筋腫や腺筋症に伴う過多月経をマイクロ波照射で1000例以上治療した医師の意見
今回から子宮筋腫あるいは子宮腺筋症組織内へのマイクロ波照射法の開発について書いていきます。
イラスト画像のように経腹超音波画像のガイド下に希望する位置へマイクロ波アプリケーターを導いてからマイクロ波を照射し、組織を加熱壊死させる方法についてです。
経頸管的処置は子宮壁内の病変への最短経路。
子宮壁内の病巣への接近経路としては、腹壁側からも可能ですし、膣壁を経由して子宮の組織へ接近することも可能です。しかし、両者は、正常な組織(腹壁や膣壁)に侵襲を加えて(具体的に言えば小穴をあけて)子宮にいたるので、身体に優しくありません。せっかく子宮頸管という子宮腔内へ至る経路があるのですから、そこから子宮腔内へ至り、さらに子宮内膜と子宮筋組織を経由して子宮壁内の病巣へ接近し到達できれば、侵襲は実質的には無視できるくらい小さくなります。これが、経腹超音波ガイド下経頸管的マイクロ波アブレーションを考案した理由です。さらに、付け加えると、MEAと併用する場合には、手術時間はせいぜい20分くらい増加するだけで、追加する医療資源も殆どありません。
筋腫や腺筋症組織のマイクロ波アブレーションはMEAのテクニック
現在のところ、MEAの分しか診療報酬を請求できません。
多少の時間をかけて、マイクロ波照射上の高級なテクニックを使用してMEAを行っても筋腫や腺筋症をアブレーションした分だけ治療側の持ち出しになるだけと考えるか、MEAの治療成績を向上し、適応を広げる方を取るかは意見が分かれるでしょう。保険診療では、時間・労力と消耗品を大量に使って、1kg以上の筋腫を核出し、若い患者の子宮機能を温存しても、30gの筋腫核出術の場合と術式が同じであれば手術料も同じです。保険診療には、型通りの手術で済みそうな患者さんだけを選んで治療するほうがビジネスとしてはよいという一面があるのです。
安全にかつ容易に経腹超音波ガイド下経頸管的穿刺を行うには
経腹超音波ガイド下経頸管的穿刺は、助手の手で超音波プローブを固定してもらっても実施可能です。しかし、針先が超音波画面外へ失われると、容易には探し出せません。一つ間違えると子宮外へ針先が入ってしまう条件下では、病巣への経頸管的穿刺は手軽に行える操作ではありません。子宮腔内の穿刺針の全長を超音波画面内に捉えた助手は、穿刺が終わるまで銅像のように固まり動いてはいけないのですから。同時に、術者との連携にも細心の注意が必要です。あまりに習熟を要する操作では多数の臨床的実践は無理です。安全・確実に実施するためには、経腹超音波プローブ固定器具と経頸管的穿刺用のガイド管固定器具を一体化させてガイド管が経腹超音波画像内に常に存在するような器具があればいいのです。
経腹超音波断層法の補助下に経頸管的穿刺を行う器具は、筆者が「原型の原型」を自作しました。これまで存在しない器具を新規に実現するために、まずDIYで手探りを始めたわけです。さらに、筆者の古い友人が、超音波プローブの固定部分とガイド管の固定部分をプロの技術で合体させた見苦しくない「1号機」を作ってくれました。これを元に医療器具製造の株式会社YDMに相談に乗っていただき、さまざまな大きさと形状の超音波プローブを固定できるように工夫していただいた結果、新規の医療器具として経頸管的穿刺器具(一般医療機器:穿孔器(12989001)YDM)と経腹超音波プローブ固定器(一般医療機器:体表面用超音波プローブカバー(70014000)YDM)が完成しました。これらを合体させると経腹超音波ガイド下に経頸管的穿刺を行う医療器具として使用することができます。
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