映画『嘘喰い』感想
この映画は、おそらく全編通して「見る」「眼差し」が通底したテーマになり得ると思う。
「見る側」は強者で、「見られる側」は弱者。
冒頭の屋形越えの場面では、主人公の宿敵切間創一は制空権まで支配しており自分を見下ろすものを許さなかった。その切間に貘は敗れる。そこから物語は始まる。
次に、鞍馬蘭子は全ての客を監視する闇カジノの元締めでありながら、見られる側になり、佐田国に負けを許す。絶対に有り得ないはずの「見る側」の負けが起こる。(これには理由がある。蘭子は見る力を奪われていた)
そして、一度貘の仲間になった梶は、貘の事が見えなくなり、貘から離れていく。梶には貘の負った深傷が見えないし、見えないことは二人を引き離してしまう。
最後の勝負に現れた佐田国は、常に濃い色のサングラスを着用し、一見、見ることを閉ざしている。そして、目隠しをしても彼に有利なゲームを引き当てる。佐田国は自ら見ない事で見える側になる。
逆転劇では、貘が佐田国の見る力を完全に奪う。佐田国は貘に「見えない」という嘘を喰われてただ見られる側になる。貘の行ったイカサマは「覗き」だった。圧倒的な見る力で貘は佐田国に勝つ。
そして最後に、佐田国が全盲の「見えない、見られるだけの側」と暴かれる。
ラストシーンは、宿敵の切間と貘の見つめ合い。そこで勝負は次の物語に持ち越しとなる。
出資者の人主はモニター越しに対戦を見る側。強者。
対戦をやはり見ている切間も強者。
常に見られている貘は、最初の負け以降、「力を失った側」を装っている。あるいは貘の纏う「敗者(弱者)」のしるし。
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