出張行きたくない vs 行く気にさせたい
荷物の準備が終わってソファでくつろいでいたTが、朝からくまにしがみついていた。
年に数回発症する「出張行きたくない病」だ。
夏に泊まりの出張がなくて楽だった反動か、いつもより遠くの出張予定が続いて疲れるのだろう。
おまけに現在いちゃいちゃ期真っ最中を楽しんでいるから、家を離れるのがイヤだとくまに当たり散らしていた。
自分だって同じ気持ちだ。
でもこの病気が発症すると、行きたくない男 vs 行く気にさせる男のバトルがはじまる。
▶1回戦
今回は3泊4日だからあっという間だよ
→2泊3日ならあっという間と言っていいけど、3泊4日は長い、2泊と3泊にはかなり大きな差がある、行きたくない
→俺の負け
▶2回戦
駅まで見送りに行くよ、また炊き込みご飯のおにぎり作ろうか?
→炊き込みご飯は豚汁と一緒に食べたいから家で食べる
→負け
▶3回戦
早めに一緒に空港に行って空港デートしようか
→空港デート…?
→(お、食いついたな)こんなお店ができたらしいよ、これ空港限定なんだって(とスマホ見せる)
→(立ち上がって)何時に出れるの、俺はもう出られるけど。早く準備したら。
→ win!
最後はまるで『行きたくない俺をTが連れてく』みたいなやりとりになったのが納得いかなかったけど、空港デートして限定スイーツを食べて、ご機嫌で出張に行った。
単純で簡単で素直なTが羨ましい。
シンプルで扱いやすく、壊れにくく直しやすい作りの製品が最も優れている、と工場勤務の先輩に聞いたことがある。
Tは人として優れているし魅力的だ。
こういう大人になれたのは、家族に愛されて、のびのび育ってきたからだろう。
家族連れで混雑している空港を一緒に歩きながら、Tの家族に会ってみたいと一瞬思った。