【JR規則】東京山手線内(+α)ならどんなルートもOK(条件有)【第70条】
今回は、あまり知られていない「旅客営業規則第70条」のお話です。
先日、このルールを初めて知って驚きました。
この驚きを皆様と共有したく、記事に致します。
まず、旅客営業規則70条とは一体どのようなものなのか?
https://www.jreast.co.jp/ryokaku/02_hen/03_syo/01_setsu/04.htmlより引用いたします。
要するに、
ということ。
また、この区間の乗車券の経路は、強制的に最短経路となります。
具体例として、「新大阪~大宮」間を考えてみましょう。
一般的には、
新大阪~(東海道新幹線)~東京~(宇都宮or高崎or京浜東北線)~大宮
のルートで移動するかと思います。
この場合、上の図の区間を通過することになるので、旅客営業規則70条が適用されます。すなわち、乗車券に記された経路(上)に関わらず、図の区間内では経路が重複しない限り(=一度通った駅を二度通らない限り)自由なルートを選択することができます。
例えば、新大阪から東海道新幹線に乗車した後、
・・品川~(山手線)~池袋~(埼京線)~赤羽~(京浜東北線)~大宮
や
・・品川~(山手線)~代々木~(中央線)~東京~(総武線)~錦糸町~(総武線各停)~秋葉原~(山手線)~池袋~(埼京線)~赤羽~大宮
と移動することが可能です。
(言うまでもないですが、これはあくまで"特例"です。原則としては、乗車券の経路に沿って移動することが求められます。)
また、新大阪~大宮間は大都市近郊区間を外れる100km以上の区間ですから、途中下車が可能です。ですので、上記で挙げた経路で移動する場合は、品川や渋谷、代々木、東京、錦糸町、上野、池袋など都内各所を追加料金なしで訪れることができます。
ただ、ネットの記事を見る限りは、あまりこのルールが周知されているとは言い難い状況です。これが一般の人に知られていないだけならまだ良いのですが、一部の記事によると、70条規則は駅員の間でもあまり知られたものではないようです。この規則の適用を受ける際は、旅客営業規則などの根拠を提示できる環境にあることが望ましいです。
さて、話は少し変わりますが、JRの規則を少しかじったことのある人なら「大都市近郊区間」の制度についてはご存じでしょう。
大都市近郊区間については、旅客営業規則第157条に記述がありますので、
https://www.jreast.co.jp/ryokaku/02_hen/04_syo/02_setsu/11.html#157_2よりこれを引用いたします。
つまり、大都市近郊区間で完結する区間であれば、どのような経路で移動してもOK、ということを表しています(経路の重複はNG)。具体的なその区間については、https://www.jreast.co.jp/kippu/1103.htmlをご参照ください。
例えば、「横浜~大宮」間を移動することを考えてみましょう。
この移動は大都市近郊区間で完結しますので、その経路は、乗車券に記された経路によらず自由です。
一般的な上野東京ライン・湘南新宿ラインで移動してもOKですし、京浜東北線や埼京線、山手線などを用いることもできます。水戸線や八高線、外房線や成田線などを用いた複雑怪奇なルートであっても、同じ駅を二度通らないという条件の下で可能です(新幹線は大都市近郊区間ではないのでNG)。
これは所謂「大回り乗車」というものに繋がるのですが、これはまた別の機会に。
さて、当然ですが、この「大都市近郊区間」には、「70条規則」で定める区間(山手線+α)が含まれています(新幹線を除く)。
ではなぜ、「大都市近郊区間」の制度がありながらも、別途第70条が定められているのでしょうか?
これら2つの制度は一見似ていますが、実は決定的に異なる点があります。
それは、適用条件。
70条規則は、JRの全ての駅間で、"指定区間を通過する場合"、必ず適用されます。
一方で大都市近郊区間の制度は、移動が"大都市近郊区間で完結する場合"に限り、任意的に適用されます。
違いは旅客営業規則の文面から見ることができます。
旅客営業規則70条には、「計算する」とありますが、157条には「乗車することができる」とあります。
言い換えれば、70条は強行法規であるのに対し、157条は任意法規なのです。
また、70条はどの駅間でも適用されますが、157条は大都市近郊区間で完結する区間でないと適用されません。具体的に言えば、「新大阪~大宮」間の移動については、70条規則こそ適用されますが、大都市近郊区間で完結しないため、後者は適用されません。
こうした違いにより、2つの規則が共存しているのでしょう。
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