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オルタ世界の政治体系

今回はオルタ世界の日本における政治体制についてだ。

オルタ世界の日本ではトップに象徴としての皇帝がおり、そこから直接任命される国家元首としての政威大将軍がいる。それとは別に現実世界における首相、内閣、国会も存在するので、かなりややこしい政治体制になっている。

歴史を紐解けば、皇帝によって将軍が任命され(現実だと征夷大将軍だが)幕府の長として実権を握っていたのは江戸時代までの日本と同じであろう。オルタ世界では、大政奉還の際に討幕派大名との大同団結が成立したため、幕府と類似した体制が将軍および元枢府として維持されており、それとは別個に議院内閣制の政府が誕生しているので、一見ややこしい。皇帝という象徴的な存在が居るので、ややこしく感じるが、皇帝の存在は一旦置いておいて、月詠さんが例示したように将軍を大統領と置き換えて考えれば、大統領と首相が同時に存在する政治体制は実在するので、それをイメージするのが分かりやすいだろう。政治の決定権を大統領が持っており、首相や内閣は行政の長としてその決定に従い政治を実行するという役割だ。

もちろんオルタ世界においては、この本来の役割分担や関係が歪んでいたのは本編にある通りである。憲法の拡大解釈によって首相や内閣が政治の実権を握り、皇帝のみならず将軍についても象徴的な存在として形骸化していたということだ。最大の問題はそれを周知せず、一般人から見ると将軍が政治の決定権を握っているように見せかけていたという点だろう。そのような実情を憂いて12.5事件が起こることになる。

ちなみに現実世界では現在皇帝は存在せず(帝国ではないので当然だが)天皇という呼称になっているが、歴史的には日本の帝は昭和まで対外的に皇帝を名乗っていた。本編には名称以外一切出てこないので詳細は不明だが、立場としては同じようなものであろう。諸事情によりこの辺りには触れない設計なのだと思われる。

もっと言えば、実はマブラヴ発売当初は将軍という設定は無かった。CD-ROM版のマブラヴアンリミテッドでは冥夜は将軍家ではなく皇帝家の血縁ということになっているのだ。将軍家という設定ができたのがオルタネイティヴ以降であるため、このような設定ミスが存在した。というか、皇帝家の設定のままでは、オルタで(特にクーデター関係の)話を作るのに問題が多かったのだろう。そのために将軍家という設定を追加した結果、政治体制はややこしくなっているのだと推測できる。関連して「斯衛軍」の表記についても、最初期は「近衛軍」になっていた。これもなにがしかの配慮によって変更されたのだろう。この辺りはDVD-ROM版以降でキッチリ修正されているので今は確認するのが難しいと思うが、ちゃんと矛盾なく修正しているその頑張りはさすがと言いたい。

マブラヴに関しては、大前提として最初からかなり細かく練りこんだ設定を用意されているが、それでも矛盾や後付けのこじ付けは出てきてしまう。BETAの設定についてもアンリミテッド時点では細かい分類がオルタのものとは異なっており、これは修正が難しかったからか、最新のVerではまりもによるBETAの授業において分類のくだりがカットされている。

これらは最初期においては設定が存在せず、作品が進むにつれて追加・変化していったことを示す事例なのだが、他にも「宇宙の星の数に比べてBETAの計算上の個体数が多すぎる⇒細菌サイズのBETAもいる」とか、「98年以前の日本の文化レベルに対して、アンリミテッド時点の仲間の文化感覚がおかしい⇒日本人全員記憶操作してました」とかは、さすがに最初からの設定ではなくこじ付けだと思う。これは別に後付けを腐したいわけではなく、このような設定が後付けでもきちんとできるのが素晴らしいという話である。そこに文句を言うのは無粋というものだ。オルタ日本の複雑な政治体制についても、上記のような現実的な理由と、作品内で設定された歴史的な理由によって、そうなっているのだろうと考えれば楽しさも2倍である。また、このような考察は各バージョンの違いを気にしながらずっとプレーしてきたからこそ、理解できるものでもある。マブラヴシリーズは最新のバージョンに至るまで細かい修正が何段階もあるので、最初だけ遊んでしばらく遊んでいない人は、最新の媒体で遊んでみるといいかもしれない。

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