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第4章 スキマ時間を活用する勉強法−机に向かう時間を減らす(5)耳から学習−録音とオーディオブックを活用する

前回まで、机に向かわずとも、電車やカフェを活用すれば勉強時間を作り出せることをご紹介しました。

また、分単位のコマギレ時間も「塵も積もれば山となる」こともお話ししました。

今回はまだ「眠っている」スキマ時間の活用方法についてご説明したいと思います。

私の自宅は、最寄り駅から徒歩約10分の場所にあります。また職場も、大学最寄りの東武野田線豊四季駅から徒歩約12分ほどかかります。

自宅と自宅最寄り駅の往復で約20分、豊四季駅と江戸川大学の往復で約24分、合計約44分の時間を「費やして」います。

大学には週4日出勤することが原則ですが、夏季、冬季、および春季の長期休業期間中は出勤日数が減りますので、入試関連業務を入れても、年間出勤日数は160日程度です。

自宅から駅まではほぼ毎日移動していますので、年間約11,140分の時間を電車に乗るまでの段階で要していることになります。

実際は、他大学への出講時に最寄り駅と大学の間の往復徒歩時間もあります。また、その他別の場所へ出掛ける際の徒歩時間も含めると、少なくとも年間約15,000分を徒歩に要していることになります。すなわち、年間250時間となります。

さらに、入浴時間も大きなスキマ時間です。かりに1日30分を入浴に要している場合、1年間で182.5時間となります。

合計で432.5時間。

これは、日本商工会議所簿記検定2級合格に必要な標準学習時間350時間〜500時間や通関士試験400〜500時間に相当します。また、大学生などに人気の資格宅地建物取引士試験は300時間ですから、毎日のコツコツ学習で、宅建の勉強も机に向かうことなくクリアできてしまいます。

徒歩移動や入浴の時間をただ「費やす」だけの「コスト」と捉えるか、絶好の勉強時間に充てることのできる「機会」と捉えるかで、大きな差が生まれます。

入浴中は本を読めますが、水に濡れるためあまりオススメできませんが、何とか読めます。しかし、徒歩移動中は本を読むことはできません(二宮尊徳は別ですが、人やモノにぶつかる恐れがありますね)。しかし、徒歩移動中にイヤホンをしながら音楽を聴いている人はとても多いですね。イヤホンしながら熱心に走り込んでいるランナーにもよく遭遇します。

ここで発想を切り替えて、音楽ではなく、自分の音声を吹き込んだ録音やオーディオブックを聴くようにすれば、徒歩やランニングの時間が勉強時間に早変わりします。

資格試験のテキストを音読してスマートフォンに録音して、それを徒歩やランニングの時間中に聴くようにします。

私の周りに、テキストをひたすら音読し続け、見事国立大学の医学部に合格した知人がいます。その知人は「音読せず、ただテキストを読むだけの勉強は勉強のうちに入らない」と別の人に語っていたそうです。

この知人が国立大学の医学部に進学したのは、今から四半世紀も前ですので、今のようにスマートフォンはありません。おそらく、音読していただけだったようです。

それでも、音読は脳を活性化し、耳に音声が入るため、漫然とテキストを目で追うだけの勉強と比べると、格段に効果的なのは間違いないでしょう。

でも、その音読を声を出した時だけで終わらせるのは、もったいないと思います。今はスマートフォンの録音アプリで簡単に録音することが可能で、スマートフォン片手にいつでもどこでも簡単に再生することができます。

ただし、自分自身でテキストを音読し録音するのは楽な作業ではありません。家族と同居している場合には、家族の理解も欠かせません。

また、喉に負担がかかりますので、喉が弱い人には大変な面があります。

それでは上記の事情を抱えて音読が難しい人は、徒歩移動の時間の活用は諦めなければならないのでしょうか。

音読の録音が難しい場合でも、方法はあります。それは、オーディオブックを聴くことです。

オーディオブックとは、プロのナレーターなどが、書籍を読み上げた録音データのことです。

日本では、複数のオーディオブックサービスがあり、それぞれに特徴があります。

一番オススメしたいのが、Amazonが提供するAudible(オーディブル)です。最大の魅力は、様々なジャンルの本がラインナップされている点です。ビジネス書や専門書もあり、中には芦部信喜『憲法(第7版)』(岩波書店、2019年)や入山章栄『世界標準の経営理論』(ダイヤモンド社、2019年)といった大部の書物もオーディオ化されています。

Audibleでは、月額1,500円で約40万タイトルのうちの多くの本が聴き放題となります(一部買い切り制のみ対応しているタイトルがあります)。最初の30日間は無料で試せますので、自分に音声書籍が合うのか見極めることもできます。

もう一つのオススメは、株式会社オトバンクが提供するオーディオブック・ドット・ジェーピーです。2007年にサービスを開始した老舗で、Audibleでは比較的手薄な小説のタイトルなどがラインナップされています。

オーディオブック・ドット・ジェーピーでは、たとえば、住野よる『君の膵臓をたべたい』(双葉社、2015年)や村山由佳『天使の卵』(集英社、1994年)などがラインナップされています。

料金は月額880円で、年間プランは7,500円です。14日間の無料体験も可能です。

他にもいくつかのオーディオブックサービスがありますが、私は上記2つのサービスの定額プランを契約し利用しています。

上記のいずれのサービスも専用アプリがあり、簡単に再生できます。また、速度調整機能があり、本の内容にもよりますが、2倍速で聴くことが多いです。たとえば、先程もご紹介した芦部信喜『憲法(第7版)』は23時間54分ですが、2倍速で11時間57分で読了できます。

また、紙の本にせよ、電子ブックにせよ、内容の難しい書籍ほど、読み始めるまでにはそれなりの意思とエネルギーを必要としますが、オーディオブックであれば、ボタン一つで気軽に聴き始めることができます。

以上のように、録音やオーディオブックは、移動時間を勉強時間に変えます。倍速機能を使えば、同じ速度で勉強量が2倍になります。

ただし、音声再生は、図表や計算式を表現するには不向きです。したがって、文系科目に適すると思います。

私は、Audibleのオーディオブック・ジェイピーの定額プランを契約し、徒歩移動時間を「耳から読書」に充てることで、読書量が格段に増えました。

できれば、オーディオブックだけで済ませずに、Kindleで電子書籍を併せて購入することで、より知識が確実に身につきます。耳から入れた知識を、改めて文字で読むと効果はさらに高まります。

「耳から読書」をうまく生活の中に取り入れて、より多くの知識に触れることを是非お試し頂ければと思います。

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