忘れたくない話
まだ付き合う前、レオが体調悪くて会う約束をキャンセルした時、食べるものを届けたことを覚えてる?
その次の約束も当日にキャンセルになって、もう俺に会いたくないのかなと思った。
でもまた体調が悪かったら…と家に行ったら顔色が悪くて、本当だったんだとわかった。
ベッドに連れて行って寝かせたら、俺にくっついてすぐに寝てしまった。
そのまま俺もウトウトしていたらレオが起きる気配がして、俺が寝ていると思ったのか布団をかけて「ごめんね、ありがとう」と言ったんだよ。
起きてることがバレないように、寝返りするふりしてレオに抱きついて顔を隠したら、レオは俺を抱きしめ返して背中をトントンしてくれた。
そのうちに本当に眠ってしまって、起きたら朝だった。
あの頃よく眠れない日が続いていたのに、あの日はぐっすり眠ったことを覚えてる。
+ + + + +
付き合って4年目なのに、Tからはじめてこの話をきいて、あの頃のこと、その後のこと、いろいろなことを思い出して泣いてしまった。
なんで泣くんだよと笑いながら抱きしめてくれた。
あの頃、何ヶ月かに一度会えるだけでうれしかった。
一緒に暮らすことになるなんて考えもしなかった。
どうしてこの話をしてくれたのかわからないけど、Tがもう二度とこの話をすることはない気がする。
だからここに書き残しておく。
この先何があってもここを読み返して、今日の気持ちを忘れなければ、ずっと一緒にいられるだろうから。
今日はTを抱きしめて、背中トントンして一緒に寝よう。