MEA+TCMM+TCMAM:医療経済学的側面から その2
費用対効果を考える
何かを選ばなければならないときには、それぞれの費用・労力とその効果について考えてみるでしょう。治療法を選ぶ時も例外ではありません。その1ではQALYsで効果を数値化するという方法を紹介しました。
MEAにTCMMを追加することは意義があるのか?
費用対効果平面上にMEA単独とMEA+TCMMを比較してみましょう。縦軸は医療に伴う費用、横軸は効果です。QALYsが利用できる場合は横軸にQALYsを選ぶのもありです。
MEA+TCMMの効果がMEA単独で治療するよりも効果が大きく費用が小さければ、MEA+TCMMを採用すべきです。しかし、MEA+TCMMはQALYsの増加を得るために少し費用が必要ですから、右上の第1象限に入りますので、評価としては要検討になります。スタッフの人件費、手術室占有費用の10分間程度の増加+TCMM用の経腹超音波ガイド下経頸管的穿刺器具の購入費用がコストとして追加になります。しかし、この器具は使い捨てではないので100例実施すれば1件あたりの費用は1/100になります。したがって、実質的な費用の増加は少額にとどまります。さらに、MEA単独では治療できない過多月経も安価(子宮全摘術と比較した場合)に治療できることを考慮するとMEA+TCMMを採用することは合理的と評価できるでしょう。MEAとMEA+TCMAMを比較した場合も同様です。
腺筋症にともなう過多月経をMEA+TCMAMで治療した220症例の経過観察のまとめ(2022/3/18のnote)をすでに示しましたが、腺筋症に伴う過多月経をMEA+TCMAMで治療すると、術後5年以内に子宮全摘術が必要になる割合は17%程度でした。
上の表が示すように、治療A=腹腔鏡下子宮全摘術、治療B=MEA+TCMAMの場合は、手術時の直接費用はMEA+TCMAMが小さいことが分かっています(ただし、TCMAMはMEAのテクニックの一つという位置づけで、とくに医療費は発生しない前提で費用を計算しています)。保険点数が定める直接の医療費のほかに、入院日数や日常生活に復帰するまでの期間がMEA+TCMAMでは子宮全摘術よりもかなり短かいので、休業による社会的費用も少額です。このように利点が多いですから、MEA+TCMAMは治療法の説明に際して選択肢から除外される理由はないと言えるでしょう。
手術既往や合併症のために外科的治療は回避したいなど治療法の選択に制限がかかることがあります。また、できるだけ早く仕事に戻らなけらばならないとか、美容的理由から手術を回避したいなど個人的事情は様々です。MEA+TCMM+TCMAMは低侵襲で行える外科的治療の代替治療となりうることを忘れないでほしいと思います。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?