因果律量子論と並行世界①
今回から、因果律量子論や並行世界、ループや世界移動について考察していきたい。さんざん色んな所でやられてきた考察だし、ここでも完全に個人的な考察になるので悪しからず。しかもトップ絵は人格数値化の説明なので因果律量子論とは関係ないというね。
まず夕呼先生の独自理論「因果律量子論」についてだ。正確なところは誰も分からないのだが、名前からして言えることは古典物理学と量子力学の統合理論である。因果律というのは物理学的には古典力学における原因と結果の関係を意味する。量子力学では「観測」という事象に伴う量子状態の変動という問題によってその因果律が当てはまらないので、古典力学とは異なる物理学分野として扱われている。夕呼先生の理論は、因果律、つまり古典力学の範疇における現象についても量子論的な概念が適応可能であるというものだと予想される(ただし観測によって状態が確定するというのは量子力学的には意味が分からないがシュレディンガーの猫の話を誤解しているのだと予想される)。それによって、様々な因果的要素(それこそ物理現象の延長として個人の姿形や行動まで含めて)が量子論的な要素も併せ持つためには並行世界が無限に存在するという結論を導いていると思われる。
夕呼先生がエクストラの時点で実験に成功している世界移動や因果の交換(築地を猫にした)などは、古典力学のレベルで規定すべき現象を、量子力学的に不確定な状態にすると、量子力学的な確率論での存在規定が可能になるので、観測によって確定した際に他の世界(というものがあるという前提で)の因果に基づいた状態に遷移するという現象があり得るという話なのだろう。その仮説が実験で証明できたから、夕呼先生の中では因果律量子論に基づいて並行世界が存在するという考えになっているのだと思われる。
上記の確率の状態に戻すというのはオルタで世界転移に使われている装置の説明と同じである。夕呼先生によると、超伝導物質で作ったコイルに莫大な電流を流した時、未来から過去へ流れるという特異な性質を持つ特殊な電波が発生するので、複数の電波を同時発生させて共鳴現象を起こして増幅させた電波を物質に当てると、波動関数で規定可能な存在確率の状態に戻せるという原理らしい。装置の原理自体かなりオカルトではあるが、SFとしてはそういう設定である。
いずれにしろ、夕呼先生の中では因果律量子論という物理学の統合理論に基づいて、並行世界があると考えられているのだ。また、世界間での因果律のやり取りというのはむしろ、因果律の不確定性に起因する結果の様なものだと言えるだろう。因果導体と表現されたものも、基本的には不確定性の高い存在・不安定な存在と言い換えていいのではないだろうか。オルタでは武も「不安定な存在」と言われている。
この手の「因果律」と「量子論」の統合は実は現実世界でも盛んに研究されている分野でもある。量子もつれを利用した遠距離での通信や、過去との通信は、正に夕呼先生の理論の一端を現実に具体化しているといっても過言ではないだろう。「逆因果律」などを哲学的に考える人たちが好きそうなテーマである。
SFという前提に立った場合の並行世界や因果律に関する考察は、上記の通り割とすっきり行うことができるのだが、オルタ世界の始まりとなるループ現象を理論的に考えることが実は相当に難しい。次回はその点を考察していく。