新参ファンのヒプマイ考

この記事は、ヒプマイを避けていた私がヒプマイにハマってから半年~1年未満の備忘録みたいなものです。
私の推測が多分に含まれている他、既に公表されている情報であったり、私の調べ方の悪さや勉強不足で十分でない記述もあるかと思いますが、その点はどうぞご容赦頂ければ幸いです。
また、ヒプステには(ハマると破産しかねないという不安しかないので未だに手を出していないため)、ほぼ触れていません。ご了承ください。

生徒の発表を見守る先生みたいな心持ちで見て頂ければと…。
新参の考えや沼る様を眺めながら、ご自身がハマった頃を思い出したりするキッカケなどとして楽しんで頂ければ嬉しいです。

なお、最初の項目の『第一印象』や『おまけ』は個人語りも含んでおりますし、目次で気になる部分へ飛んでいただいても良いかなと思います。


●第一印象

・女性向けコンテンツへの反発心

「また女性向けコンテンツか」、これが最初に出た正直な感想だった。
最初に知ったのはおそらく2017年頃で、池袋の乙女ロードの交差点の、「まんだらけ」かその横のファミマに山田兄弟の広告が大きく貼られていたのが最初の出会いだったと思う。

「また女性向けコンテンツ」というのも、2015年に『刀剣乱舞』『あんさんぶるスターズ!』『アイドリッシュセブン』という現在でも有名なIPコンテンツが誕生・流行し、2017年頃もそれらを追うように様々な女性向けIPコンテンツが登場していた。
元々、私は流行にはすぐ乗らないで警戒する節があるのだが、『ヒプノシスマイク』もその中に分類されていた。

それまでも多くの女性向けIPコンテンツが誕生してきたが、その殆どが乙女ゲームやBLゲーム原作で、キャラクターの人数は5人強。また『ネオアンジェリーク』や『遙かなる時空の中で』など人数の多い作品はロングヒットによる続編や新シリーズの展開などでキャラクターが増えたために人数が多いのであって、初期はそこまで多人数ではない。
【最初から大人数を投入して展開する】というコンテンツの展開の仕方は、2000年代後半に流行した大所帯アイドルのようなものを感じさせられて、どうにも苦手意識があった。
(女性向けコンテンツの歴史について興味のある方は
https://news.denfaminicogamer.jp/kikakuthetower/180419
https://news.denfaminicogamer.jp/180419b
このあたりを参考にされたい。)

加えて、当時の女性オタクの環境が私にとって居心地が悪かったという要因もある。
個人的主観にはなるが、2000年代の女性の二次創作系同人はBLがメジャーだったように思う。むしろ「ステータス」という風潮があるように感じていた。
特に、私が学生時代を過ごした頃は『REBORN!』が爆発的に流行していた時代。当時のことを知っているオタクの女性であればその人気の凄まじさ、二次創作BLの多さは記憶されていることだろう。

一方、当時の私はBLや腐女子に対してマイナスの感情しか持ち合わせていなかった。(これに関しては自分の育ってきた環境の影響もあるのだが。)
オタクとして二次創作の小説を書き始めたのは男女カプがキッカケであったし、その延長として夢にもハマっていったのだが、当時は男女カプも夢もマイナーな嗜好扱い。肩身が狭いと思っていた。
それでも、腐女子の友人に頼んで推しキャラのBL同人誌を借り、好きになろうと努力したこともあったが、好きなのはどう頑張っても「ブロマンス」の域を出られなかった。
それどころか、別の腐女子の知人に対面で馬鹿にされた挙げ句、食事中にR18の話題をされたことがキッカケで一切受け付けなくなってしまった。
(なお、現在は適度に流せる程度まで自衛出来るようにはなった。)

2017年頃になると2015年の『刀剣乱舞』で「女審神者」が流行したためか、男女カプや夢も多くの女性オタクに受け入れられたようで肩身の狭さは解消され始めていた。
さらに、2014年頃、『ふゅーじょんぷろだくと』から『(原作名)+カレシ』というアンソロジーが出版された。夢関連の作品などにつけるタグ、「◯◯プラス」の元ネタとも言われる(別の説もあるようだが)これは、現在の夢漫画の原型が集まったようなアンソロジーでとても衝撃を受けたのを覚えている。
2018年にコナンの映画の『ゼロの執行人』で安室透のファンが急増したことでその流れは更に加速することになる(少なくとも私はそう捉えている)が、まだその段階では無いのが2017年である。

つまり、2017年の段階では『女性に人気のコンテンツ』=腐女子も多い=BLが多い=私にとって居心地の悪い場所、という方程式が成り立っていた。
ただでさえ自分の愛好する作品群でも日々、好みでないものを目にして困惑している中、「新しい女性向けIPコンテンツ」はあえて見たいと思うものではなかったし、2015年から拡大していた前述のIPコンテンツの展開に嫌気が差していた、という2つの要因が合わさって『ヒプノシスマイク』へのマイナス感情に繋がっていた。

・食わず嫌いのHIPHOP

私には、「影響されやすい」という側面がある。特に昔から母の言動に影響されやすいところがある。
その母が日本のラップにネガティブな印象を持っていたため、そのまま鵜呑みにしていたという訳だ。
他の家族もHIPHOPやラップは聞かないし、揃ってインドアなので、野外ライブなどそういう類には興味を持っていない。

HIPHOPやラップに良い印象を持たない私が、ヒプノシスマイクにハマる余地は皆無に等しかった。

・CDが売れない時代に大丈夫?

「iTunes Music Store(アイチューンズミュージックストア)」が日本でサービス開始したのが2005年。
次第に「CDが売れない時代へ」と言われるようになり、アイドルの握手券など特典商法がエスカレートし始めたのが2010年代前半。
そういった時代背景がある中で、楽曲メインのコンテンツを展開するのだから「大丈夫か?」となるのは私が素人だからだろうか…。
いくら最初の印象が悪くとも、この世に生を受けたキャラクターたちが使い捨てにされるのは気分が良いものではないし、心配ではあった。

●そして、ヒプマイに魅了される。

さて、前置きが長くなってしまったが、本題に早速入りたい。

・“キャラソン”とラップの相性の良さ

まず先に、ヒプマイのレーベル「EVIL LINE RECORDS」と、それを擁する「キングレコード株式会社」について触れておきたい。

キングレコード株式会社は1931年に発足した、出版社の講談社(当時は大日本雄辯會講談社)の音楽部門「キングレコード部」として創業、1951年に株式会社として独立した会社である。つまり老舗中の老舗。
(余談になるが、コミカライズ版の出版社が講談社と講談社の関連企業である一迅社であるのもそういった縁によるものなのかもしれない。)
「CDが売れない」と言われ続けてもう随分経つが、2000年3月決算期以降23期連続で黒字という良い意味でとんでもない会社である。
そして現在の「キング・アミューズメント・クリエイティブ本部」の前身の1つである「スターチャイルド」のレーベル(レコード会社の組織の1つ)から派生して2014年に誕生したのが、「EVIL LINE RECORDS」である。
その「スターチャイルド」は1981年のレーベル設立以降、数多くのアニメ作品に関わってきた歴史を持っている。

さて、『第一印象』の項目で述べた通り、当時既にCDが売れない時代に突入しており、レコード会社の多くがどう生き残るかを模索し続けているのは想像に難くない。
その生き残るための方法の1つとして、キングレコードは「キャラクタービジネス」を選んだのではないだろうか。
加えて、2000年代当時はキャラソンが多く発売されるようになり、人気キャラクターのキャラソンであればオリコン10位以内ランクインすることも珍しくなく、その最たる例が2001年以降現在も発売されている『テニプリ』のキャラソンだ。
そしてキングレコードおよびスターチャイルドレーベルは、アニメ関連CDの発売などキャラクタービジネスに既に長く関わっている。「キャラソン」が売れる、オタクの中で定着していることは気付いていたのではないだろうか。

同時に、レコード会社として売りたい音楽ジャンルの1つがHIPHOPおよびラップであったのではないだろうか。
日本でのラップの歴史を調べると、1980年代に入ってきたようだが日本ではなかなか定着せず、2004年に発売された『ココロオドル』がニコ動で人気を博し、2015年に放送開始された深夜のテレビ番組『フリースタイルダンジョン』がラップの定着に一役買った、といった話が見つかった。
ヒプマイにおいてどういう経緯でHIPHOPやラップをメインに据えると決めたのかは私には分からない。日本ではあまり定着していないHIPHOPやラップを売り込むためにキャラクタービジネスが使われることになったのか、あるいはキャラクタービジネスと何かしらの音楽を絡めるためにHIPHOPやラップが選ばれたのか。後者ならなぜHIPHOPやラップを選んだのか、注目が集まっている時期だからか、あるいはキャラソンでは珍しい音楽ジャンルであるからなのか。
いずれにしても、売り込むことに成功すればその後の可能性は未知数である。

そして、キャラソンとラップ、実はかなり相性が良いように思う
というのも、キャラソンはそのキャラクターの考えや思いを歌ったもので、自己紹介的要素が強いのが特徴。
そして、ラップにおいて自己紹介は鉄板ネタである(とヒップホップMCのZeebra氏が自身の動画のキャプションで記述している)。

これに気付いた公式の人、天才では?

もちろん、従来のキャラソンのように、J-POPやロック調など、キャラクターをイメージした曲のスタイルで歌い上げるのも悪くは無い。だが、キャラクターらしさを出しすぎると逆に『キャラソンすぎ』てしまい、作品のファンやオタクで無ければ「恥ずかしすぎて聞けない!」といった違和感のようなものが生じてしまうことがある。
(逆にそこを限界突破してしまい、最早ネタ曲扱いと化したのが『クフフのフ』ではないかと思っている。)
だがラップであれば、そもそもが自己紹介ネタが鉄板の音楽ジャンルであるので違和感が生じにくいのではないだろうか。
実際、ヒプマイの曲はキャラクターの考えや思いを歌っているキャラソンであるものの、ラップの要素が強いこともあり、「あまりキャラソン感が無く聞ける」と私は思えた

(とはいえ、やはりキャラソンであることに変わりは無く、キャラソンの類が苦手な人はヒプマイに苦手意識を持っているようであるし、学校の給食時間に流れてクラスの空気が凍ったという話も聞かなくはない。
また、avexとソフトウェア企業のジークレストが展開しているヒプマイと似たようなコンテンツに『Paradox Live』があるが、こちらの方がキャラソン色が薄いという意見も聞いたことがある。…というか、Paradox LiveもHIPHOPプロジェクトなのか、知らなかった。)

・ガチのラッププロジェクト

前述の「キャラソンぽさ」を消しているのが、プロのラッパーによる「ガチのラップ」の楽曲提供である。
ラップについての知識が未だに浅い私には分からない部分も多いが、HIPHOP界隈で有名なラッパーがヒプマイに楽曲提供しているの有名な話。であれば当然、提供される楽曲も「ガチのラップ」である。そして多くのラップ好きやラッパーによってヒプマイ楽曲も「ガチのラップ」だとお墨付きを得ている。
良いものであれば私のような初心者でも「これがラップなんだ」と学習できるし、逆にHIPHOPに詳しい人であれば「あのラッパーが楽曲提供しているなら」とコンテンツに興味を持つキッカケになる。(特にヒプマイの男性ファンの多くはこのパターンなのではないだろうか。)
また、ラッパー含むクリエイター側からすれば、長年日本ではあまり親しまれてこなかったラップが注目されるキッカケになり、自らの仕事が増える可能性も大きくなる。

つまり、キャラクターコンテンツとして成功させたいレコード会社、音楽を作るのが仕事のクリエイター側、どちらにとってもWin-Win

もしヒプマイが「蓋を開けたら“なんちゃってラッププロジェクト”だった」ならば、ここまで大きなコンテンツにはなっていなかっただろう。

・大元がレコード会社だからこその強み

もしレコード会社での企画でなかったら、ここまでヒプマイは大きくならなかったのではないだろうか。
あくまで想像にすぎないが、アーティストからすれば自分に馴染みのないアニメ会社などからオファーが来るよりも、「あの老舗のキングレコードの企画のオファーなら」という信頼感や安心感があってもおかしくはないのではないか。
また、(こういった業界とは無縁の人間なので正確かはわからないが)、おそらくレコード会社以外の会社が同様の企画をするとなると、レコード会社をどこかしらで挟む必要があると思われる。しかし、企画しているのがレコード会社であれば、レコード会社を挟む必要が無くなり、レコード会社との契約等で生じる金額は抑えることが出来る
更に、レコード会社で行う仕事のノウハウは相当量が蓄積されているはずで、それを活かすことが出来る。より専門的な内容になればノウハウなしに1から作るとなると大変なはずだ。例えば『HYPSTAR』は蓄積されてきたであろうファンクラブ運営のノウハウが活かされている可能性も考えられる。

つまり、レコード会社としての強みを遺憾なく発揮出来るとも言えるだろう。

・公式の優れたリスクヘッジ

5年以上継続しているコンテンツとなると、炎上した話が1つや2つはあったりする。
そして規模が大きければ大きいほど、ファンではない人間の耳にも入ってきて、コンテンツへのイメージ悪化に繋がることもあるのが「炎上」だ。
しかし、ヒプマイの場合は「公式側がやらかした」という炎上話が同種のコンテンツに比べて(体感ではあるが)本当に少ないように感じる

私が記憶している中で、ヒプマイの公式側が原因の炎上案件としては「タニタカフェ缶バッジ抜き取り事件」がある。ランダム販売の缶バッジのシークレットが店員によって不正に購入・抜き取られ、転売された疑惑のある事件だ。
しかし、これはコラボカフェ運営会社の社員管理に問題があった上、初動の対応がファンに対して総スカンを食らうものだったのが、炎上が大きくなった理由だ。同じ公式の括りでも版権管理側の落ち度はシークレットだけ重い仕様でOKしてしまったことくらいだろう(そういった商品のチェックにどのくらい関わるのかは私には分からないが)。
とはいえ、店員として雇った人間がランダム商品を販売する場で計量し抜き取る、(そしておそらく転売する)という不正を働くなんて、当時は今ほど考えにくく、あまり認識されていなかったように思う。雇う側としても、そんな疑いをかけたくはないだろう。
いずれにしても、公式による炎上案件とはいえ、どちらかといえば版権側がコラボカフェ運営側の落ち度で版権にキズをつけられた格好のように感じられる。

そして、私が記憶している限りでは、上記の話以外で公式側の落ち度によるヒプマイでの炎上案件を聞いた覚えがない。
もちろん、ファンからすれば細かいものがたくさんあるのかもしれないが、「(これから顧客になるかもしれない)部外者の耳に入るほどの炎上案件」がヒプマイの場合は実際に少ないのではないだろうか。(実際どうなんででしょうか…?)

また、コンテンツへのマイナスイメージに繋がりかねないのが、出演声優の不祥事である。
近年は声優のスキャンダルも週刊誌にすっぱ抜かれる時代。レーベルである『EVIL LINE RECORDS』の『第3の声優アーティストプロジェクト』となっているヒプマイの場合、声優の不祥事は大きなダメージになることは想像に難くない。そして現在、メインキャラクターを演じる声優による不祥事の類は聞いたことがない
声優自身がそれを十分に理解していることは勿論であるが、レコード会社側も人柄などを見抜き、確実なキャスティングを行ったのではないだろうか。

かと言って、レコード会社もコンテンツに関連するトラブルがあれば声優各々に任せきりにはしていない。数年前にファンの声優に対する行き過ぎた言動がファン界隈で炎上、公式側が二次創作に関する声明を出したことがあった。これはレコード会社側が出演声優を守るためのことで、その姿勢をきちんと示したものと思われる。出演声優を蔑ろにしないという意思表示はファンにとっても安心してコンテンツを楽しめる要素になる。

リスクヘッジやトラブル対応へのノウハウなどもしっかり考えられているように思われるヒプマイ公式。流石、公式を運営しているのが老舗レコード会社だけあるといったところだろうか。

・仕事を楽しむ声優陣の「プロ意識の高さ」

前項で声優について少し触れたので、本項でしっかりと触れておきたい。
ヒプマイに何より欠かせないのが出演の声優陣だ。

ライブやヒプ生、インタビューの類などを通して感じたのが「メリハリ」である。
キャラクターとして舞台上にいるのか、声優本人として話しているのか、前者であればキャラクターとして立ち、喋る。キャラクターのイメージが壊れるような言動はしない。そのために、必要であれば他のメディアミックスも研究している声優も多いようだ。その全てを踏まえ、大元のキャラを演じる者としてどんなファンサービスがファンに喜ばれるかもしっかりと理解しているように思われる
例えば10thライブにおいて、左馬刻役の浅沼氏はステージ上では常に左馬刻を演じ、貫き通していた一方で、新譜発売時のヒプ生では浅沼氏自身として登場されているのが印象的だった。
また、二郎役の石谷氏は舞台版であるヒプステの二郎の動きを研究し、楽曲「Get busy」の歌唱に臨んだと自身のYouTubeの生配信で述べていた。
他にも、簓役の岩崎氏(個人的にはヒプマイにおいてはキャラクターと声優自身がそもそもそっくりに感じられるタイプだと思っている)と盧笙役の河西氏は、歌詞の中の「通天閣」というワードに合わせて通天閣を模したポーズを披露していた。この通天閣を模したポーズは、コミカライズ版で簓が披露したものを彷彿とさせるもので、コミカライズ版を読んでいるファンなら更に嬉しくなるファンサービスだったように感じた。(少なくとも私は「あれでは!?」と嬉しくなった。)

そもそも、「キャラクターの声を保ちつつ歌う」というのはかなり高度な技術。その技術を披露しながらファンサービスまでこなしているのがヒプマイ声優だ。
そして、この芸当が当然のヒプマイというコンテンツの仕事に対して、出演声優全員が真摯に向き合い、そして楽しんでいることが画面越しであってもはっきりと分かる。それが伝わる熱量で我々ファンに見せてくれるというのはまさにプロの仕事

全ての声優がやるべき、という話では当然無い。変なファンサービスをせずに真面目一本なところが魅力的な声優も居るし、作品の雰囲気などにも依るだろう。
ヒプマイの場合は、声優アーティストプロジェクトというコンテンツならではの空気感を作り出し、それに合わせたクオリティの高い仕事をしているからこそ、視聴者の私たちを魅了してくるのだろう。

・女オタクのファン心理をしっかり理解している

時折、「オタクならこうしておけば喜ぶだろw」という適当な商売をする会社があるが、そういう会社に限って、痒いところに手が届いていなかったりする。
しかし、その「痒いところにも手が届いている」のがヒプマイで、その例としてARB(Alternative Rap Battle)を挙げたい。

ARBはいわゆる音ゲーのソシャゲ。同じタイプのソシャゲ同様にストーリーもある訳だが、プレイヤーが物語に登場する場合、登録したプレイヤー名が物語でも使用されるパターンが多い。
しかし、ARBの場合はプレイヤー名の他に、物語上のプレイヤーの名前を「主人公名」として登録可能で、しかも変更に制限は無い。
このタイプは私のように名前変換機能を用いた夢小説を愛好する者、特に登場キャラクターによって名前を使い分ける「固定夢主派」の夢愛好家としては、物語に合わせて変えられるのは非常に有り難い機能。
ARBを始めて最初に思った感想が「夢女に優しいな!?」だったくらいだ。

これを採用したあたり、公式側が女性オタクの心理を深く研究・リサーチし、理解していることが垣間見える。女性向けコンテンツ市場拡大のキッカケである『刀剣乱舞』における『女審神者』の概念の誕生も大きいかもしれない。
また運営会社にオトメイト等の女性向けコンテンツを熟知した会社がいることも大きいのだろうが、版権元がOKが無ければ実装出来ないはず。だからといって、コンテンツ自体を夢女に媚びすぎるようなことはしないし、他においても然りだ。
今でこそ認識されるようになったが、BLが苦手という女性オタクも一定数存在しており、これを公式側が把握してるからこそ「BL好きに媚びている」と感じさせるような内容は極力出してはこない。もしかすると、女性人気が出たことでBLを彷彿とさせるような描写を増やしたコンテンツが顰蹙を買ったような先人の例を教訓にしているのかもしれない。
顧客の喜ぶことを理解し提供しつつも毅然としたその方針は、安心感と居心地の良さを生み出しているように思える。

そして、ソシャゲと言えば「ガチャ」である。
確かに、天井までの価格は75000円とソシャゲの中でも高い部類に入る(参考:スクフェス2:75000円、マギレコ:37500円、FGO:54420円)が、
ジェムの配布量は勿論、チケットの配布も他に比べて比較的多く、割と回しやすい印象がある。
加えて、1枚入手出来れば進化で新しい絵柄も見られるし、2枚以上入手した場合はスキルのレベルが上げられるだけでなく、その場合のみ閲覧できるカードのセリフ(これはディメリットにもなるが)や専用の称号が得られるなどのメリットがある。
どのソシャゲ運営も厳しい時代の中で、重度の課金が可能な人はしたくなるようなシステムを採用しており、一方で学生など様々な理由で高額な課金が出来ないプレイヤーの視点も忘れていないと感じられる。

余談になるが、不具合で問い合わせた際の問い合わせ窓口の返答が大変親切であったこともここに記しておきたい。

なお、もちろん女性オタクの心理をしっかりと把握しているのはARB以外のヒプマイコンテンツも同様であるし、ARBに対して不満のあるユーザーがいることも承知しているので全て同意されるとは思っていない。
だが、「こうすればオタクは喜ぶだろう・売れるだろう」という雑な商売をするソシャゲが多い(多かった)中、ARBは考えられて作られているように感じたため、本項で取り扱ったことを注釈しておく。

・的確なメディアミックスで新規ファンを獲得しつつも、既存のファンも楽しませる

コンテンツ産業においてメディアミックスは欠かすことが出来ない。今ではメディアミックスの代表格でもあるソシャゲ、ヒプマイの場合は先述のARB(今後はラップRPGなる『ヒプドリ』も加わるが)であるが、楽曲を聞く入口になっている。例えば私の場合、アニメから原作へ入るにあたり、楽曲の多さはやはり手が伸びにくい原因になっていた。しかし、以前に別のコンテンツで音ゲーから楽曲を聴くようになったものがあるため、今回も同様に音ゲーから入ることにした。
また、ARBではシリアスなオリジナルのメインストーリーを組み込む一方で、イベストではトンチキな話や立ち絵を使った演出(通称立ち絵芸)を組み込み、既存のファンでも楽しめる工夫がなされている。

コミカライズ版は原作のドラマパートとその補足は勿論であるが、更にキャラクターや作品理解に繋がる新規シナリオを組み込んでいる。メディアミックスの漫画としての醍醐味を完璧に活かしている
(当然のことであるが、コミカライズ版を読まないと原作が分からないという仕様でないという最低条件もクリアしている。)
新規シナリオはファンであればあるほど読みたくなるものであり、こちらでもがっちりとファンを捕まえて離さない。

そしてヒプマイのメディアミックスとして忘れてはならないのがアニメである。何より、私がヒプマイにハマった最大のキッカケが、昨年2023年秋のヒプアニ2期だ。
1期ではオリジナルストーリーと原作部分をアニメ化、2期は完全オリジナルストーリーで展開された。しかもどちらも原作をより深く楽しめる内容になっている。
しかし、私の場合は(1期放送当時、リアルでの出来事が原因で心身共にアニメを夢中で見るほどの元気が無かったという部分もあるが)、途中まで見ていたのに、これほどハマることはなかった。
何が違うのか、恐らくは主にストーリーの構成にあると思われる。
1期はディビジョン・ラップバトルに向けての日々やバトル終了までのストーリー。キャラ紹介も兼ねていることもあって、「部活もの」「日常系」作品に近い。
一方で2期はある事件を主軸にストーリーが展開していくパターン。
私は大会に向けて頑張るような「部活もの」や日々の様子を描いた「日常系」作品はあまり好まない傾向があり、1年スパンで放送するタイプのアニメの所謂「日常回」も、特別な理由が無い限りあまり積極的に見られないタイプ。
この「部活もの」「日常系」の要素を持つ1期は私のようなタイプと相性が悪かったのだろう。
逆説的に言えば、もし仮に2期も同様の構成であれば、新規ファンになることはなかったかもしれない。
アニメの構成や演出については、監督をはじめとした制作スタッフ陣の賜物だろう。
2期はあえてオリジナルストーリーを展開し、初見の視聴者が入りやすいよう工夫したという監督のインタビューもあることからも、新規ファンの獲得を意識した構成であったことは間違いないと思われる。

既に開始から5年以上経過している人気コンテンツに、途中から入ろうとするのはなかなか勇気が要る。ヒプアニはその敷居を低くして新しいファンの獲得に繋げていると言える。
かと言って、既存のファンを蔑ろにすることはなく、原作を大切にしていることも窺え、これまでのファンが視聴しても楽しいと思える要素も取り入れている。従来のファンが離れてしまう・見ないようなアニメはメディアミックス作品としては致命的だ。(私もかつて好きな乙女ゲーム作品がアニメ化されたが、新規ファンの獲得どころか既存ファンをがっかりさせる出来になってしまった経験がある。)
ヒプアニの場合、1期では原作ドラマパートの映像化、2期の場合は一部ではあるが原作ドラマパートのアニメ化と、かつて仲間だった一郎と空却、左馬刻と簓、寂雷と乱数のそれぞれの現在の仲間と共闘するという展開が盛り込まれた。原作でも実現していない組み合わせでの共闘は、従来のファンにとって「エモい」ことは新参の私でも分かるものだ。
しかし、既存のファンにしか分からない『内輪ネタ』に終始してしまえば、新規ファンの獲得にはならない。「原作を全て知らないと面白くない」、「アニメを全て見ていないと面白くない」ような演出を行っておらず、興味を持っていれば「どこから切り取っても面白い演出」を行っていると言えるのではないだろうか。

こういった構成や演出が出来るのは、監督以下制作陣の経験に依るものだろう。
監督のインタビュー(https://natalie.mu/comic/pp/hypnosismic03)によれば、ラップバトルのアニメ化はホビーアニメと似たところがあるらしい。
遊戯王というホビーアニメの制作経験がある小野監督とスタッフ陣が選ばれたのは最適な人選だったのではないだろうか。
(ちなみに、私がヒプマイに興味を持ったのは『ヒプアニ』の監督と脚本家が、『遊戯王5D's』の監督・脚本家であったことにある。)

そして制作陣がネット上のファンの反応を意識していることも大きい。
声優は勿論のこと、アニメーターなど公式側の人々がTwitter(旧SNS)などで情報発信するようになって久しいが、小野監督もその一人である。
『遊戯王5D's』では反応の良かったキャラクターが予定外に登場させることで更に人気を博したという界隈では有名な話がある。当時はまだSNSは主流ではなく掲示板やブログ、個人サイトの時代であったが、制作陣がファンの反応を見るのは昔からあったことなのだろう。
ヒプアニも漏れなく例外では無いのは容易に想像出来る。「どうすれば面白いと感じてもらえるか」、1期での反応は2期に活かされたはずだ。

ではどのあたりの反応が収集されるのか、余談の範囲で考えてみたい。
Twitterは勿論であるが、ニコニコ動画・生放送などネットでの配信に書き込まれるコメントも直接的・間接的に収集されているのではないだろうか。
いわゆる「まとめ」というものを見ると、Twitterの投稿だけでなくニコニコに寄せられたコメントが引用されていることも多い。
1期から「ヒプアニは(ニコニコの)コメント有りで見たい」というニコニコのコメントが散見されるあたり、ニコニコやニコニコ利用者層とヒプアニの相性は大変良いことがわかる。また、新規ファンの疑問に対して、原作ファンがコメントで答えるのもニコニコ配信などコメント有りの配信で見られる光景だ。従来のファンの反応だけでなく、新規の視聴者の反応が知りたいのであればここから収集しない手はない。

原作ファンを飽きさせることなく更に作品を楽しめるよう作られている一方、新規ファンの開拓の媒体としても非常によく出来ているように思われるのがヒプアニである。ここで興味を持てば、原作CDやコミカライズへと繋がり、その質の高さで気付くと沼にいるのがヒプマイである。

・メディアミックスでも楽曲の手は抜かない

ヒプマイと限らず、メディアミックス、特にアニメは新規ファンの獲得の最大のチャンス。
再びヒプアニの話になるが、ヒプアニは要所でも絶対に手を抜いていない。その要所とは楽曲だ。

既存楽曲を使用することで生まれるメリットは従来のファンが喜ぶだけでなく、新規ファンが楽曲を知るキッカケになる。
しかしOPやEDをはじめ、メインのラップシーンの楽曲に新曲を使用するのは従来のファンも新鮮な気持ちで視聴出来るという強みを持つ。ましてや、ラップバトルがメインの展開になる以上、内容に即した楽曲である必要もあり、新曲であることは欠かせない。

そしてその新曲も、原作同様にHIPHOP界隈では有名な人物を作詞や作曲、編曲に起用することで原作に劣らないクオリティのものを聴かせてくれる。「ヒプマイのラップはこれだ!」とアニメで堂々と見せることで原作との落差を感じさせないのも特徴だろう。

・HIPHOP文化を尊重した舞台設定

まず、舞台設定に着目したい。
物語の設定を考えるにあたっては、「いつ、どこで、だれが、何を、どうした」を考えることになるが、「"HIPHOP・ラップ"に親しみを持ってもらう」という目的がある以上は聞く側にとって身近に感じてもらう必要がある。とするならば、実在する場所である必要がある。聞く側のメインの層は日本人であるし、日本で人口が集中しているのは東京。そしてメインターゲットは二次元コンテンツに親しみのある女性(=オタクの女性)となると「池袋」が選ばれるのは想像に難くない。
だが、2010年代のオタクの女性にとって親しみのある場所は「池袋」でも、乙女ロードのある東口の「東池袋」。一方でイケブクロ・ディビジョンのBuster Bros!!!の楽曲には「WEST」、即ち「西池袋」がよく使われている。また、「池袋ウエストゲートパーク」という小説作品がある。あらすじや登場人物設定を見るだけでもヒプマイを連想させるワードがいくつも存在するあたり、おそらく参考にしたであろうことが窺えるのだが、そもそも『なぜ、西池袋なのか』

ここが非常に作り込まれていると思う部分である。
西池袋は古くから某有名大学がある地域で今でこそ再開発が進んだが、戦後は闇市が長く残ったことなどから再開発が東池袋に比べて遅れた地域。当時は治安があまり良くなかったと推察される。(実際、私が池袋へ行く話になると母に「西口は治安が…」と未だに言われる。)
そしてHIPHOP文化が生まれたのも、当時治安が良くなかったブロンクスというニューヨークにある都市である。
つまり、HIPHOP文化を尊重したコンテンツの舞台として西池袋は丁度良い街だと企画側は考えたのではないだろうか。

そして更にディビジョンとなる場所を企画側は選定していったのではないだろうか。
ここからは私の想像になる。
「渋谷」は初期案からありそうである。キャラクター設定なども加味されたのかもしれない「新宿」。
そして何故か飛んで「横浜」。こちらもやはり想像でしかないが、東京だけに限ってしまうと逆に親しみやすさが無くなってしまうと考えたのではないだろうか。東京の地域だけとなると、東京の中で争っているだけで面白みが減るように思われる。
では、なぜ「大阪」や「名古屋」では無いのか。
「大阪」を選んだとすると、「東と西の東西対決」というよくある設定の構図になってしまうし、それはコンテンツの目的からは外れてしまう。
また「名古屋」だとすると、おそらく多くの日本人が「なんで大阪じゃなくて名古屋?」と感じるのは言うまでもないだろう。
そもそも、なぜ名古屋なのか。これはWikipediaの『HOME MADE家族』の項目によると「愛知県出身のラッパーは、他県に比べ比較的多いといわれる」という記載がある。即ち、日本のラッパーにとって愛知県は縁のある土地であるため、その政令指定都市である名古屋はこのコンテンツにおいても”外せない地域”といえるだろう。
これらのことを考えると、「大阪」と「名古屋」は作品全体への影響や聞く側の受け止め方などを加味して一緒に出したほうが良いと企画側も思ったのではないか。
また、同時に考える必要があることに、グループ数とキャラクターの人数がある。そして長期的なコンテンツとなった場合の「テコ入れ」は必ず必要であり、その方法としてよくあるのが新キャラの追加だ。とはいえ、コンテンツが確実に”当たる”とは限らない。
そう考えていくと「最初は地域を首都圏に限定した4チーム(ディビジョン)でスタートし、様子を見て大阪と名古屋のチームを追加する」という決定がなされたのではないか、というのが私の推論である。

さて、これほどにHIPHOP文化を尊重しているヒプマイであるが、先人のHIPHOPアーティストたちは社会への不満を歌詞に乗せてきたという歴史がある。HIPHOP文化・ラップを扱う以上、「社会に不満のある世界」という設定は欠かせない。
しかし、実際の日本社会への不満を歌うコンテンツにしてしまうと、一部の人にしか受け入れられないものになってしまう。
そこで作られたのが「H歴となった架空の日本」であろう。またフィクションであることの強調として地名をカタカナ表記にする、という現在の設定が登場したのではと私は考えている。

少し脱線するが、当時の女性向けコンテンツの傾向からして、アイドル設定で展開することも案にはあったのではないかと邪推してみる。
長期的な継続を考えれば、テコ入れとしてキャラクターの追加などが必要になることは先述の通り必須で、卒業やメンバー交代の概念があるアイドル設定はコンテンツビジネスとして使いやすい面があるだろう。
確かに実在するアイドルグループでラップ楽興を歌うことも増えてきているが、やはりメインはラップではないし、HIPHOP文化やラップの歴史を考えればアイドルとの相性は悪い。
加えて、アイドル設定における卒業やメンバー交代は、現実においても2次元キャラクターコンテンツでも、しょっちゅう炎上の火種となってきた。
これらのことからも、速攻でアイドル案は(挙がっていたとしても)却下されたように思う。

いずれにせよ、HIPHOPの文化や歴史を尊重し、日本で親しみを持ってもらおうと本気で考えたからこそ、ヒプマイは今の形になっており、その形で私たちを魅了していると思われる。HIPHOPに関わるアーティストの反応や海外のファンを獲得出来ていることから見ても、その真剣さがコンテンツの魅力になっていることは明らかだろう。

・その実、王道少年漫画ストーリー

どのキャラクター、特に各ディビジョンのリーダーにおけるキャラクターを主人公としても楽しめるのがヒプマイの特徴であるが、一応作品全体のストーリーとしては『Buster Bros!!!』のリーダーの山田一郎が主人公である。
彼が理不尽な社会に「ラップで世の中を変えられる」と信じて弟たちと共に成長していく…という物語は、まさに少年漫画のストーリーに通じるものがある。その過程でライバルたちと闘う展開も、少年漫画のそれである。

またそのライバルチームの1つ、『Fling Posse』のリーダー飴村乱数が裏の主人公とも受け取れる。複雑な背景を抱えながらも、仲間の幻太郎や帝統に支えられて成長していく様子、また絆を紡いでいく過程も少年漫画のような展開だ。
『MAD TRIGGER CREW』の3人、また『麻天狼』の3人のそれぞれの関係性からは少年漫画というより少し上の、大人っぽい、青年期の人間関係が描かれているようにも感じられる。

そして、本編でシリアスなストーリーを展開しつつも、メディアミックス、主にARBのイベントストーリーではトンチキな展開、またコミカライズ版の原作の部分を補足・追加するストーリーでキャラクターの理解をより深められるようにしているのはやはり高く評価すべき点であろう。

ただ、「女性コンテンツとして知られていること」で、「少年漫画のようなストーリー」であることはあまり知られていないのが残念である。
ヒプマイ自体がおそらく、女性をメインターゲットとしているため間違いではないのだが、一定の年齢層や馴染みの無い人からすると「女性コンテンツ=乙女ゲーム」という認識が未だにあり、ヒロイン(あるいはプレイヤー)とキャラクターたちの交流がメインだと誤解されていることが稀にある。
そしてそのタイプの作品が苦手な人からは「好きなタイプではないコンテンツ」として誤解され、触れることなく遠ざけられてしまっていると思われる。
少年漫画としても通りそうな内容であり、乙女ゲームのようなコンテンツが苦手な人こそ触れて欲しいコンテンツであるだけに、残念でならない。

ただ、人が増えれば増えるほど、ファン同士の対立や争いは増えるし、男性も受け入れられるコンテンツとして認識されることで男性が流入し逆に女性ファンが遠ざかってしまっては本末転倒である。
現状比較的均衡が保てていることを思うと現状のままでいいのかもしれない…、とさじ加減の難しさを感じる。

・被らないキャラクターたち

ヒプマイのキャラクターの特徴として真っ先に浮かぶのが「設定・デザイン共にキャラ被りが起きていない」ことである。

各キャラクターの職業・肩書が被っていないことは勿論だが、例えば同じ「兄」という設定があっても、『Buster Bros!!!』の一郎の場合は兄弟でチームを組んでいて進行形で仲が良いが、『MAD TRIGGER CREW』の左馬刻は(事情があるとはいえ)決別状態である。
デザインに関しては、特に『麻天狼』の3人に注目すると分かりやすい。髪のメイン(表面)の色に対して影になる部分(裏側)は同系色ではないものがあえて使われている。この配色の仕方をしているキャラクターは『麻天狼』のメンバーのみ。このように各チームごとのデザインを見てみるとチームごとに特徴があり、デザインでもキャラクターの差別化を図っていることがわかる。

そして何よりも、チームの3人の関係性でも差別化を図っているのがヒプマイの特徴だろう。
例えば『Buster Bros!!!』は兄弟のチームであるが他に同様のチームは無い。『MAD TRIGGER CREW』は銃を扱う職業という共通点を持たせているが、『Fling Posse』の場合は共通点が無い(あえていえば訳ありといったところか)。この共通点が無いという特徴はある意味第二の主人公であろう乱数にフォーカスを当てたときに「バラバラだった3人が絆で繋がるまで」の物語を生み出しやすいという面もある。
また、『麻天狼』と『Bad Ass Temple』はそれぞれ35歳のメンバーがいるという共通点があるが、『麻天狼』の場合はそのメンバーをリーダーとして筆頭に他2人と支え合う関係性、『Bad Ass Temple』の場合はリーダーではなく後方で10代の残り2人のメンバーを見守るような立ち位置である。
『どついたれ本舗』は更に特徴的で、元々漫才コンビだった2人に、物語のキーパーソンが入ることで他のチームとは違う存在感を放っている。

女性キャラクターにも触れておきたい。
設定上、メインの女性キャラクターたちは『中王区』として男性キャラクターたちと対立関係にあるが、決して悪役だけにとどまらず、各々の抱える過去によって「その役割を負っている」側面がある。
キャラクター同士を対立させることは簡単だ。だが、メインのキャラクターたちとの因縁や彼女たちの役割を思うと、決して憎むことは出来ない。むしろ愛着すら湧くように設定されており、またその感情や思いをラップに乗せることで「女性もラップを歌って良い」というメッセージを聞く側に送ることに成功している。

しかし、そこで終始しないのがまたヒプマイである。
おそらくキャスティングの段階で既に、各チームそれぞれに(男性キャラの場合、バス・バリトン・テノールほど厳密に分けられているかは不明だが)声が低い・中間くらい・高い人物を起用していると思われる。そのため、ハーモニーとなった時に声質がチームで被らないように考えられているところがまた味わい深さを生み出している
(そしておそらく初期4ディビのリーダーズ、すなわちかつてのチームである『The Dirty Dawg』内でも被らないように考えられているのではないか。)

また、ラップのスタイルや曲調でもディビジョンやキャラクターで区別をつけているように思われる。
例えば、『Buster Bros!!!』の場合、一郎は王道なラップ、二郎は一郎に近いが少し路線をずらしてあるラップ、三郎は一郎と二郎とも違うラップであるもののラップでよく聞くようなスタイルのものを採用しており、ソロ楽曲ではクラシックのリミックスを使用することで「神童」と呼ばれるような賢さを表現している。
またヒプマイの中で特に特徴的なスタイルの歌い方をするのが『麻天狼』の寂雷で、おそらく『ポエトリーラップ』と呼ばれるものに分類されると思われる。

視覚や聴覚、記載される設定ですぐに判断出来る面は勿論、HIPHOP・ラップをメインにした音楽プロジェクトであるからこその設定をも活かしてキャラクターの”姿”を深く練っているのはヒプマイキャラの特徴といえるだろう。

・絶対的NGをキャラクターで表現

絶対に触れておきたいことがある。社会への不満を歌ってきたHIPHOP文化と密接なものがドラッグの問題である。
当然、日本ではドラッグは禁止であるし、ヒプマイがドラッグに興味を持つきっかけになってしまっては公式側の本意ではないはずだ。その意思表示が作品として必要になる訳だが、物語に組み込む際にそちらがメインテーマになっては企画の目的や主旨とはズレてしまうし、組み込み方によっては説教臭い物語となり面白く無くなってしまう可能性もある。

そこで置かれたのが『MAD TRIGGER CREW』の設定なのではないだろうか。
キャラクターにドラッグに纏わる悲しい過去や憎しみの感情を持たせることでファンへのメッセージや、ドラッグに対するマイナスイメージの定着へ繋げることが出来ている。
そもそも、『MAD TRIGGER CREW』の読み自体が「まとりがくる」=麻取が来る、と掛けているのではないだろうか。
(ただし、麻取、即ち麻薬取締官は厚生労働省の職員である。)

扱うもののネガティブな問題についてもしっかりと触れ、それに対するスタンスをキャラクターとそのストーリーで表明する。そしてこれを作品自体にも活かしてしまう緻密さは、いかに企画側が綿密に、真摯に、この作品と向き合って作り始めたかの証明であろう。

・そして、全てに本気

この項目は、上記までの項目の推敲後に追加している。というのも、文章の構成上入れるのが難しいと考えていたからである。
ここまでに触れていなかったもの、それは『ヒプ米プロジェクト』である。

考えてみて欲しい、農業を取り扱うジャンルならまだしも、ヒプマイは音楽プロジェクトだ。農家出身というキャラも現状いない。「マイ」と「米(まい)」をひっかけているだけである。そしておそらく、キャラクターを袋に書いて販売するだけでキャラクター使用料としての収入が得られるはずである。
しかし、『ヒプ米』は違う。ほぼほぼ管理は契約農家に任せているとしても、何かしらの形で出演声優やDJたちが関わることで「俺たちのラップを聞いて育った」という付加価値を付けている。そして毎年やるようになった辺り、売れているのだろう。すなわち成功である。
しかも、今年からは稲刈りにファンが参加出来るイベントまで開催されることとなった。ライブやヒプ生など、ファン参加型のイベントはこれまでもあったが、ファン参加型稲刈りイベントをするキャラクターコンテンツなど(良い意味で)前代未聞である。

普通に考えれば、袋にキャラクターを書くだけで収益が入るのだからそれ以上のコストをかけるのはむしろリスクになる可能性もあるだろう。
しかし、ヒプマイの公式は違う。メインである楽曲やストーリーだけでなく、キャラクタービジネスの展開として一見ふざけて見えるような企画にさえも本気のものをファンに提供してくるコンテンツなのである。

●まとめ

長々と語ってきたが、ハマって1年足らずの新参にこれだけのことを考えさせた・引き出させた公式や先輩ファンの方々にはただただ驚かされる他ない。
考えれば考えるほど、作品への姿勢やHIPHOPやラップへの思いなど様々な要素があちこちに組み込まれていて枚挙にいとまがない。
いかに7年もの間、『ヒプノシスマイク』というコンテンツを公式やファンが大事に育ててきたかを感じさせられる1年弱だった。

私は一度ハマってしまうと、(よっぽどのことが無い限り)最終回まで見届けることをモットーにしている。このコンテンツにハマった以上、今後の展開に期待と不安であわあわしながら、私に出来る形で最後まで応援していきたいと思っている。

●おまけ:作品・楽曲の感想や印象などの雑記

記事本編に組み込めなかったものや、各ディビジョンやキャラ、楽曲などで、個人的に特に書いておきたいことを記しておきたい。
これまでの文章よりは多少砕けた表現で書いていこうと思うので、肩の力を抜いて閲覧いただければと思う。
また、推しに偏りがち・自分語りっぽいものも混在するのでご容赦いただきたい。
なお、ここまでで大分力尽きているので、語彙力はだいぶ無くなっている。

・オールディビ・ディビ越え楽曲

とあるキッカケから、声優さんの顔出しが苦手になっていたためになかなか視聴が出来なかった。視聴後は「耳が満足」してた。完全に沼った。
PVの声優さんたちがすごく楽しそう。
高音~低音までの18もの男声のバランスが良くてハーモニーを聞いててとにかく心地が良い。

◯Hoodstar、Hoodstar+
ディビジョンごとにアレンジが加えられていて、そのアレンジもディビごとの印象に合っているのも好き。
歌詞もそれぞれのキャラクターを表すものになっているのも印象的。
ヒプアニ2期の最後の最後で使われたのは、2ndバトル後=リーダーズ6人の和解後という設定だけあって感動的。
私の歩くテンポだいたいと同じなので、テンション上がらない時に聞いて出掛けたりする。
ようつべで「日焼け止めみたいに++とかになったりする?」みたいなコメントあるのは笑った。

◯CROSS A LINE
オールディビ曲の中でフッスタと1,2を争うくらい好きな楽曲。
元々、フライトとかエアポート感出てる曲に弱いのもある。(ボカロのトリコロール・エア・ラインみたいな)
加えて、基本的にバトっててバチバチな関係性な面々が平和的に歌ってるのがエモい。

◯SHOW DOWN
このタイプの曲調に弱いので、イントロ聞いただけで良い意味で鳥肌立つ。
『露払いは~』と独歩が歌い始めるところに成長を感じる。
サビの『表現していく存在を』がめちゃくちゃ好き。
1番、2番、3番、と決勝戦の3ディビが2ディビずつバトルするように歌っていくのも面白い。

◯Hypnotic Summer
ヒプアニリアタイ中に毎回CMで聞いてて好きになった。
『俄然やる気サバイバー』で検索→え、CD無いの!?→ファンブック2を知り購入、までがセット。(エラーCDの交換が2023年末までだったのはちょっとアレだが。)
『星空に大輪の花を計画通り咲かせてやるぜ』は(星というワードに弱いので)私が好きなフレーズに即決定されたが、10thライブ以降は神尾さんの例のツイを思い出してしまうのは私だけではないはず。
今お気に入りなのは『略してた日々が今 馬鹿みたいに愛おしくなるって』。

・Buster Bros!!!

池袋の乙女ロードのファミマあたりで、山田兄弟のポスター見て、「また女性向けコンテンツか…」とか思っちゃってごめんなさい。それ以上のコンテンツでした。
『.Buster Bros!!!』のドラパを聞いて、三兄弟の関係が良い意味で変わっていくのが尊いなあと改めて云々。

◯昴さん
同年代ということもあり、ドラえもんの声優交代の際に選ばれた(当時)中学生の印象が強かったりする。要は「すごい」。今やおはスタの司会まで務めておられるのだから「すごい」どころじゃない。
ヒプマイに関しては、何より楽しそうに出演されているのが印象的。このニキにならついていくぜ!って気分にさせてくれる。最高。
余談:個人的には仮面ライダーのバイス(の演技)も好き。

◯おはようイケブクロ
初めて聞いた時に衝撃を受けた。ラジオ放送を歌にしてしまえるのすごすぎる。萬屋ヤマダのCMソングあるのびっくりした。
おそらく、オールスター曲以外も好きになりたくて始めたARBで最初に聞いた気がする。これがキッカケで推しディビ以外の他の曲も色々聞いてみようと思えた。
こんなラジオ聴きながら出勤するの理想的。周波数をFM29.6に合わせたら聞けたりしない?
初っ端から、恋愛ネタぶち込むの強火で好き。一兄が言わなそうなセリフコーナーもっと聞きたい。
マカロンは弟分のコンテンツ『カリスマ』にも繋がってそうな気がしてならない。

◯二郎の「兄貴」呼び
ヒプアニ2期の途中で「兄貴」呼びに変わったことには唐突すぎて笑った。
おそらくあの時点で2ndバトル頃のドラパが公開されたためにズレが生じてしまったのだろうな…
なのに、その後の話っぽい円盤特典のミニドラマアニメでは「兄ちゃん」に戻っており、統一していないのが明確になってしまっている…。
そのあたりは公式側で詰めていて欲しかったところで、ヒプアニ2期で少々残念に思っている点だったりする。
ARBのほうも変えて欲しいところだが、それが良いという人もいるので難しい…。

◯IKEBUKURO WEST BLOCK PARTY
10thライブがこの楽曲で始まったので、いつ聞いてもあの高揚感が込み上げてくるので気に入っている。
DJ U-ICHIさんをしっかりと認識したのもこの10thライブの時で、盛り上げ方がとても良く…!
ヒプマイに欠かせないDJさんと言われているのも納得。ヒプ生・バースデーテープ、エトセトラ…。
でも、「かわいい」ところありますよね、U-ICHIさん。

・MAD TRIGGER CREW

私自身がハマっ子(ただし海側ではない)なのでやはり親しみを感じる。なので、真っ先にハマるのはヨコハマだと思っていた。まあ最終的に推しディビの1つにはなっているので当然の帰結ではある。
楽曲で馴染みのある数字である045が使われていたり、そういうところがヒップホップの良さなのだなと思ったり。聖地巡礼したい。
オオサカと韻踏めるの気付いたファンのネキすごいと今も思っている。
横浜市歌が歌えるかとか崎◯軒のシウマイとコラボとか無いですかね。

◯浅沼さん
個人的には遊戯王5D'sのクロウ・ホーガン役でお馴染みな方だっただけに、左馬刻とのギャップにびっくり。声優さんのすごい。最初の頃はまだクロウの音域に近い高い声のことが多かったのが年々低くなっていく左馬刻の声に左馬刻の成長みを感じられるのがまた良い。
そして10thライブの左馬刻を演じている様子にやられた。加えて、素でのチャーミングさとのギャップにさらにやられた。
他のMTCメンバーの声優さん、駒田さん、神尾さんとの仲の良さも好き。聞こえてくるエピソードが楽しすぎる。

◯Nausa de Zuiqu
ロイツマなんて聞いてないぞ!!!???
ニコ厨である私は当然のように昔ロイツマMADにハマった過去がある。それがラップになっているとは思いもしなかった。やっぱりヒプマイはニコニコと相性いいのでは?(初期のヒプ生?もニコ生だったらしいですな?)
視聴者の多くが通ってきた道であることを知っているかのように選曲している気がしてならない。
そして、サウナについての知識がヒプマイファンの間で植え付けられていくのは面白い。これで、ロイツマがフィンランドの楽曲でサウナもフィンランド発祥なのも覚えた。
そういえば今話題のアザラシ幼稚園もフィンランドだっけ。

◯理鶯
『.MAD TRIGGER CREW』のドラパで気になっているのが理鶯。これまではチームにも軍にも居場所があってそれぞれに役割を持っていた一方で、この時のドラパで軍のほうとは一定の距離が生まれた印象がある。もう元の関係には戻れないような。左馬刻と銃兎という仲間がいるので心配は無いのだろうけれど、ある種アイデンティティにもなっていた居場所を無くす辛さを考えると……。

・Fling Posse

記事内では「共通点がない」「訳ありが共通点」といった表現をしたが、『.Fling Posse』のドラパを聞いた後だと「オリジナル」という共通点があるように思う。乱数も幻太郎も帝統も、3人の間でも我々の中でもあの「乱数」「幻太郎」「帝統」が「オリジナル」なんだなと。
このドラパで更にポッセの好感度は上がった気がする。3人の関係性が本当に尊い。
そして『.Fling Posse』のドラパで2ndバトル頃から始まったFPの物語は一先ず落ち着くのかな?というのが私の印象。尤も、まだ残っている謎もあるけれど…。

◯Stella
星とか宇宙系のワードに弱い私、速攻タイトルで沼る。宇宙を表現しているような、広大な空間を感じさせる曲調にも弱いので更に沼る。
未来に希望が持てるようなバースにも引き込まれるし、ポッセの面々のキャラ設定を知っていれば更に胸が締め付けられるようなエモさがある。
キャラクターたちのことを直接的に歌うヒプマイ楽曲が多い中で、劇中劇的に物語でキャラクターを表すこの楽曲は珍しいかもしれない。ヒプマイ初心者やオタクではない人にも勧めたい楽曲。
「.Fling Posse」のドラパ内の「COLORS」で本曲が使われていた時は感激。人気曲のようなので納得の選曲。歌詞もリスペクトされたもので最高of最高すぎた。

◯斉藤壮馬さん
お名前や歌手活動をしていることは存じ上げていたものの、特に縁もなかったのでヒプマイで初めてしっかりお声を聞いたと思う。
演技を始め、歌声でも裏声や比較的高い声から低い声までマルチに、かつキャラクターの声として歌えるのは本当にすごいと思っている。そして艶のある声色すごく好き。
常に安定している野津山さんの声、基本は乱数の高い声で演じつつ稀に低い声になる白井さんの声の間で、斉藤さんが高音から低音を操ることで絶妙なバランス感やハーモニーを感じられるのがポッセらしくてとても好き。

・麻天狼

アニメ2期の楽曲である『Dive in』を聞いた時、ハーモニーの美しさに感動してしまった。
どのディビジョンもそれぞれのハーモニーの良さがあって好きだが、その中でも『麻天狼』の高音域・中音域・低音域のバランスの良さは聞いていて本当に心地が良くて好き。寂雷役のレジェンド声優、速水さんの低音ボイスは特に好き。
落ち着いたような麻天狼らしい楽曲との相性も良いように思える。

◯シャンパンゴールド・パーティを止めないで
前者は作詞者、後者は作詞作曲者に驚いた。
というのも、2005年前後頃のお笑いブームでドップリお笑いにハマってたので、「シャンパンゴールド」の藤森慎吾さんの作詞には懐かしさが。
「パーティを止めないで」も、「女々しくて」でお馴染みのゴールデンボンバーの鬼龍院翔さんの作詞作曲。ニコニコで大ヒットしたのを目撃してきているのでやはり親しみを感じられる。
そしてどちらもきちんと一二三を表している楽曲や歌詞になっているのがまた素晴らしい。

◯3分バイブスクッキング
「おはようイケブクロ」と同じく、「料理番組を歌にしちゃうんだ!?」という驚きと感動がある楽曲。
そしてリズミカルでアップテンポ。元気を出したい時に割と聞いてしまう。
ちゃんとほぼ3分で終わるのもすごい。

・どついたれ本舗

共通点を持っているチームが多い中で、全員オオサカ人ですらないのはやはり異色。異色でありながら、零というキーパーソンを抱えることで必然的にこの作品の物語に巻き込まれていくギミックは流石。そして黒田さんのお声が渋くて好き。
簓・盧笙でしっかり大阪出身の声優さんを起用しているのが本当に好感度高い。やはり、ネイティブの関西弁で楽曲も聞きたいし、後から身につけた関西弁って気付きやすかったりする。10thライブで『PUMP IT UP』(楽曲としてもかなり好き。ヨコハマのクールさとオオサカの明るさがアップテンポで表現されてて。割とリピートしてる。)の時にヨコハマ勢から撃たれたお二人が揃ってリアクションしてしまったところは流石でしかない。好き。

◯簓
実は最初、簓は苦手なキャラだった。とにかくギャグにどう反応していいか分からなくて。
その苦手意識を克服出来た要因の1つがニコニコ動画のコメント。
投稿者や生放送主、アニメ作品のキャラクターの(寒い)言動に対して「は?」と返す文化があるのはニコニコではお馴染みで、ニコ厨の私はこれをキッカケに簓のギャグを楽しめるようになった。つくづく、ヒプアニはニコニコに向いてる作品だと思う。
以降、友人たちとの交流やファンアートなど色々な事柄を経て、今では最推しの1人になった。多分自分が1番びっくりしている。("最"推しとは)
「他人を楽しませたい」というところも好きで、私が共感出来るキャラクターの1人にもなっている。

◯Under Sail
もしかしたら私が1番親近感を持っているキャラは盧笙かもしれない。
挫折を味わった盧笙の『負けるわけにはいかん』『笑われるなら挑戦し笑われたいねん』には励まされるものがあって、聞いていると頑張ろうという気持ちになれるから好き。アップテンポだから尚更。ここぞという時の直前によく聞いてたりする。
コミカライズ版で計算したところ、私立教員1年目っぽい…?それでクラス担任やって生徒からの信頼も獲得してるって正直すごいと思う。

◯岩崎さん
ヒプ生での岩崎さんのお仕事ぶりも、キャラクターへの好感度を上げた1つの要因。
ヒプマイの声優さんは、「キャラクターを憑依させるタイプ」と「素でキャラに近いタイプ」に分かれると思っていて、岩崎さんは後者のタイプだと思っている。
簓と同じで「楽しませたい」と思ってるタイプな気がする。地声に近い声で演じられているというのもあるかもしれないが、だからこそ簓にピッタリだし、キャラに近いと感じるのかもしれない。
ちなみに岩崎さんが出演されている別の作品の演技も視聴したが、「こんなに声違うんだ!?」ってびっくりした。声優さんってやっぱりすごい。

・Bad Ass Temple

3人の共通するキーワードが「いじめ」。中高生の頃、「いじめ」という問題に関心を持っていた私がBAT推しになるのは必然だったのかもしれない。
「いじめ」もこの3人を通して絶対的NGを表現していると思うのだが、僧侶の言葉という精神的支えや法を味方に闘うこと、頼れる味方の存在など、人生の中でのあらゆる困難や苦しみにぶつかる我々視聴者の力になってくれる。
今のところ他のチームに比べて穏やかな流れの中にいる気がするので今後何かあるのではないかと思うと気が気じゃない。
TDD以前のチームの『NaughtyBusters』『MadComicDialogue』『空寂ポッセ』も好きなのでもっと見たいなと思っている。アニメ2期の展開は胸熱だった。

◯空却
アニメ2期で空却を最推しキャラとして好きになったからこそ、ヒプマイにこれほどまでハマったと言っても過言じゃない。
自分の中でもこのタイプの推しは今までにいなかった(と思う)し、自分でも何で!?と何度思ったか分からない。でも沼ると抜け出せないのが沼。
2期ED「Next Stage」の「ありがとう、なんていうかよバカヤロー」が、アニメ2期しか分からない私にさえ解釈一致すぎた。可愛い。
そのキッカケの後に来たのが例のホスト回で、ホストから皿洗いに降格したためにホスト姿を拝めなかった原作ネキや空却ファンの残念がる声がとても良くわかる。私もめちゃくちゃ見てみたかったなー…なー…なー…、と脳内やまびこしているうちに沼った。
浅沼さん同様、空却役の声優の葉山さんの、素と空却を演じている時のギャップに驚いた。ほんわかしている方が空却演じる途端にやんちゃ野郎になるのすごすぎる。
そして特筆しておきたいのは、空却を通して仏教の考え方を知るキッカケになったこと。
個人的に色々なことがあって苦しんでいた時期にヒプマイに出会っており、色々な媒体を巡ってヒプマイを履修する中で「執着こそが煩悩」という仏教の考えを知ることができた。その考え方は今日にも非常に助けられている。
割と真剣にちゃんと勉強したいと思う今日この頃。

◯BATのDRBの参戦と今後
初参戦の2ndDRBでは寂雷と獄の対決がBATの戦う理由の1つになっていたが、それで終始するとは思えない。
しかも、他のディビジョンは過去の因縁や中王区との因縁が、2ndDRBやThe Block Partyを経ても示唆されている一方で、BATには、特に空却と十四にはそういったものが現段階で提示されていない。(あえて言うなら、優勝と「強くなりたい」という願望か。)(どつ本の簓と盧笙にも言えることだが、「てっぺん取る」という昔からの目標が一応あるので…。)
とすると、今後の展開で何かしらの因縁などがお出しされる可能性があるとも言えるわけで、加えてヒプマイにおいて「因縁=辛い過去」となりがちなので、トンデモナイものをお出しされるのではとBAT好きとしては震えて待っている。

◯開眼
インドというか仏教っぽいイントロがまずBATっぽくて良い。そして十四が静かに語りだし、次第に盛り上がっていく。歌詞も、最初は苦しみを吐露しながらも「一緒に背負ってやるよ」という励ましに変わっていく。修行僧の空却、様々な苦しみと闘ってきた十四と獄に言われると説得力が半端ない。
BATの楽曲として私が一番最初に注目したのがこの曲で、というのも2期EDのナゴヤパートに参加されたアフロさんが関わっているというのが大きな理由。教えてくれたニコニコ原作ネキありがとう。

◯Young of the sun
現在進行系で励まされてる。歌詞がどこま25,385でも激励だし、曲調もアップテンポでテンション上げてくれる。まさに波羅夷空却の楽曲。
『ダセェ過去はまとめて背負い投げ』、思い出したくない過去なんか腐るほどあるし、しょっちゅう「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛」ってなったり落ち込んだりするので、そういう時思い出すようにしてる。
「『やる気』じゃねぇよ みたいのは『死ぬ気』」、よく聞くフレーズなのにな。ダセェところには喝入れて、やり遂げたら褒めてくれるヤツだよね、この僧侶は…。
自然と頑張らなきゃって思えて、進行形で国家資格の取得目指して勉強中。
この僧侶にマジで導かれてる。

・ヒプアニ楽曲

◯RISE FROM DEAD
中毒性が高すぎ。とっつきやすさがあると思う。ヒプアニ沼れた1つの要因にもなってる。
1期の『ヒプノシスマイク -Rhyme Anima-』は出だしのハードさやおそらくハ短調(ドレミ♭ファソラ♭シ♭ド)。ヒプマイらしさを出している一方で少々重さがある。ちょっととっつきにくかった。\パソコン!/
『RISE FROM DEAD』は、恐らくイ長調(ラシド♯レミファ♯ソ♯)。軽快さがある。
「時は戻らない」~「Break the chain」までの歌詞と勢いも最高すぎる。
ニコニコの空耳コメも大好き。ただ、某所の記事編集のためにかなりアニメをリピートして視聴したため、一時期食傷気味になっていた。改めて聞いてもやはり口ずさむほど好き。

◯絆、絆+、Next Stage
歌詞もアレンジも各ディビごとで「らしさ」が出てるの最高すぎる。このディビジョンの曲といえばこの曲!という楽曲の作詞を務めた人物が担当してるだけある。
アニメ時のイラストも忘れがたい。『Next Stage』の可愛らしいタッチのものも良かったし、『絆』の時のそれぞれのディビジョンを表すような風景とキャラクターの組み合わせも印象的。
余談だが、聖地巡礼をするなら出来る時にしておくのがオススメ。特に渋谷と横浜は再開発で様子が変わっていたりするし、ハチ公も移動する話がある(とはいえ結局どうなるのか不明)ので、アニメのシーン通りの写真が撮りたいなどの場合は特に。

・The Block Party

普段は敵対するチームなのにとあるきっかけでチーム超えた組み合わせで何かする……、オタクがこういうのに弱いのをよく分かっている。
ディビジョンオールスターズの楽曲とはまた違い、ディビジョンを超えた組み合わせで展開される良さが詰まっているというか。
そしてその再現とも言える10thライブは本当に最高で、ネット視聴勢ではあったが「これがライブ…!」と感激。円盤が待ち遠しい。
そしていつかライブに行くという目標まで出来た。人生の目標まで新しく作ってくれたヒプマイには本当に感謝しかない。


その他の楽曲やヒプアニ、The Block Partyの個々の楽曲にも触れたいところであるが、キリがないのと流石に色々と限界なのでここで筆を置こうと思う。

この長々とした記事を最後まで読んでくださった方々には深い感謝を申し上げます。途中途中掻い摘んでの方であってもありがとうございます。
しがないファンの一人ですが、共に応援する仲間として少しでも共感いただけたのなら嬉しい限りです。

【了】

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