「メガ」のつくアートギャラリーの影響力
数多くのアートギャラリーの中で、世界には「メガギャラリー」と呼ばれるものがあるのはご存知でしょうか?
メガギャラリーとは世界複数の都市にギャラリースペースを持ち、時には美術館よりもアートマーケットへの影響力を持っているギャラリー。
現在メガギャラリーと呼ばれているのは以下の4ギャラリー。
Gagosian
Pace
Hauser & Wirth
David Zwirner
ポスター、エディション作品の購入プラットフォームとして、過去の記事でもこれらのギャラリーについて書いたことがありました。
今回は彼らの影響力の大きさについてです。
世界中に所有するギャラリースペース
これらのギャラリーは世界中にギャラリースペースを持っているため、所属するアーティストは需要のあるマーケットで展示ができるようになります。
例えばHauser and Wirthギャラリーは2021年に地中海に浮かぶ、イスラ・デル・レイ島にギャラリースペースをオープンしました。
同ギャラリーはアメリカに6拠点、イギリスに3拠点、スイスに5拠点、スペインに2拠点、モナコに1拠点、香港に1拠点、スペースを所有。
作品価格
メガギャラリーとの契約が成立するとアートメディアですぐ取り上げられます。アーティストにとってはそれだけでも大きな露出度となり注目を浴びます。そしてそれらのギャラリーに所属することで作品価格が一気に跳ね上がることも少なくありません。
一見アーティストにとって喜ばしいことですが、実はそれをだけを理由に契約するのは危険なこと。メガギャラリーに所属しているという理由だけで価格が上がり、作品が転売されやすくなってしまうことも。長いキャリアに悪影響することもあるのです。
例えばSterling Rubyの"SP231"は2013年に制作され、同年のChristie'sオークションで約1.8億円で落札されました(当時の為替レートで換算)。今でもこれが彼の最高落札価格となっているのです。
ギャラリーは高額作品販売の際、買い手のバックグラウンドチェックして購入希望者をフィルタリングします。販売規約に数年間所有することが記されているため、守らなかった場合は基本的にギャラリーとの関係が終了する(はず)。
しかしギャラリーが転売を禁止することはできないし、オークションハウスが転売とわかりながら出品することも禁止されていません。
どんなに素晴らしい作品を生み出すアーティストでも買い手を選ぶことは難しいのが現状です。。。
近年見られるインクルーシブな契約/採用
2020年5月に起きたジョージ・フロイド殺害事件後にブラック・ライブズ・マター運動が広がったのを受けて、アート界でも人種間の格差解消への取り組みが進展しているといいます。それは所属するアーティストだけでなく社員の採用も同様。
メガギャラリーが率先することでアート業界全体が変化していく可能性が上がります。
2021年にGagosianのディレクターとなったアフリカ系アメリカ人のAntwaun Sargentは最初の仕事として同人種のHonor Titusをアーティストとして迎え入れ、彼の個展"Advantage In"をGagosian Beverly Hillsで企画しました。
このインクルーシブに向けての動きはコレクターの人種にも影響があります。今までアーティスト、ギャラリー、コレクター全てが白人同士だったビジネスが、現在は同人種のアーティストをサポートするコレクターの動きが増えているようです。
2024年、日本初のメガギャラリーがオープン
2024年春、西麻布ヒルズにPace Galleryがスペースを構えることが発表されました。実はこれまでどこのメガギャラリーもスペースを構えていなかった日本。アジアの拠点としては香港が選ばれていました。言語におけるハードルの低さや、アートビジネスにあたっての税制度が大きく関係していると思われます。
日本でもアートフェアを期間的な保税地域に指定するなど、少しずつですがコレクターにとって有益な税制度が始まりました。Pace Tokyoのオープンが日本のアートシーンへもたらす影響の大きさに期待が高まります!しかしなによりも無料で超一流かつ最先端の作品を見る機会が増えるのは本当にありがたい限りです。
最後まで読んで頂きありがとうございました!
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