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ドラマ劔 その2 にじいろカルテ 幻想

 「雨が降らないと虹は出ない。」
 人は、なぜ、物語を、ドラマを求めるのだろう。
 「にじいろカルテ」は、閉じられた村というひとつの社会で、開かれた関係を作る、その見果てぬ夢を雨上がりの虹のように描いたドラマだ。

 病気になって初めて健康であることの意味を知る、年老いて初めて若さの意味に気付くように、閉ざされることでしか開かない鍵、扉もあるのかもしれない。この孤独な星が、閉ざされた大気圏の中で、広大な宇宙に無防備に開かれているみたいに。
 僕たちは、その星々の言葉に耳を閉ざし、何を夢見ていたのだろう。
 美しいもの、真なるもの、善なるもの、それらは、その内と外を繋ぐ回路のように、閉じながら開かれ、開きながら閉ざしてしまう。

 もし、あのまま、真空(高畑充紀)が村に帰らなくとも、それは、深い悲しみの痕跡だけは残すだろう。その透明な傷口に降る雨、やさしく唇を虹のように重ねるだけの思いのたけは生き続ける。きらきらと輝くあの日々とともに。

 人はなぜハッピーエンドを願うのだろう。
 人生のつらさ、悲しみ、苦しみ、嘆きに見合う、釣り合うものは、あの空に架かる虹のように、簡単には手に入らないから。

「ぼく、しぬの」朝のシャワーの折に、息子が真顔で尋ねる。

(以下略)

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