反田恭平&務川慧悟 2台ピアノツアー2023 in豊田<トークとアンコール編>
(時々敬称略になっていることをご了承ください)
🎹(DAY15)反田恭平×務川慧悟2台ピアノコンサートツアー2023
会場:豊田市コンサートホール
開演:15:00(開場:14:15)
🎤トーク
ツアー15日目、ついに千穐楽!
後半プログラムラストの曲「ペトルーシュカ」をお二人が演奏し終わった瞬間、客席からは大きな拍手とスタンディングオベーションが起きた。
お二人にもホッとした安堵の表情が浮かんでいる。万雷の拍手に丁寧に挨拶をして退場、そして再び現れたお二人のツアー最後のトークタイムがこれから始まる……
というわけで、また記憶と汚メモを駆使して、トークを書き起こしたいと思います。例によってお断りですが、言葉や語順はその通りではありません。加えて私の抜けや忘れが恐らく大量にありますこと、ご了承ください。
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反田氏「皆さま、本日はありがとうございます」
務川氏「ありがとうございます」
反田氏「何?なんかテンション低くない?」
務川氏「テンション……笑」
反田氏「そうだねえ、何話そうか。
ありがたいことに2台ピアノの全国15箇所全てソールドアウトの公演を回らせてもらい、今日がその15公演目。ちょうど今終わろうとしています」
務川氏「終わろうとしています」
反田氏「1月19日金沢で第1回が始まった時は、どうなることかと思ったけれどね」
務川氏「うん」
反田氏「15公演というツアーしたことある?」
務川氏「いや、無い」
反田氏「僕は今までのマックスは13で、今回それプラス2回だった。だからその2回によって、今回はどういう風景が見られるのか、これから何かが満ち溢れてくるのか、というのがあります」
務川氏「ありますね」
反田氏「ツアーどうだった? 色々あったとは思うけど、何となく一言で言うと」
務川氏「15回も弾いていたら、だんだん機械的になって反射っぽく弾くようになるのじゃないかと心配していたけど、全くそんなことなかった。今日もこの素晴らしいホールで演奏していて、しかもここは僕の地元でもあるし、ずっと感情が乗ったまま演奏できたと思う」
反田氏「いや実際このホールに来てみて驚いたよね。ピアノもホールも本当に素晴らしくて、ここで千穐楽を迎えられて本当に良かったと思ったもん。僕は結構気に入りました」
務川氏「僕も気に入った」
反田氏「愛知といえば、僕は名古屋の愛知県立芸術劇場なんだけど、豊田。車の街ってことは知っていたけど、こんなに素晴らしいホールがあるなんて。もっと早く入ってゲネプロしたかったね。実は今日は僕のもうすぐ始まる別の15公演ツアー(注:JNO公演)のためにショスタコーヴィチの練習をしたんです。務川くんは付き合って一緒に練習してくれました(笑)」
「ところでMCの仕切りは今まで公演ごとに交代でやってきたんだけど、今日は最後なので2人でやることにしたんだよね。何か話したいことある?」
務川氏「いや、こういう風に(反田氏に)話してもらって、僕はちょいボケるみたいな感じがいいんだけど」
反田氏「それじゃあラジオみたいじゃん。『本日はゲストをお招きしています。はい、ゲストの方です』みたいな(笑)」 務川氏も笑。
反田氏「ツアーの途中、雪がキツイ時がありましたね。北海道と青森の移動が一番キツかった」
務川氏「あれはツアーの山場でしたね」
反田氏「函館まで車で行って、そこから青森まで新幹線、飛行機、車と3パターンくらいの行き方をスタッフの方に提案されたんです。最悪8時間コースも覚悟したけど、結局飛行機が飛んだので45分で行けた。飛行機がプロペラ機だったから揺れて……いやそんな中、務川くん寝てたんだよね?」
務川氏「めちゃ寝てた(笑)」
反田氏「揺れる中で。幸せなもんだ(笑)。あとあまり食べられなかったんだけど、時々美味しいものも食べたよね」
務川氏「うん。今一度食べたいね」
反田氏「今日で公演は終わったんだけど、もう一度明日から15公演あるっていったらやりたい?」
務川氏「いや、明日からはやりたくないな。でもまたいつかというなら、またやりたい」会場拍手。
反田氏「僕らはやめれないからね。またいつかやりたいね」
「千穐楽というと、やっぱりちょっと違う感じになった。色々なことがあったなと考えたり。例えば面白い譜めくりさんともこれで最後かーとか。CDの録音のために缶詰になったとか。お、CDの話出ましたね」
務川氏「来ましたか、この下り(笑)」
反田氏「会場でもCD発売してるの?」
務川氏「小耳に挟んだんだけど、販売している」
反田氏「今日は残念ながらサイン会はないんです。僕が明日のリハーサルに向けて練習しないと行けないから。また近くにも来ると思うんですが、JNOのツアーがあるんです(注:2023年2月9日から全国ツアー)。その分今日はアンコールをいろいろやろうと話していました」会場拍手。
「会場で販売している2台ピアノのCDなんですが、このジャンルはあまりバンバンあるというわけではありません。しかもドリーやブラームスの録音というのは今までにも10指で数えるほどしかないと思います。今回こうして録音したことで記録を残せたこと、20代の思い出の1つとなったことが良かったと感じています」
務川氏「そうですね」頷く。
反田氏「ペトルーシュカ以外は収録されています。このCDを聴くと、なんと合わせが上手くなる。連弾が上手にできるようになります」
務川氏「来ましたね〜この下り(笑)。もう15日間言っているから慣れちゃった」
反田氏「そういえば他にもCD売っているんでしたけ? え、務川くんのCDも売っているの?」
務川氏「(苦笑しながら)ラヴェルというフランスの作曲家のピアノ独奏曲を全て収録した2枚組CDです」
反田氏「すごいねえ。それもここで売っているんだ! ちょっと噂で聞いたんだけど、そのCDを聴くとラヴェルが弾ける」
務川氏「弾けるようになります。弾きたい方はぜひ!」
反田氏「なんか僕のCDもちょこちょこあるらしいんだよね。実は僕もショパンにはまっていてさ。自分でいうのもなんなんだけど、なんか地方の大会に出て入賞したりしたらしい」
務川氏「地方の大会(結構爆笑)」
反田氏「うん。遠征して行った大会。でね諸説あるんだけど、これを聴いたら誰でもショパンが弾けるようになるらしい。ショパンコンクールで入賞するらしい(笑)。ですから皆さんも売り場でちょっと勇気を出してCDを手にしていただき、また置かずにそのまま会計に持っていってくださるとありがたいです。(会場笑)。嬉しいねえ。この話毎回どの会場でも笑ってくれる(笑)」
「それでは最後のアンコール決めじゃんけん行こうか。今日は勝った人が先に弾くか後に弾くかを考えることにしよう」
アンコール決めじゃんけん。最初はグー。反田氏チョキ、務川氏パーで反田氏勝ち。
反田氏「ええ? 務川くんは今日何系を弾く?」
務川氏「ラヴェルかな」会場拍手。
反田氏「ラヴェルの何系?」
務川氏「このホールとピアノの響きで迷っている。反田は何系? しっとり系? 派手系?」
反田氏「じゃあ務川くんが先に弾いてから考える」
務川氏「今考えているのは、ラヴェルの水系かな」会場拍手。
反田氏「水系かあ。なんかポケモンみたい(笑)。水タイプ(笑)。何系かな、俺。俺、後で考えるわ。一旦戻ろうか、マイク置きにね」
2人で一緒に退場
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🎹アンコール
♬務川さん ラヴェル:水の戯れ
ツアーのアンコールで私が聴くのは二度目の<水の戯れ>。前回松本公演ではその圧倒的なラヴェルの世界に呆然とし、しばらくは拍手もできないほどに囚われてしまった。
その流麗さ、心地よさに耳を預けているとまるで身体が浄化されていくように感じる。夢中になってしまう。しかしその流麗さを生み出す一音一音のセンシティヴなコントロールや、粒の揃った音にしても何種類もの変化がつけられていることなど、その精密な音作りに気づくと、自分がいかに凄いものを聴いているかを急に思い知るのだ。「水系」ととぼけた風に言ってから、ピアノに向かいサラッと奇跡を繰り出す務川慧悟というピアニスト。本当に、なんというお人かっ!
♬反田さん ブラームス:間奏曲Op.118-2
タブレットを持って現れた反田さん。弾き始めたのは、ブラームスOp.118-2。静かにそして思いを込めて。15日間の過酷だったツアーの千穐楽の最後の曲。「派手系」か「しっとり系」か。悩んだ末に反田さんがこの曲を選んだ心を考えながら、タブレットを駆使して弾く姿を見つめながら聴き入っていると、まるで会場全体が、夕凪の海のように穏やかな輝きにじんわり満たされていくのを感じた。<響きが気に入った>ホールに広がる音楽。今日までの終わりと明日からの新たな始まり。千穐楽を締めくくる、素晴らしい演奏だった。
それぞれのアンコールにスタオベが出るほど、会場は感動に包まれていた。再びお二人が登場すると、さらに多くの観客が立ち上がり、お二人は笑顔で何度も挨拶をする。拍手はなかなか止まなかった。
驚嘆と感動を与え続けてくれた演奏、感傷的にならないユーモア溢れるトーク、最後は心に染み入るような2つのアンコール。
過ぎ去ってしまった得難い時間。ファンの心は寂しさとロスでいっぱいだ。
しかし大いなるツアーをやり遂げ颯爽と去っていくお二人は、もう明日へと向いている。その姿に、私達はまた期待と夢を抱いてしまうのね。あーなんと幸せなことだろうか!
とにかくお二人、お疲れ様でした。今夜はぐっすり休んで、明日になったら元気に旅立たれますように。
反田恭平さん、
務川慧悟さん、
ありがとうございました!