シグマ大口径中望遠レンズ SIGMA 135mm F1.8 DG HSM Art-分析011
この記事では、シグマの一眼レフカメラ用の交換レンズである大口径中望遠レンズ 135mm F1.8 DG HSMの歴史と供に設計性能を徹底分析します。
さて、写真やカメラが趣味の方でも、レンズの仕組みや性能の違いがよくわからないと感じませんか?
当ブログでは、光学エンジニアでいわゆるレンズのプロである私(高山仁)が、レンズの時代背景や特許情報から設計値を推定し、知られざる真の光学性能をやさしく紹介します。
当記事をお読みいただくと、あなた人生のパートナーとなるような、究極の1本が見つかるかもしれません。
レンズの概要
各社のマウントに対応した製品を販売する老舗レンズメーカーのひとつSIGMAは、2012年より「怒涛の超高性能Art」「超快速超望遠Sports」「小型万能なContemporary」と、わかりやすい3つのシリーズで製品を分類し構成しています。
その中でもArt(アート)シリーズは、超高性能を前提に金属部品を多用した高剛性、かつ端正なデザインの重厚長大なフラッグシップレンズです。
本項で紹介する135mm F1.8 DG HSM Artは大口径中望遠レンズでありながら極めて高い解像性能を誇るレンズです。
このレンズは、SIGMAが誇るArt単焦点シリーズのなかでも焦点距離が最も長いレンズです。(2024年執筆現在)
現在のところ、Art単焦点シリーズのFnoは基本的にF1.4ですが、このレンズのみF1.8となっています。
同じFnoであっても、焦点距離が長いほどレンズ径(太さ)は大きくなりますから、重量への影響がより甚大となります。
そのため、流石のSIGMAでも135mmF1.4の仕様には無理があるとの判断をしたのでしょう、Fno1.8と少々抑えてきました。
この効果は絶大で105mm F1.4のレンズは重量1.6Kgに三脚座付きに対して、135mm F1.8は重量1.2Kgほどと軽くなっています。
400g軽いとなれば小型な広角レンズぐらいの重量ですから、もう1本レンズを持てる差になりますから重要なポイントですね。
なおこのレンズは、各社マウントに対応した専用モデルがありますが、一眼レフカメラ用のマウントの製品はマウントアダプターを利用することで、ミラーレス一眼カメラにも使用できます。
私としては焦点距離135mmというのは初めて使った望遠レンズの焦点距離で思い入れが深い仕様です。
しかし、近年はかつてほどの人気や地位は忘れらているように思います、
1960年代までのカメラは、Leicaに代表されるようなレンジファインダー式カメラが大勢を占めておりましたが、このレンジファインダー式はファインダーと撮影レンズが別の光学系であるため望遠レンズでの撮影が非常に難しい問題がありました。
そのためレンジファインダーカメラでは、焦点距離135mmが実使用上の最長クラスとなっていました。
その後は、一眼レフカメラの登場により望遠撮影の問題が解決すると、200mm→400mm→600mmへ次々に望遠レンズが発展してゆくことは皆様もご存じのところでしょう。
さらに望遠ズームレンズの高度化により、135mmは一層のシェアを奪われ「さみしい状況」と言える近況でした。
ところが、このSIGMA 135mmに触発されたのか、SONYやNIKONからも135mmの新型が続々と登場を始めており、新時代の到来を感じます。
それでは時代を先駆けた近代的135mmを分析して参りましょう。
文献調査
さて特許文献を調べると現代の製品なので関連すると思われる特許が簡単に見つかりました。
残念ながらHPで公開されている製品図と完全一致する断面図のデータはありません。
しかし、特開2017-173409実施例4が基本的な構成が、ほぼ同一なのでこれを設計値と仮定し、設計データを以下に再現してみます。
なお、製品と特許データの一番の違いは特許では絞り像側の接合レンズを三枚貼り合わせとしていますが、製品は2枚接合と単玉に分離している点が異なります。
設計値の推測と分析
性能評価の内容などについて簡単にまとめた記事は以下のリンク先を参照ください。
光路図
上図がSIGMA Art 135 F1.8の光路図です。
レンズの構成は9群13枚、非球面レンズの採用は無いようですが、色収差を良好に補正するための特殊低分散材料も4枚配置しています。
前回分析したSIGMA105mmF1.4に比較すれば構成枚数が少ないので、少々豪華な中望遠といった見た目で強い違和感は無く素直でやさしさを感じます。
それでは、このレンズの光学性能をさらに詳しく分析してまいりましょう。
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