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多数決を疑う
こんにちは。ローヴェです。
先週の記事で飯山陽さんのことを今回の記事で書くと予告していたのですが、体力が無いのでやめます。
実は、あの事件のあと、飯山さんの本2冊を買ったのですが(新品で)、目次を見ただけで吐き気がしたので、しばらく飯山さんからは離れたいと思います。(体力を取り戻したら、そのうち書きます(笑))
ところで、飯山さんは7.9万人のフォロワーがいらっしゃるということで、たくさんの人の支持を受けていますよね。でも果たして、たくさんの人が支持しているからといって、その人が正しいことを言っているということになるのでしょうか。そういうことを今日のテーマにしたいと思います。
「三人寄れば文殊の知恵」と言われるように、1人よりもたくさんの人が集まって話しあったほうが、良い結果が得られるということは、みなさんも体験されたことがあると思います。しかしながら、それは一人一人の判断を間違わない確率が高いときに限ります。
実際、昨今の政治状況を見ていると、多数決が上手く機能していないように思えます。一人一人の正しい判断をする確率が落ちているのではないかと思うこともしばしばあります。
で、「一人一人が判断を間違わない」確率を高めるためにどうすればいいのかというと、1つは教育だと思います。一人一人の知性を高めるということですね。でも、こちらは時間がかかる。
教育以外に方法があるのだとしたら、それは熟議だと思います。簡単に言えば、各自がじっくり考えた上で話し合うということです。これが、なぜ「一人一人が判断を間違わない」確率を高めるということになるのか。それは、熟議においては会話のベースが理性になるからです。人間の行動のシステムは2つに大別できます。「感情」と「理性」です。「感情」はスピード感重視で、急に差し迫った危機などに対応します。スピード重視であるがゆえに、正確性は劣ったものになります。対して、「理性」は正確性重視です。そのぶん、判断を下すのに時間がかかる。
ここまで考えると、何か大切なことを決める際には、熟議が有効であることは明らかだと思います。
では、それを意思決定の場に用いるにはどうすればいいのでしょうか。もちろん全員が参加して議論するのが理想なのですが、国や自治体の意思決定となると、全員が参加するのは難しくなります。
全員が参加するのが難しいとなると、代表して誰かを選ぼうということになります。それが現代では「選挙制」となっているのですが、この「選挙制」には様々な問題点があります。人気投票に陥りやすいために、正しい政策を訴えていなくても、人気があれば議員に当選してしまうのです。さらに、日本の場合は供託金という壁があります。お金がなければ選挙に立候補しにくいのです。
この課題を解決する1つの手段は、選挙の仕組みを変えること。詳しくは「多数決を疑う」(坂井豊貴著・岩波新書)をご覧いただければと思うのですが、ボルダルールの導入などが挙げられます。
ボルダルールとは簡単に言えば、「1位に3点、2位に2点、3位に1点」という方式で候補者に各有権者が点を付けます。最多得点の候補者が当選します。こうすると、保守分裂で革新勢力が漁夫の利を得るとか、その逆とかが起こりにくくなり、より民意が反映されやすいという利点があります。
もちろん、ボルダルールの他にも供託金の額を下げるなど他にもすべきことはたくさんあると思います。
もう1つ手段をあげるとするならば、そもそも選挙制を廃止して、「抽選制」にしてしまうことです。詳しくは、「選挙制を疑う」(ダーヴィッド・ヴァン・レイブルック:著, 岡﨑 晴輝:訳, ディミトリ・ヴァンオーヴェルベーク:訳・法政大学出版局)をご覧いただければと思います。
「抽選制」というのは、裁判員制度の議会版と考えてもらえば分かりやすいと思います。要するにくじ引きで選んだ人が議員になるということです。無作為抽出を行えば、くじ引きで選んだ人たちはちょうど日本社会の縮図となるわけです。そういった方たちが議員になる方が、現実にどういった問題があるか見えやすくなるのではないでしょうか。また、さっきも言った通り、議会の中では熟議が行われます。通常は職業政治家の人たちだけが議論をするものですが、一般の人たち(抽選で選ばれた議員)が議論に参加することになれば、熟議の習慣が議員にならなかった人にも広まっていくのではないかと思うのです。そうすれば、政治の場だけでなくとも、各人の理性がちゃんと働くようになり、それぞれの状況における意思決定がより良いものとなり、社会が良くなっていくのではないかと思います。
そもそも、多数の支持を得ているから善みたいな昨今の風潮には違和感を覚えます。実際、ヒトラーはたくさんの人の指示を得て独裁者になったわけですから。「多数派を疑う」人たちが少しでも影響力を持つことがあればなと思っております。
【まとめ】
・多数決が機能するためには、一人一人の正しい判断をする確率を上げなければならない。
・一人一人が正しい判断をするには、時間はかかるが堅実な判断をする「理性」の力が必要。
・今の選挙制度では意思決定をする上で不備が多い。
・「理性」の力を生かすためにも、「抽選制」を採用して「熟議」の文化を根付かせるべき。