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日比野くんの日記 (20191127)

日比野はニヤニヤしていた。
教室内で、ある男が女子に囲まれ楽しそうに話しているのを横目で捉えていた。
心は嫉妬に燃えていた。
そいつは学年随一のイケメンで、端正な顔立ちにはいつも品のある表情を浮かべていた。
背筋はシャンと伸びており、普段から人の視線を浴びることに慣れているようだった。

しかし日比野は知っていたのだ、
驚くべき彼の秘密を。
待ち望んでいた暴露の日は、
まさに今日に違いない!
そうだ、今に違いない!!
日比野は立ち上がった。
「そいつはなぁ、おしっこする時の立ち姿がすんげぇダサいんだぜぇ〜!」


……という言葉を、必死に飲み込んだ。

あの日、日比野は男性トイレ内で彼が用を足す姿を目撃して驚愕した。
普段は見れない猫背も、左右非対称の立ち姿も、あまりに不自然で可笑しかった。
ズボンのチャックを上げる時の所作など、下手くそ過ぎて嘲笑に値した。
しかし暴露しようと立ち上がった瞬間、それまで盛んに燃えていた嫉妬の炎の勢いが和らぐを感じたのだ。
人間らしい、あまりに人間らしい姿が、このようなイケメンにも存在すること。
それを思うだけで、多少は彼のことを、いや人間存在全体のことを好きになれそうな気がしたのだ。

日比野は穏やかな気持ちになって、静かに腰を下ろした。
そこに浮かんでいる笑みがあまりに気色悪くて、女子たちはますます日比野から遠ざかったのだった。


*半分、実話*

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矢口れんと
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