マガジンのカバー画像

独書思想史

20
僕の読んだ本のメモと一部にイシューを見つけ出し答えを求めようとすることを試みるマガジンです.
運営しているクリエイター

2024年7月の記事一覧

イギリスの失敗はグローバル化の逃避だったのか

イギリスの失敗はグローバル化の逃避だったのか

2016年、イギリス首相のキャメロン氏は頭を抱えていた.EU離脱を問う国民投票で離脱派が全体の51.89%を占め、残留派に僅差の差で上回ってしまったからだ.

当時のキャメロン首相の思惑にはEU離脱の予定は入っていなかった.EU残留派が勝利し、EU離脱派が多かった理由を使い、EUに対して優勢に働こうという考えがあった.

しかし国民投票の結果は離脱、キャメロン首相はEU脱退への道を進まざるを得ない

もっとみる
ペストが作り出した無造作な社会

ペストが作り出した無造作な社会

“パンデミック“

2020年を代表する言葉といえばコロナによって破壊された社会を想像させる.社会が目指した団結した世界、一つの世界が蔓延を助長させ、偉大な国の自由の女神像の前は疫病によって無惨にも死んでしまった人たちが並べられた.疫病が人類を殺していくスピードに埋葬が間に合わなかったのである.コロナは死者の前で泣く権利も与えられない.泣く時間も与えてくれなったのだ.

世界中の人々が“ステイホー

もっとみる
21世紀に赤い繭は否定できるのか

21世紀に赤い繭は否定できるのか

1950年の大作、安部公房の『赤い繭』は今でも多くの人に読まれている作品の一つだ.

この話のキッカケは今年が安部公房の生誕100周年ということで書店に特集コーナーが設置されていたところから始まる.

安部公房といえば第二次戦後派の大岡昇平『俘虜記』や堀田善衛『広場の孤独』などと一緒に知られる文学会のスーパースターである.

最近では国語の教科書に掲載されていることもあり、名前だけでも聞き覚えがあ

もっとみる
自己認知で出来上がった歴史の修正

自己認知で出来上がった歴史の修正

「いい国(1192)作ろう鎌倉幕府」

高校受験を振り返ってみれば社会が一番暗記に苦労した思い出が蘇る.いくら覚えようとしても既にインプットした情報でストレージが一杯.記憶容量を増やすなんて物理的変革がない限り無理だ.

そんな苦しい思い出のある社会という科目だが、この本を見れば多少は解消される.

まず僕らのやっている歴史というのは時系列が存在して、そこに名前をプロットしインプットするという作業

もっとみる