英文意訳:密かに話題の「Drink-to-Earn」「NFTボトル」とは?Web3×サステナビリティの世界へようこそ

※以下、「THIRST」から2022/4/12に公開された英文記事
「 THIRST tokenomics: achieving sustainable Web3 gamification 」
の意訳です。ニュアンスが違うところが有るかもしれませんが、ご愛敬で。

※参考読了時間は10分(5,000字程度)。

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訳者注:そもそもTHIRSTとは?

意訳の前に、基本情報を整理しました。既知の方は、すこしスクロールして意訳部分からご覧ください。

乱立するさまざまな「〇〇 to Earn」の中で、いま話題を集めているサービスが、Web3ボトルのNFTを中心としたDrink-to-Earnのサービス「THIRST」。

なんかもうなんでもアリじゃん、、という声が聞こえてきそうですが、サステナビリティを上手く絡めているプロジェクトはなかなかレアな印象です。

また、ソフト・ペグ・メカニズム(法定通貨とリンクしてトークン供給量が変わるシステム)を採用している点も、これまでの他プロジェクトとは一線を画しています(詳細は記事本編で説明)。

THIRSTが販売するマイボトルと、アプリ上のNFTボトルの両方を購入し、Bluetoothで連携させることで、マイボトルを用いた毎日の水分摂取でトークンを稼ぐことができるという仕組みです。

公式Websiteから引用。NFTボトルかわいい

「マイボトルの利用推進」の効果が期待されるだけでなく、ユーザーが稼いだトークンの一部が「水」に関連した発展途上国のチャリティーにも寄付されるという仕組みで、Web3×サステナブル界隈を少し賑わせています。

まさに、トークンエコノミーのインセンティブ設計が持つ「新たなユーザーの行動を創発する力」を上手な形で組んだモデルだなと思い、課題がたくさんで物議を醸す当プロジェクトですが、今回取り上げるに至りました。

※ちなみに、UI/UXがSTEPNのそれに酷似しているのですが、開発チームも「STEPNからインスパイアされた」とTwitterで公認されていました

さて、お待たせしました。
以下、記事の意訳です。


密かに話題の「Drink-to-Earn」「NFTボトル」とは?Web3×サステナビリティの世界へようこそ


NFTなどのトークンの「受給を調整する仕組み」の重要性

人気となった多くのWeb3ゲームは、(悪い意味で)ハイパーインフレに見舞われた。

Axie Infinityのトークンである「SLP」は、2021年11月の0.3ドルをピークに、2022年4月現在では0.02ドルにまで価格が落ちている。Pegaxyのトークンである「VIG」も、2022年2月の0.25ドルをピークに、2022年4月現在では0.01ドルまで下落してしまっている。

そのため、我々にとって重要な目標は、ハイパーインフレを回避して長期的に持続する仕組みを確立することだ。

そのための戦略は2つだ;

  1. インフレとデフレのバランスを取り、法定通貨へのソフトなペグを導入することによる「持続的なゲーム内エコノミー」の実現

  2. プレイヤー以外(機関など)の第三者によるトークン需要の創発


多様な需給調整手段を用意することで、NFT/トークンの持続的なエコノミーを形成

以下にて、我々THIRSTが、いかにして上記1の目標を達成するか、説明してみようと思う(詳細はホワイトペーパーにも記載してある)。

THIRSTはこの事業を実現するにあたり、NFTボトル、ソフトトークン「TTトークン」、ガバナンストークン「TVトークン」の3つのツールを用いている。長期的な安定性のためには、NFTとTTトークンの供給がともに均衡している必要があると考えており、我々はこれらの供給度合のバランスを保つことで実現する計画だ。


NFTとTTトークンのエコノミクス構造(原文から引用)


以下に、NFTボトルとTTトークンを、それぞれ需給コントロールするための”仕掛け”を整理した。


「NFTボトル」の「供給を増やす」

NFT-Up-① ユーザーによるNFTの生成
ユーザーは、自分で保有している2つのNFTボトルを使って、新しいNFTボトルを生成(Breed)することができる。Breed中は丸2日間ロックされるので利用できなくなり、時間が経過するとユーザーは新しい「ボトルボックス」を手に入れる。2本のNFT「親」ボトルは無くなることはないので、純粋に流通するNFTの量が増える仕掛けだ。

NFT-Up-② NFTパックの販売
実施予定のパブリックβテストの開始前には、限定的にNFTパック(訳者注:おそらく福袋のようなもの)が販売される。これもNFT流通量を増やす仕掛けの一つだ。


「NFTボトル」の「供給を減らす」

NFT-Down-① NFTを合体させてレベルアップ
NFTボトルをレベルアップさせる場合に、低いレアリティのボトルが消却される。同じレアリティ、同じレベルのNFTボトル2本を合成し、レベルアップさせるボトルを選択することで、もう一方のボトルはレベルアップの過程で消えてなくなる。

NFT-Down-② ジェムの開封
チャレンジの達成やサービス利用などによって、ランダム報酬としてジェムを入手できる場合がある。NFTボトルにジェムを取り付けることで性能が上がるが、初めて取り付けるにはNFTボトルを消却することでジェムを「アンロック」し、取り付け可能にする必要がある。この作業は1回のみ必要で、以前にアンロックされたジェムはすべてNFTボトルに装着することができる。

NFT-Down-③ 低価値のNFTの消却(バーン)
任意のNFTボトルを消却することで、ユーザーはTTトークンを得ることができる(これは以下のTTトークンの供給を増やす②の方法にリンクしている)。


「TTトークン」の「供給を増やす」

TT-Up-① ユーザーへの報酬
1日にユーザーへ報酬として配布されるTTトークン量は定められており、各ユーザーのTTパワーに応じて適切な配分で配布される。1日の配布上限は1,000,000 TTトークンに固定されているが、TTトークンの価格が 0.1 セント以上であれば、価格に比例してそれ以上に増える。例えば、価格が 0.2 セントである場合、さらに追加で1,000,000 TTトークンが配布されることになる。

TT-Up-② 低価値のNFTを燃やす
上記「NFT-Down-③」のNFTを消却するのと同じメカニズムで、新しいTTトークンを発行する。これによる発行量は大してないと見込んでおり、発行のほとんどはユーザー報酬によってもたらさられるはずだ。

※上記のようにUSDに結びつけた「ソフト・ペグ・メカニズム」を導入した理由は2つある。

1つ目は、供給量の決定システムの透明化だ。USDに結びつけることによって勝手に均衡をもたらしてくれるため、1日あたり報酬配布量の上限設定は自動的に適切にコントロールされる。Web3の "play-to-earn "プロジェクトは、過去に高いインフレに見舞われたが、そのたびに大幅なトークン発行制度の変更が為され、ゲームプレイやゲーム内エコノミーに悪影響を与えてきた。

2つ目は、そもそも暴走的なインフレを発生させないようにするため。報酬額の上限を固定化することにより、ユーザーやボット数の急激な増加に起因する暴走インフレは発生しなくなる。(訳者注:但し、やったらやっただけ稼げるじゃん!というインパクトの強さによるバズ的な利用者数急増は見込めなくなる。むしろ、これこそ正しい愚直なマーケティングなのだろうと思う)

同様のソフト・ペグ・メカニズムは、ゲーム「Splinterlands」のトークンエコノミーでも導入されており、そのトークン「DEC」は、ターゲットとなるトークン存在数を上回っている。下図のモデルは、Naavikの研究に基づいている。


ソフト・ペグ・メカニズムの図。原文から拝借


「TTトークン」の「供給を減らす」

TT-Down-① NFTの生成
ユーザーは、2つの既存の NFTボトルから新しい NFTボトルを生成(Breed)するために一定量のTTトークンを消費する必要があり、生成されるたびに消費されたTTトークンは消却される。
(訳者注:上記の「NFT-Up-①」の施策にリンクしている)

TT-Down-② NFTのレベルアップ
NFTボトルをレベルアップするには、一定量のTTトークンを消費する必要があり、消費されたトークンは消却される。
(訳者注:上記の「NFT-Down-①」にリンクする。つまり、NFTボトルを生成してもレベルアップしてもTTトークン量は減っていくというわけだ)

TT-Down-③ チャレンジへの参加
THIRSTでは毎週/毎月「チャレンジ」が開催されており、これへの参加料がTTトークンで支払われる。尚、これに参加してクリアすると、新しいNFTボトル、ジェム、TVトークンなどがもらえる。

TT-Down-④ クラン(コミュニティ)
ユーザーは「クラン」と呼ばれるオンラインコミュニティを作成したり、参加したりすることができる。クランが互いに競い合う過程で、特定の行動にTTトークンを消費する必要がある場合がある。

TT-Down-⑤ ジェムの開封
ジェムを装備するためには、TTトークンを消費する必要がある。
(訳者注:これは「NFT-Down-②」にリンクしている)

TT-Down-⑥ NFTボトルの修理
NFTボトルは利用するたびに摩耗し、効率が低下する仕様になっている。これをTTトークンを消費することで修理し、効率を回復させることができる。


アウトロ

これがNFTボトルとTTトークンのトークンエコノミーの全てである。今後も関連する記事を掲載していくので、ご期待いただきたい。

ウェブサイト:https://www.trythirst.com/
ツイッター:https://twitter.com/trythirst
テレグラム:https://t.me/trythirst
ディスコード: https://discord.gg/aCaGv2khCs

注:近日中にクローズド・アルファを開始予定のため、Websiteから是非ご参加ください。アルファ版はデジタルのみで、物理的なマイボトルを所有する必要はありません。

-訳文ここまで-


訳者あとがき

「誠実なトークンエコノミーの設計」は、社会的なNFTプロジェクトとの相性が非常に良い。何故か?

「ナントカ to Earn」と呼ばれるサービスが乱立するこのご時世ですが、どのプロジェクトにも「うさん臭さ」を感じてしまう自分がいます。

これは、ポンジ・スキームへの懐疑心と、Axie Infinityのような巨大「Play-to-Earn」のトークン価格が乱高下した経験に基づくものでしょう。

特にトークン価格の乱高下は、Axie Infinity自体も(おそらく)意図したものではなく、ラッキーでアンラッキーな「バズ」だったのだろうと推察しています。

THIRSTはこれを防ぐために「ソフト・ペグ・メカニズム」を導入していますが、実際にどう機能するのか非常に興味があります。導入しても価格は乱高下するのか、はたまた期待感が低くなりすぎてユーザーが集まらないのか。。

ただ私は、これは社会的な意義を掲げるプロジェクトにおいては誠実で正解に近い答えだろうと考えています。

急激なバズは、初期ユーザーの急速な巻き込みに繋がります。これにより、運営側はニーズやプロダクトの検証を一気に進めることができますが、一方でユーザー側は、売り抜けるタイミングを見誤ると大損に見舞われることになります。

逆に言うと、急激なバズを狙わずに共感した初期ユーザーたちと一緒にゆっくりと創り上げていくプロジェクトは、初期ユーザーを集めるのに苦労をするかもしれませんが、徐々にユーザー数が増えていくに従ってトークン価格もジワジワと上昇し、皆で得を享受できる理想的な形であるとも言えます。

つまり、NFTプロジェクトが真に社会的かどうかを見定めるには、このように「真摯で誠実なトークンエコノミー」が設計されているかが、一つの評価軸になるのかな、と考えています。

THIRSTは、STEPNに酷似したバズバズなビジュアルではあるものの、設計思想はずいぶん異なるので、ちょっぴり期待している次第です。


あとがきのあとがき

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では、本当に終わり。

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