久しぶりに思い出した彼のこと

人の行動に感動する瞬間って、今までに数回しかない。

その中のひとりが彼だった。

高校３年生の冬

彼は隣のクラスだった。
知っている情報としては、バレーボール部でクラス内のいじられ愛されキャラ。３人の男子から告白された女の子が彼氏に選んだくらいだから、私が知っている情報以上に素敵なんだと思う。

衝撃を受けたのは休み時間。

学校のお手洗いは、上履きを脱いでスリッパに履き替える。スリッパは、入り口に無造作に置かれていることがほとんどだ。
女子トイレは、男子トイレを通り過ぎた奥にある。

私はいつも通り、男子トイレの前をふつーうに通り過ぎようとしたとき。
彼は、スリッパ全てを並べ揃えていた。

驚いた。
そんなことをする人がいるのかと。

衝撃だった。

誰も見てないし、誰に頼まれたわけでもない。当番でもなければなんでもない。“並べて行けよ”と友達に注意するわけでもなく。
彼はただ普通に、当たり前に、スリッパを並べていたのだ。

私は驚いて動けなくなった。感銘を受けたとはまさにこのこと。

それから、私も彼を見習ってスリッパを並べるようになったのはゆうまでもない。

素敵な姿を見せてくれてありがとう。

最近、頭がパンパンで、心がモヤモヤで、自分で精一杯。まわりのことなんて見えてなかった。

私も初心に戻って、スリッパ並べよ。