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レンズ談義 その8 エクター 栄光のレンスは更なる高みを目指す
Ektar(エクター)、数ある名玉のなかでもひときわ高く聳えるイーストマン・コダックのレンズ群の総称、選ばれた最高品質のレンズにのみ冠された誇らしい呼称。
シビリアン・カードン(第2次世界大戦の末期に、米軍通信隊のために製造されたライカⅢaのコピー・カメラ(過酷な条件下でも確実に撮影できるよう、厳格な基準が設定されたため、部品の精度はコピー元を上回っているとの評価)を、終戦後、民間用に販売したもの)用のエクター47mmF2を筆頭に、メダリストの100mmF3.5、レチナの50mmF3.5などがある。
シグネット35に搭載されたこの44mmF3.5は、安価ながら、その高い描写性能で、未だにレンス沼の住人たちを驚かせている。
3群4枚の典型的なテッサータイプだが、その発色の素晴らしさは文句の付けようがない。
その鮮烈で強靭な描写力で、写真の世界を一瞬にして絢爛たる宮殿に一変させてしまう。
恐ろしいほどの説得力を持ったプリンスのごときレンズ、テッサータイプの最高峰に連なっている。
その秘密は、レンズの成分にあるようだ。
エクターは、ニューヨークのロチェスター工場で製造されたものだが、ガラス成分に砒素などの化学物質を含んでいるため、現在では、環境上の問題から製造できない、所謂「新種ガラス」だ。
特殊な化学薬品成分が含まれていることで、収差の補正や発色に大きな違いが出ているものと考えられる。
本家のテッサーの鮮鋭かつ濃密な発色、繊細かつ精細な描写とは、幾分赴きの違う、どことなく気品がありながら、それでいて、不思議な異次元の味わいも感じられる写りである。
ともかくも、フィルムメーカーの作ったレンズには、味のあるレンズが多い気がする。
小西六のヘキサー75mmF3.5、富士フイルムのEBC フジノン55mm F1.8、アグファのカラー・ゾリナー50mmF2.8など。
何年か前、一か八かで、カメラから無理やり取り外したレンズは、思ったより簡単にマウントを着けられ、ミラーレスカメラに無事着地した。
絶対の高みを目指したその軌跡は、美しい輝きを秘めたガラスに結晶化され、写し出された画像にその記憶を留める。
光の芸術と呼べるのは、エクターとクセナーだけかもしれない。
ただし、テッサータイプに限っての話ではあるが。
なお、エクターには、製造番号の前に、アルファベットの2文字が刻されているが、1~0の数字をCAMEROSITYの10文字に置き換えて製造年を表しているものである。
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