「ドイツのクリプト税制がアツい!」何故?EU圏の大きな流れと主要国の動きのまとめ(2022/6/9)

ドイツの暗号資産関連の税政策がアツいです🔥

Coincubの『暗号通貨にやさしい国ランキング(2022年1~3月期)』で、ここのところ暗号通貨(以下、クリプト)への規制を強めているシンガやドバイを抑えて、トップに躍り出ました。

その背景が気になって調べていると、EU圏の最近の動きが見えてきた(+日々の勉強サボりを痛感した)ので、大きな流れをさらいながら改めて整理してみました。

ちなみにKoinlyの紹介している「クリプトの免税国トップ10」でも、1番目に取り上げられていましたね(ランキングではないですが)。

まず結論から言うと

この記事で言いたいのは以下の4点です。

① EUは引き続き"環境配慮"が規制緩和のネック
② ドイツが怒涛のクリプト税制緩和を進めている
③ EU圏だとフランスも積極的
④ ウクライナ侵攻に起因して規制を緩和しづらい雰囲気は続く

では、順を追って見ていきましょう!


EUの潮流|取引禁止には至らないが電力消費の大きい通貨には慎重な姿勢

「ビットコインは電力消費がエグいから環境に悪い」

、、みたいな話を聞いたことがあると思います。

これの主な原因は、ブロックチェーンのコンセンサス・アルゴリズム(=データが正しいことを担保するルール)である「プルーフ・オブ・ワーク(以下、PoW)」にあります。

ビットコインをはじめとした多くの通貨ではPoWが採用されており、その特性上、これのブロック生成(=マイニング)のために世界中で大量の電力がかかってしまっているのが現状です。

電力が安価な地域(多くは化石燃料由来)での電力消費が増え、持続可能性の観点から非難を浴びている、というわけですね。

一時期、EUでは「ビットコインを禁止する」かもしれない法案が議会に通されたことで話題になりました。正しく書くと、暗号資産規制法案MiCAにおける「PoWを採用している暗号資産の利用を制限しようとする条項」です。

しかしこれは、2022/3に草稿から削除されることになりました。なので、EUにおけるビットコインの禁止、みたいな話はこれで無くなったことになります。

※その代わりに、EUタクソノミー(=EUの経済活動における"環境配慮"の定義と目標的なもの)には「2025年1月1日までに暗号通貨のマイニングから生じる二酸化炭素を削減する」条項の導入が検討されています。

平たく言えば「禁止はしないけど、そういう事実は理解しつつみんな気をつけていこうね」くらいのものでしょうか。


ここから、EU議会はむしろ暗号通貨の取引を「正しく知って、良いものは推進する」方向に舵を切り始めます。

採択が進められている暗号資産規制法案MiCAは「暗号通貨の発行と取引」を広く対象にとり、暗号通貨を取り扱う企業は「パスポート型」のライセンスを取得することにより、EU加盟27カ国で事業を拡大することが容易になります。

※まだ正式採択に至っていないため、引き続きニュースを追いかけましょう!


ドイツの潮流|暗号通貨への規制緩和が如実。銀行業界も参入の兆し

そんな雰囲気のEUの中で、暗号通貨の「規制緩和と明確化」に特に積極的な国の一つがドイツです。覚えておくべきは以下の点。

  • ① 暗号通貨は1年保有すれば売却益が非課税に

  • ② 機関投資ファンドは20%を暗号通貨として運用可能

  • ③ Coinbaseにライセンス付与・取引所や銀行も対応を広げる


① 暗号通貨は1年保有すれば売却益が非課税に

ドイツ連邦財務省は2022年5月10日に「暗号通貨の所得税取り扱いに関するガイドライン」を発表しました。

これには「ステーキングやレンディングを含み、1年間以上保有した暗号通貨に対しては、売却した場合でもその利益の全額を課税対象としない」旨が明確に記載されています。

それまでは、暗号通貨の売却益を所得税非課税にするためには最大10年間の保有が条件となっていましたが、今回のガイドラインによって大幅に緩和されました。

※Redditでも盛り上がっていました
Germany Is Ending Most of Its Crypto Taxation


② 機関投資ファンドは20%を暗号通貨として運用可能

いま、2022年7月1日から施行される法案が、通過されようとしています

Spezialfonds(特別な機関投資ファンド)と呼ばれる、富裕層や事業会社などの資金を運用するファンドマネージャーが、資産ポートフォリオの最大20%を暗号資産に投資できるようにするというものです。

この「20%」は、約50兆円に上る規模に相当し、これだけ大きなマネーが暗号通貨市場に入ってくる可能性が生じることで盛り上がっているようです。

尚、日本ではLPS法により、原則としてファンドはトークンや暗号通貨の類を保有することはできません。日本国内でトークンファイナンスが流行らない理由の一つです。


③ Coinbaseにライセンス付与・取引所や銀行も対応を広げる

米Coinbaseは、2021年に暗号通貨の保管事業(カストディ取引)のライセンスを取得しました。現在ではドイツ法人を設立してサービス提供を始めています。

これはドイツ初のライセンス付与事例で、世界で当時2番目にビットコインのノード数が多かったドイツにますます注目が集まりました。

更に、ドイツの電子取引所であるXetra(クセトラと読みます)には、既に20以上のETN(暗号通貨の指標連動証券)が上場されています。つまり、ウォレットを開設することなく主要暗号通貨に連動した運用ができるということです。

今後はトークン化された株式の発行を認めるための法的枠組みを構築することにも言及されています。

また、貯蓄銀行の組合が暗号通貨を取引するためのウォレットの提供を検討しています。ドイツの貯蓄銀行は100兆円・5千万人という規模の資産を管理しており、既に開発は始まっているようです。


その他のEU諸国の潮流|バイナンスがEUに進出開始

その他、いくつかのEU諸国についても簡単に最近の動向をまとめました。網羅的ではございませんが、ご容赦ください。

フランス
2022年5月、米バイナンスがEU諸国で初めてライセンスを取得しました。バイナンスは1億ユーロの「お布施」を入れることで、国民に良いイメージを持ってもらう動きも見られます。
最近だと同国では、マクロン大統領再選によって暗号通貨のルール統一化や「欧州版メタバース」構築の動きが話題になりましたね。

イタリア
ちなみに米バイナンスは、フランスに次ぐ形でイタリアでも2022年5月にライセンス取得しています。

スペイン
2021年10月よりライセンス制度を導入し、2022年2月に自国の暗号通貨取引所「Bit2Me」が当局よりライセンス取得しています。2022年5月、バイナンスのデリバティブ取引が有価証券の情報開示ルールに則っていないとして規制を受けています。


その他の論点

冒頭で触れた「暗号通貨にやさしい国ランキング」では取り上げられていないものの、ベラルーシも怒涛の規制緩和を続けています。

しかしこれは、ロシアへの経済的制裁の抜け穴としてのハブになる役割が強く、持続的で暗号通貨の発展を目的とした法改正ではない印象です。

EU諸国も、規制を緩和した結果うっかりハブにならないように慎重であり、ハンガリーのように議長自ら反対する例さえ散見されます


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以上です。長文読んでいただき有難うございます。

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そして、まだ非公開コミュニティではありますが、トークンエコノミーに関する研究ラボを立ち上げました。ご興味のあられる方は是非DMからお声がけ下さい

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