っている。
(それこそ、それが医療費の軽減につながったり、急性期病棟や救急の負担の軽減、ベッド数の確保にもつながっているのではないかと思っていたりもする。結構ガチめに。)
私が関わっている介護予防教室でもそう。介護予防教室に体操をしにきて、みんなでつながって、その後、お昼ご飯を食べに言ったり、お父さんたちは飲みに行ったり、次はどこどこのスナックに行こう、ボーリング行こう、釣り行こう、など「介護予防教室」でつながったご縁で、仲間ができ、活動の幅が広がることが、とてもとてもうれしく思う。今までずっと家にこもっていた方たちが(別に家にこもっていてもHAPPYならそれでOKなんだけど)「一週間に一度のこの体操がとても楽しみで。朝の散歩もはじめてみました」とか「一昨日、みんなでボーリング行ってきたよ。家も近いから、声かけて、みんなでコーヒー飲んだりもしてる」ということが毎回様々なカタチで聞かれる。介護予防教室での私の役割は血圧測定や健康チェック、介護予防の体操や健康講話なのだけれど、それ以外の効果の方がはるかにあると思っているし、「看護師」としての役割は週に一度の血圧測定より、そうじゃない日の効果の方が大きいと思っている。
「ゆきさんはなんで看護学校に通ってるの?」「パーラーとか、カフェがやりたいの」「絶対もったいない」「看護師免許の無駄」「病院いないと遅れるよ」
そうだろうか?そうかもしれない。私は病院の中で必要とされている看護技術は誰よりも遅れているに違いない。でも、病院に行っても、誰よりも最先端の「看護」をする自信は、根拠のない自信は今でも充分にある。
私は「医療の社会化」にも本気で取り組んでいるつもり。私の周りにはおもしろい医療従事者や、医学生、看護学生、福祉、介護の関係者のみんなが集まってくる。アンテナを張ってるから、おもしろい!と思ったら私からもどんどん逢いに行く。必要なことは全てチャレンジする。失敗を恐れる心は1mmもない。
10代後半から20代前半は、政治的に外面的に世界平和を目指していた。
20代後半から30代前半は、本質的に内面的に世界平和を目指している。
私の中では、一本筋がビシぃぃいッと通っていて、何もブレてない。改善は常にしているけれど、多分、ブレてはいない。
みんなが幸せである社会。つくっていきたい。つくっていこう。
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