【プロの解説】オリンパス大口径中望遠マクロレンズ OLYMPUS Zuiko 90mm F2.0 Macro-分析003
この記事では、オリンパス の一眼レフカメラ用交換レンズシリーズの大口径中望遠マクロレンズ ズイコー 90mm F2.0の歴史と供に設計性能を徹底分析します。
さて、写真やカメラが趣味の方でも、レンズの仕組みや性能の違いがよくわからないと感じませんか?
当ブログでは、光学エンジニアでいわゆるレンズのプロである私(高山仁)が、レンズの時代背景や特許情報から設計値を推定し、知られざる真の光学性能をやさしく紹介します。
当記事をお読みいただくと、あなた人生のパートナーとなるような、究極の1本が見つかるかもしれません。
レンズの概要
現代にもその名を残すOLYMPUS(現OMDS)の銘カメラと言えばOMシリーズですが、元は1970年代より始まるフィルム式一眼レフカメラがその源流です。
OLYMPUS初の35mmフイルムを採用したレンズ交換式一眼レフカメラ「OM-1」は1972年に発売され、当時の35mmフィルム一眼レフカメラの中で最小・最軽量で驚異的なサイズ感を実現したカメラでした。
OMシステムに合わせて準備されたのがOMマウント専用「Zuiko(ズイコー)」レンズ群で、基本のフィルタサイズがφ49かφ55とレンズも小型化されながら高画質化も達成し人気のシステムとなりました。
Zuikoレンズシリーズの特徴的な点のひとつは、FnoがF2.0と当時では大口径なレンズが多数発売されたことが挙げられます。
多くのレンズで「F2.0大口径」と「F2.8あるいはF3.5などの小口径」の2系列からレンズが選べるようになっていたのです。
F2.0仕様のレンズが用意された焦点距離は、21mm、24mm、28mm、35mm、85mm、90mm、100mm、180mm、250mmと、ほぼ隙間なく用意されています。
今回分析するZuiko 90mm F2 Macroは、中望遠域ではZuiko100mmF2.0と人気を二分する銘レンズです。
最近のマクロレンズは100mm あるいは105mmのF2.8で等倍撮影可能な仕様が定番となった感じですが、1990年以前までは90mmも多かったように思います。
その理由は100mmのF2.0やF2.8をラインナップしていたメーカーが多かったので、少しずらして90mmとしていたのではないでしょうか?本当の所はわかりません。
また、近年はMacroレンズのFnoと言えばF2.8が当たり前のように思い込んでしまっていますが、なんとこのレンズはF2.0と1段明るいのです。
OMシリーズのレンズはF2.0が多いことを売りにしていたのでMacroでも統一感を出したということなんでしょう。
ただし、このレンズの撮影倍率は1/2倍(ハーフ)仕様で「等倍」までは至りません。
この1/2倍仕様も特別なことではなく、80年代までは1/2倍が主流で、90年代のAF化の流れとともに1/1(等倍)仕様へ各社移り変わってゆきました。
この90mm F2.0は、100mm F2.0と並んで銘玉と称されたレンズですが、フィルムカメラ全盛期の私はZuiko100mmF2.0の方を購入し、この90mmは購入を見送りました。
マクロレンズは別の物を所有していたので、マクロを数本所有するのは当時の若い私には理解しがたい行為だったのです…
後年、フィルムのZuikoシリーズがもう新品では入手困難となる直前(2006年ごろ?)にセール販売されていたこのレンズを新品購入したのですが、フィルム自体が終焉を迎える時期でもあり、単なるコレクションアイテムとなってしまい、ほとんど使う事の無かったレンズです。
悲しい。
文献調査
さて特許文献を調査しますと同時代に複数のマクロレンズの文献が見つかりますが、特開昭62-18513の実施例1は製品の構成とよく似るのでこれを設計値として以下に再現してみます。
設計値の推測と分析
性能評価の内容などについて簡単にまとめた記事は以下のリンク先を参照ください。
光路図
上図が光路図です。
上図がzuiko 90 F2.0の光路図です。
レンズの構成は9群9枚、非球面レンズは採用していません。ガウスタイプの像面側に3枚のレンズ配置する構造です。被写体側の第1レンズから第6レンズまでの前側ガウス部分が繰り出す昔ながらの1群フローティング方式のマクロレンズだろうと推測されます。
Zuiko100mmF2.0に比較するとレンズ枚数は増加しており、さて100mmとどちらが性能的に良いのか?気になるところです。
それでは、このレンズの光学性能をさらに詳しく分析してまいりましょう。
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