【サイドストーリー①】Before the Story 『真紀ルート』:『美少年マゾ地獄〜女体化《処刑》クリニック』
裕実と澪が出会ってから、プロローグの健康診断を受けるまでの日々を描いた非エロのエピソードで、『美少年マゾ地獄〜女体化《処刑》クリニック』本編の同作とは一部異なり、『真紀ルート』の背景となる重要な要素が含まれています。
参考価格:800円
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それは一学期の期末テストが終わり、その結果発表が行われた日の蒸し暑い夕方のことだった。
裕実の中学校では上位三十名が発表されるのだが、三年生は生徒会長で裕実のクラスの委員長の相沢澪が学年一位で、副委員長の山崎和真が二位といういつもと同じ結果だった。
裕実はこの上位三十名にランクインしたことは一度もなく、四月からテスト勉強に付き合ってくれていた澪には申し訳ない気持ちで、掲示板に群がる生徒達の後ろを通り過ぎていった。
その日、裕実は図書委員の当番で五時の閉館まで図書室のカウンターに座っていなければならなかった。テストが終わり、あとは夏休みを待つだけという開放感もあるのだろう、放課後にいつも自習にやってくる常連達もおらず、図書室には裕実しかいなかった。
真面目な裕実は、利用者が少ない場合は冷房を消すというルールを守り、エアコンはつけずにすべての窓を全開にしていた。時折、図書室の前にある銀杏の葉が音を立てると、海からの湿った風が室内を吹き抜け、吹奏楽部の単調なロングトーンの練習や、遠くのグランドからホイッスルや金属バットにボールが当たる音などが風に乗って聞こえてくる。そんなのどかな放課後の時間を誰もいない図書室で過ごすのが裕実は好きだった。
(誰も来なければいいのに)
当番の日はいつもそう思っていたのだが、四月にクラスメイトで密かに憧れていた澪と図書室で二人きりで話してからは、生徒会の見回りで五時を過ぎるとやってくる澪が待ち遠しく感じるようになっていた。
見回りは当番制のようで、澪ではない生徒会のメンバーが来た日には、果てしなく残念な気分だったが、今日は違っていた。
「五時過ぎまで図書室で待ってて」
図書室に向かって歩いている裕実に、澪が追い抜きざまにそう言って、走っていたのだった。
五時になるとすぐに他の当番達は帰っていき、返却された本の整理もなく、何もすることがない裕実は、図書室のドアに「閉館」と書かれた札を下げ、「図書室」なのに「閉館」というのは変じゃないかと思いながら、窓際の席に座って澪を待っているうちにうたた寝をしてしまった。
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『真紀ルート』美少年マゾ地獄〜女体化《処刑》クリニック
『美少年マゾ地獄〜女体化処刑クリニック』本編から分岐する別ルートです。先に本編をお読みください。
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