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逆転裁判5再プレイ感想第1話~第2話【王泥喜セレクション感想その1】
※逆転裁判5はもちろん、他タイトルのネタバレも含みます。
先日、「逆転裁判456王泥喜セレクション」に収録されている逆転裁判5を最終話までプレイし終えた。
折角なので、あまり日の経たないうちに感想などを書き留めておこうと思う。
タイトルで分かる通り、これは初見プレイの感想ではない。
5自体は原作発売当時にプレイ済みである。
よって、今回は5がどんな作品なのか振り返る形でのプレイとなった。
当時は気づかなかった新たな発見などもあるため、それについても書いていきたい。
(ちなみに特別編は王泥喜セレクションではまだ手を付けていない状態)
なお筆者は逆転裁判4に脳を焼かれているため、しょっちゅう4に話を脱線させることをご留意の上読んでいただきたい。
今回はスクリーンショットを挟みつつ記事を書くが、きちんとスクリーンショットを残し始めたのは第3話の途中からであるためそこまではスクリーンショットの掲載基準がちぐはぐになってしまうことをお詫びしておく。
プレイスタイルについて
筆者は王泥喜セレクションをかなり変わったプレイスタイルで遊んでいることを先に書いておこう。
画面の右下に「つづく」もしくは「おわり」が表示されセーブポイントに移るタイミング、ここで4→5→6→4…と作品を切り替えながら遊んでいる。
そのため、この逆転裁判5のプレイは4や6と並行したものとなっている。
すなわちぶっ通しのプレイではないということである。
このようなプレイスタイルをとった理由は二つ。
一つ目は「セーブポイントで章分けを行った場合、一番章の数が多いのはどの作品なのか検証するため」。
結果、一番早く最終話までのプレイが終わったのが5であったため、5の感想を最初に書くことになった。
二つ目は「筆者がオド+ミヌ(王泥喜法介と成歩堂みぬきのコンビ)過激派であるため」。
定期的に良質で濃厚なオド+ミヌを摂取できる4をはさむことで心の安寧を手にしようと画策したのである。
5はみぬきちゃんの影が薄く、6はみぬきちゃんの出番が偏っているのだから‥‥
第1話振り返り ~逆転のカウントダウン~
プレイアブルキャラ三人(※原作発売当時は成歩堂龍一のみが主人公とされていたためこのように書いた)それぞれの「謎」を投げかける第1話。
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成歩堂龍一は何故弁護士として戻って来たのか?
王泥喜法介は何故事務所を離れてしまったのか?
希月心音の幼少期に一体何があったのか?
全体で見れば終盤の方の時系列の話であり、配置の仕方は逆転検事の第1話に近いだろうか。
今回のプレイで新たに気づいたのは、4との明確な接点である。
冒頭で流れるアニメの本当に最初のセリフなのだが‥‥
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これ、実は4の第1話からの引用である。
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二番目のセリフが抜けているが、そちらは「ゆがみ」というキーワードが拾われて「法曹界の歪み」こと「ユガミ検事」になったと思われる。
ここから推測できるのは5のキーワードである「法の暗黒時代」は4のこの台詞から生み出されたものではないか、ということだ。
これが真であるならば、5は4を起点にして生み出されてということになる。
「法の暗黒時代」は法曹界から信頼が失われ、検事はわざと冤罪を起こし弁護士はそれに捏造で対抗する‥‥といった時代のこと。
作中設定では法の暗黒時代が始まるきっかけとなった二つ目の事件は5の7年前に起きている。
つまり後付けではあるものの、4は既に法の暗黒時代の最中にあったということになる。
そんな時代の中で、4の成歩堂は証拠だけでは判決が決まらない人の心が反映される裁判の実現のために動き、王泥喜と牙琉検事はひたすらに真実を追求した。
時代背景が設定されたことで4の人物たちの印象がより良くなったのでは?と感じた。
5は4からメインとなるキャラクターをスライドさせてしまった一方で、4に背景情報を足すことでフォローをすることもある。
5を始めてプレイした当時はこのメインキャラのスライドを、4をないがしろにする行為だと思い正直不満を持っていたのだが、制作陣の真の狙いは「5を4の焼き直しにするのではなく4の背景情報を足す作品にすることで、4そのものを後からプレイしたときの印象を変えること」だったのではと思うようになった。
(当時を知らない方のために補足をすると、逆転裁判4は評価が荒れに荒れた作品であり、長年5が発売されなかったのも4の不評が原因ではと考えるファンもいた)
(そういう世間の評価を理解はしても納得は出来ていないのが筆者である)
これは6の話だが、5と6でシナリオとシナリオディレクターを務めた山崎剛氏(※蘇る逆転と4ではプランナー、検事シリーズではシナリオとディレクターを務めている)は「逆転大全 2001-2016」のトーク記事で次のように語っている。
それで、『逆転裁判4』が気になってやっていただけたらね。
そういう意味では『逆転裁判4』から『逆転裁判5』『逆転裁判6』までつながるようにしています。まさに総決算という形で。ですから逆に、『逆転裁判6』を遊ばれてから『逆転裁判4』を始めてもおもしろいと思います。ぜひ楽しんでください。
つまり、「5(と6)のシナリオディレクターはファンが4をプレイするのを望んでいる」ということである。
当時この記事を読んだときは露骨に4要素の多い6こそ、そういう意図をもって制作されたのだと思っていたが「それは5から始まっていたのでは?」と思ったのが今回の再プレイである。
さて、話が大幅に4に脱線したので5に戻ろう。
振り返って思ったのは、「まあこの第1話やらなきゃいけないことが多いな!」である。
プレイヤーではなく、シナリオを書く側が。
なにせ、プレイヤーに希月心音・王泥喜法介・成歩堂龍一の人間性をそれぞれ見せておかないといけない。
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主人公の成歩堂はもちろん、第3話までシナリオ終了時のモノローグで物語を引っ張る心音にも感情移入をさせなければならないし、そのモノローグで謎を残す人物として扱われる王泥喜にも魅力を感じてもらわなければならないのだ。
特に王泥喜は第1話では登場シーンが少ないため、徹底してプレイヤーに「良いヤツ!」と思わせなければならない。
最後のアニメーションで「良いヤツだったのに何で?」と思わせて、心音と心をリンクさせないといけないのだから。
そこで一役買うのが今回の依頼人、森澄しのぶだ。
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見ての通り王泥喜にベタ惚れしている。
そんな彼女が王泥喜を魅力的に感じるのも「瓦礫から庇ってくれた」「大怪我をしているのに探し物を手伝ってくれた」など王泥喜の善意が反映されたものだ。
彼女にはもう一つ重要な役割がある。
それは心音や成歩堂を操作するプレイヤーに「守ってあげたい」と思わせることである。
病弱で気も弱いが心優しい彼女は、それにぴったりなキャラクターだ。
逆転裁判5は基本的に「依頼人を守るゲーム」として作られている。
「逆転裁判なんだから当たり前だろ」と思う方もいるかもしれないが、なにせ前作の4がそれに当てはまらない例外であった。
4は「真実を突き止めるゲーム」であり、「真実を突き止めることで救われる人間もいる」という描き方をしている。
同じ第1話の依頼人を比較して見ても、4の方は「時間が経過し掴みどころのなくなった前作主人公」でありはっきり言って弱い人間には全然見えない。
むしろ逆に新主人公を導いてくる。
プレイヤーは「依頼人を守りたいから」ではなく「どうしてそうなったのか気になるからゲームを進める=真実を突き止めるためにゲームを進める」のだ。
ただこの方針が合わなかったプレイヤーが多かったのも事実であり、だからこそ5では原点回帰を図ったのだろう。
それを分かりやすく示すのが森澄しのぶというキャラクターなのである。
その森澄しのぶのか弱さを際立たせる人物が亜内文武、前作までの第1話の担当検事・亜内武文の弟である。
彼は「被告人いびり」「新人いびり」の異名をとっており、言葉を選ばず言ってしまえばしのぶや心音を苛めてくるのである。全盛期の武文でもここまではしないだろう。
新人いびりでもあるため、心音を助けに駆けつけた成歩堂の頼もしさも際立つというものである。
なお、冒頭でも書いた通り筆者は既に5をプレイした状態で今回再プレイという形で遊んでいる。
なので、この第1話の時点で王泥喜は身も心もボロボロな状態なのを知っている。
そのため、王泥喜が馬等島に殴られ倒れた時は本気で腹が立った。
ただでさえボロボロなのになにしてくれとんねんと。
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そんなこんなで第1話は終わり、王泥喜法介は事務所から離反して謎を残し、時間は過去へ巻き戻り第2話が始まるのであった。
第2話振り返り ~逆転の百鬼夜行~
王泥喜を操作キャラとする第2話。
始めは4のような成歩堂なんでも事務所の日常から始まる。
王泥喜が成歩堂に雑用を押し付けられ、みぬきに付き合うというテンプレのような1コマである。
そして事件発生後、来日した希月心音にパートナー枠がバトンタッチされるという流れだ。
この話で取り上げなければならないのは依頼人・天馬出右衛門の娘である天馬ゆめみの境遇だろう。
天馬ゆめみの母親は既に他界しており、もし父親の出右衛門が殺人犯として投獄されてしまえば彼女は一人ぼっちになってしまう。
そんな彼女の境遇を気にかけて、王泥喜は初めて自分から弁護を引き受けることになる。
これには王泥喜自身の境遇が関係していると思われ、4や6で明かされることだが彼は実両親不在の状態で育っている。
5で後に語られる情報を参考にすると養母もいなかったのだろう。
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成歩堂は「味方がいない孤独」に寄り添える弁護士というのは過去作で語られている。幼い頃、学級裁判で自身がその孤独を味わったから。
では「王泥喜が寄り添えるのは何なのか」と考えた場合大いに参考になるのがこの5の第2話である。
ずばり、「大切な人と離れ離れになることによる痛み/孤独」だろう。こちらも自身の過去の経験に基づくものである。
まあ彼はその後も何度かその痛みを味わうことになるのだが‥‥
天馬市長からは「ゆめみが寂しい思いをしているだろうから、友達になってやってほしい」と頼まれ、それも引き受ける。
彼が孤独に寄り添う手段は弁護だけではないのである。
さて、こうして天馬市長の弁護を引き受けた王泥喜。
そこに立ちはだかるのが今作のライバル検事・夕神迅、通称・ユガミ検事である。
夕神迅は心音との間に何かしらの因縁があることが仄めかされてはいるのだが‥‥
いつ見ても「殺人罪で投獄されている囚人が現役検事」という設定はぶっ飛びすぎている。
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本名国籍年齢不明の検事以上に「どうしてそうなるんだ」と思う。
誰だよ囚人を検事席に立たせてる「検事局長」とやらって!!!
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囚人という設定を抜きでユガミ検事を見てみよう。
まあ攻撃的である、物理的にも。流石に攻撃頻度は狩魔冥を下回るとは思うが。
相棒のタカのギンををけしかけて来るし、両手が自由となれば実際に物を切断することができる斬撃を手刀で放って来る。
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また、弁護側の立証を純粋にアシストするようなことも第5話になって初めて行う。(発破をかける程度なら第3話でやっていたが‥‥)
かなり分かりやすく敵役・ライバルとして作られた検事である。
「逆転裁判なんだから当たり前だろ」と思う方もいるかもしれないが、なにせ前作の(以下略)
4のライバル検事である牙琉響也は王泥喜にとっての「法曹界の先輩」ポジション、平たく言ってしまえば1での綾里千尋のポジションも兼ねており、第2話の時点でもう弁護側の立証をアシストしてくれる。
当然物理攻撃もしてこない。優しい。というかそれが当たり前であれ。
これは彼の「真実を追求することが第一であり弁護士と張り合うつもりはない」というスタンスに基づいたものだが、ライバル検事としては「倒し甲斐がない」というプレイヤーの声が散見されたのも事実である。
ということでこちらも原点回帰が図られたのだろう。
もっとも、123や検事シリーズを経た御剣怜侍が密接に関わっている上司として存在している以上、いわゆる悪徳検事にはできないのだが。
第2話をプレイして思ったのは、「あれ思ったより4(王泥喜法介の物語)の続きだな?」ということである。
先に記した通り王泥喜が今回初めて自分から弁護を引き受けた理由は、恐らく4で明かされた設定に基づいたものだ。
次に、王泥喜は今回初めて攻撃的な検事を相手どることになる。これは彼に与えられた新たな試練といっていい。
そして重要なのは最後。このシーンである。
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この、裁判に勝訴した後、ゆめみが笑うシーン。
王泥喜は逆転裁判4のラストにて、次のように語っているのだ。
オドロキ
「オレのチカラは、
まだまだ弱いけど‥‥でも。」
オドロキ
「希望を取り戻した人たちの笑顔を
見ることができるのなら‥‥」
オドロキ
「これからも、
この道を進んでいこう、って。」
オドロキ
「‥‥そんなふうに思って、
今日も発声練習をしているんだ。」
逆転裁判5の第2話は間違いなく、王泥喜法介が4で抱いた思いと共に進みだした道の先にあるのである。
メインキャラクターのスライドによって1→2ほどの繋がりが見えないだけで。
次回の記事が書けたら、こちらにリンクを貼ろうと思う。