「Just keep buying」を読んでみて
2024年の新NISA開始をキッカケに、この本は投資の世界への入門書として購読した。筆者のコンサルタントとデータサイエンティストとしての豊富な経験を活かし、株式市場の客観的な分析を提供。初めの章では、貯金とは異なる投資の視点を提示し、老後資金に関する一般的な誤解を解きほぐす。実はそこまで貯金する必要が無い事や、殆どの老人はお金を使い切れずに亡くなってしまう事を数字から解き明かしている。
また収入が増えても必ずしも支出が増加するわけではなく、どのように収入増加分を投資に回すかについての具体的なアドバイスがあり、自身の金銭感覚を変える方法(例えば2倍ルール)も学べる。
中盤では、株式以外の投資方法との比較やリスクヘッジの重要性に焦点を当てているる。債券やマンション購入、農業の投資に関して、利回りやリスク、実際の投資方法に関して言及している。その際、インフレの影響や債券投資の意義についても詳細に語られ、投資の多角的な理解が促される。
株式シミュレーションの章では、長期間の投資がいかに利益をもたらすかを示す。たとえ市場の動きを完璧に予測できる「神様」がいたとしても、長期保有者に勝るのは難しいというデータが示される。また、その見極めで許容される誤差は非常に僅か(ここでは2ヶ月ずれると損に転じる)である事も証明している。投資を始めたばかりの初心者であれば何も触らない方がむしろ資産が増えると言う話をよく聞くが、この話を聞くと確かにその通りだと思った。
インデックス投資の利点と、個別株を持つ際のリスクについても深く掘り下げられている。個別株において対戦相手は誰になるのか、またどれだけ険しい道なのか詳細に言及している。また筆者の経験から、上流階級同士の連携力の高さや情報の不平等性に関して現実的な視点を交えて語られている。
私はこの章を読み、個別株への投資は勉強目的で始め収益は度外視しようと決意した。
次に一括投資と分割投資についての比較と、どちらの戦略が最適かに関する洞察がされている。一括投資が殆どの期間で優位ではあるが、一部急激な金融危機に重なった場合は分割投資に軍配が上がるとの気配があった。この辺りは、自身の価値観に応じて、ドルコスト平均法を取り入れるか決断した方が良いと感じた。
全体を通して株を始める上で非常に重要な内容が纏まっており、また初心者狩りに合わない様考える知恵を授けてくれる良本であった。