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クリスカの故郷

さて、皆が知ってる事を書いても仕方ないと思うので、最初の考察からいきなり細かいところを突いてしまいたいと思う

今回のテーマは「クリスカの故郷」である

トータルイクリプス(TE)において、クリスカが語った故郷の情景、プロジェクションで見せた光景を覚えているだろうか。実際の画像は記事トップで表示されているものだ。TEの終盤において、クリスカがユウヤに語っている場面がある。

【クリスカ】「この曲は……私の故郷の想い出なんだ……」
 
【ユウヤ】「……おまえの故郷……?」
 
確か子供の頃、施設で教わったと言っていたな……。
 
【クリスカ】「うん……私の故郷だ……」
 
【ユウヤ】「まさかあの研究施設じゃないよな。
ソ連のどこかか?」
 
【クリスカ】「そうだ……。でも場所は分からない。
名前も知らないんだ……」
 
【ユウヤ】「何か目印になる様な建物とか無かったのか?」
 
【クリスカ】「……微かに記憶している。
……真っ白な建物と、私と一緒に生まれ育った姉妹達」
 
【ユウヤ】「……!」
 
イーニァと同じイメージ……。
 
【クリスカ】「高台から見える遠くの街並み……。
金色の尖塔を持つ白い建物……」
 
【ユウヤ】「……これが……クリスカの……」
 
【クリスカ】「そうだ……だが、もう、BETAに壊されてしまっていると思う……」

クリスカは場所が分からないと言っているが、だからこそ考察にし甲斐があるというものだ。という事で、特定してみた。

先に言ってしまうと、今回の考察はアージュ作品としては珍しく(?)設定が甘いという結論になってしまった。本当は、私はアージュ作品の深く練られた世界観や細かい設定は大好きだし高く評価している。今後の記事ではその様な深さを紹介できればと思うが、不幸にも初回の記事で矛盾になりそうな仕事を紹介することになってしまった。

さて、上の画像を検索にかけると、実は全く同じ構図の写真がヒットするので、この絵はその写真を加工したものだという事が分かる。その写真がどこのものかというと、「リヴィウ」という現ウクライナの都市である。旧ソ連の領地内なので一見矛盾が無さそうにも思えるのだが、問題はリヴィウの位置とBETA侵攻の歴史とクリスカが生まれた場所やタイミングである。

まずBETAの地球侵攻とクリスカたちを生み出したオルタネイティヴ計画の歴史をおさらいしよう。必要なところだけ切り出すが、BETAが地球に到達したのが1973年、クリスカたちを生み出すオルタネイティヴ3の開始も1973年である。BETAはその後75年には黒海沿岸を北上、ソ連領への侵攻が激しくなっている。つまり、この段階では現ウクライナ領は戦場となっているだろう。78年にはパレオロゴス作戦が実施され、その反動で一気にBETAの支配領域は拡大している。シュヴァルツェスマーケンのシルヴィアの過去話「死の都にて」が1979年のポーランド撤退戦なので、80年までには確実にBETA支配域である。オルタネイティヴ3については、78年に本部をノボシビルスクからハバロフスクに移転したことが分かっている。その後、82年にソ連がアラスカを租借し、中央機能を移転している。オルタネイティヴ計画についても当然アラスカに移転しているはずであり、少なくとも社霞の育った施設はアラスカにあった事が漫画版で描かれている。

オルタネイティヴ3に関する情報として、霞やイーニァは計画末期に生み出された第六世代であることが示されている。上記の描写を合わせても、彼女たちは80年代半ば以降にアラスカで生み出されていると予想される。そして、クリスカについては「ひと世代前の技術でイーニァの後に作られた」という記述がある。つまり、そのまま受け取るならクリスカはアラスカで生み出されている可能性が高いのだ。少なくとも第六世代誕生の時点でリヴィウはBETAの支配域にあることは間違いないので、仮に別の場所で生み出されたとしても時間的にリヴィウである可能性は無い。

従って、クリスカの故郷がそもそもロシアなのか?というのが第一の疑問である。オルタネイティヴ3初期にはロシア領内に施設があった事は間違いないし、もしかするとリヴィウにもあったのかもしれないが、時間的な事象を踏まえるとクリスカ誕生の時点では間違いなくアラスカが本拠地である。なのでメタ的な事を言えば、ストーリーを優先してそういう設定にしたし、画像も適当なロシアっぽいものを使っただけでどことかは深く考えてないというのが実情なのだろうか。敢えて矛盾を解決する考察をするなら、初期の発現体が持っている記憶が何らかの形で継承されてそういうイメージとして定着しているという可能性は考えられる。マブラヴはシリーズ通じて、記憶や感情が存在していればそれのソースを同定することは困難であることが語られており、クリスカ自身の記憶でなくても、それを自身の記憶として認識している可能性は問題なく提示できるだろう。お互いにリーディングやプロジェクションをかけることが可能なら猶更である。

ということで、第一回の考察はクリスカの故郷についてであった。今回は残念ながら矛盾を導く結果となってしまったが、次回は逆に、設定の細かさに感動させられる話をしていきたいと思う。

※画像等を使用する場合の著作権はaNCHOR二次創作ガイドラインに準拠しています。 ©Muv-Luv: The Answer

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