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ハンミョウの観察

ハンミョウの仲間は日本全国から25種類が知られ、どの都道府県でも何かしらのハンミョウを見ることができます。そして、多くのハンミョウが7月から9月初旬にかけて羽化してきます。また、山、川、海と、夏休みに出かけそうな場所それぞれに異なる種類のハンミョウがいます。これから間に合う自由研究の題材にもなるでしょう。いろんな意味で、まさに夏休みのお供なのです。今回はそんなハンミョウについて書いてみます。

ハンミョウってどんな虫??

ハンミョウは世界中に分布する甲虫の仲間です。体長は1cm前後のものが多く、すばしっこく動くのでなれないとなかなか見つけられません。ハンミョウは大きなアゴをもち、動いている生き物に走り寄って、かぶりつきそのままムシャムシャと食べてしまいます。多くの種類が地面が露出した環境にいますが、クビナガハンミョウのグループのように熱帯雨林の植物の上にとまってエサをさがすものもいます。海外のハンミョウを少し紹介します。

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ベトナムの沿岸域調査で見つかったAbroscelis tenuipes

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スリランカの熱帯林調査で見つかったCalochroa discrepans

1メートル先の地面を見て歩く

ハンミョウの仲間は人の気配を感じると少し飛んで地面に着地します。着地の瞬間を見逃すと、もうどこにいるのか分からなくなります。見逃すまいとすぐ足元を見ていてもダメで、だいたい1メートル以内に近づくともう飛んでいます。ですから1メートル先の地面を見ながら歩くと、飛び立つハンミョウを視界に捉えることができ、そのまま視線を逸らさず追い続ければ着地点も見失うことがありません。

採集には軽い網を使う

ハンミョウにはナミハンミョウを除いて、似たような模様をもつものがいます。昆虫採集が禁止されている場所や採集禁止種のハンミョウの生息地でなければ、一度手に取って観察することをお勧めします。そうすることで種間の違いなどいろいろな発見をしていくことにつながります。
1メートル以内に近づくことが難しいハンミョウを採るには素早い動きが必要です。そのため軽い網が欠かせません。100円ショップの竹竿の虫とり網は最高の武器になります。網の目合いも粗いほうが風を切りやすく、砂などが抜けやすいのでさらに好都合です。柄は1メートル強あれば十分です。
何度が飛ばしながらも距離を詰め、着地点を見極めたら一息に網を被せるのがコツですが、その際、ハンミョウのいる位置よりやや前方(ハンミョウの頭の向いている方向)に少しずらして被せると飛ばれてしまっても網に入る確率が高くなります。もし網を逃れて飛ばれてしまっても、地面に被せた位置から網を斜め上に振り上げて採ることだってできます。これも軽い網なればこそなのです。

ハンミョウのいる環境

まずは予備知識なく自然度の高い場所に出かけていき、どんなハンミョウがいるのかを調べてほしいところですが、出会うためのコツを少し。山道にいるタイプのハンミョウは日当たりのいい、土や砂利の道を好みます。アスファルト舗装されている場所にはあまり出てきません。また、ニワハンミョウは日当たりのいい、やや湿った地面を好みます。
河原を好むハンミョウもいます。川の上流で少し河原が広くなった場所にはアイヌハンミョウがいます。丸い石がゴロゴロした河原がよいようです。

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アイヌハンミョウが見つかった河原

農地の周りではナミハンミョウやコハンミョウを見ることがあります。除草剤の使用によってできた裸地にたくさん発生していることもあります。
大きな川の下流〜河口、砂浜にはカワラハンミョウ、シロヘリハンミョウ、ハラビロハンミョウなどがいますが、これらは環境の変化によって生息地の多くを失いました。海水浴にいったら注意してみましょう。ただしこれらのハンミョウは採集禁止の対象となっている地域が多いので観察にとどめましょう。

複数種のハンミョウがいることも

同じ場所に複数種のハンミョウがいることがあります。そのような場所はよい環境が保たれている証拠でもあります(除草剤の使われている場所に多くいるのは複雑ですが)。異なる種類のハンミョウが一緒にいる場合、同じ場所にいるように見えて、微妙に異なる環境を好んでいることが多いので研究のポイントとなります。どんならところから飛び出したかを記録しておきましょう。地面の質感(土か砂か、砂粒や石の大きさ)、湿り気、植物の高さ・密度などによって微妙にハンミョウの種類が変わってきます。

変異を知る

同じ種類であっても鞘翅(硬い前翅)の模様には変異があります。これは一つには地域変異であり、さらに個体変異もあります。そのため、極端な個体になると図鑑の絵あわせでは種を同定することが難しいことあります。
どちらも同じニワハンミョウですがこんなに変わることもあるのです。

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幼虫を探そう

ハンミョウの成虫が見られたら、周りの地面をよく見てみましょう。5ミリほどの円形の穴があいていればハンミョウの幼虫がいるかもしれません。しばらく見ていると穴にフタするように幼虫の頭部が現れることがあります。飼育する際は、試験管のような細長い容器に幼虫のいた場所の土や砂をいれ、1頭ずつ入れます。しばらくすると自分で巣を作ります。エサは体の柔らかい昆虫を与えるとよいでしょう。野外ではアリもよく食べますがアリの方が大きいとかえって攻撃されますので注意が必要です。

ハンミョウが教えてくれるもの

前述のとおり、ハンミョウは人の気配を感じると少し飛んで着地します。その様子から「道教え」とも呼ばれます。
しかし、河口や干潟、砂浜に生息するハンミョウを筆頭に、彼らの姿は徐々に消えはじめています。人間が便利さや快適さを過度に求めた結果、ハンミョウの好む微妙な環境がなくなっているのです。この夏、身近な場所にハンミョウがいることの素晴らしさを感じる一方で、消えてしまった彼らの後ろ姿から私たちの来し方を顧みるのも自由研究のひとつのテーマになるかもしれません。

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砂浜の色に溶け込むカワラハンミョウ

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