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女の子らしい女の子

 他の方の記事で、女性らしさが身に付かなくて悩んだ、女性の集団心理や行動に馴染めなかったという話を読んで、自分の子供時代を思い返した記事です。


女の子らしいものが大好きだけど

 クロミは女の子らしい女の子だね、と昔も今もよく言われる。
 可愛い服や小物が大好きだし、全身ピンクだったり花模様だったりフリルやレースいっぱいのファッションも大好き。
 髪をくるくる巻いたりリボンをつけたり、ツインテールにして髪飾りもいっぱいつけたり、男性が見たらちょっと引くような趣味をしてると思う。

 小さい頃からお絵描きが好きで、高校生まではピアノを習っていた。ベートーベンやバッハよりも、リヒナーやショパンが好き。
 買うCDはみんな女の子が歌っているものばかり。好きなキャラも丸くてふわふわしたものばかり。

 無理をしているわけではなく、自分の好みを貫いた結果だ。ピンクピンクのファンシー三昧が、私の居心地の良い過ごし方。

 だけど幼少期から十代前半まで私はずっと、「自分は女の子ではないような気がする」という違和感を抱えていた。
 どんなに着飾っても。どんなにおしとやかな振る舞いをしても。どんなに可愛いものを集めても、私は女の子にはなれなかった。

女の子らしさってそもそも何だ?

 周りの女の子を見てみよう。
 女の子らしさを振りまいている子って、別にそんなにファンシーな格好をしているわけじゃないし、優しく丁寧な振る舞いをしているわけでもない。
 ただ彼女たちは、集団の中でうまく自分を使い分けて、クラスや学校での立ち位置を明確にしているんだと思う。

 小学校に上がった時、「なんだか女の子って私に厳しくない?」と理不尽に感じたものだ。
 みんなに厳しいならともかく、他の女の子には気を遣って丁寧に接したり、ニコニコ楽しそうに接したりしている。それなのに私にはすごく厳しい顔で「クロミ、ちゃんとやってね」と言ってくる。
 そう。これは、「ちゃんとやっていない男子」と同じ扱いなのだ。

 ちびまる子ちゃんに出てくる可愛い女の子たちって、まるちゃんやたまちゃんには優しいけど、おふざけ組の男子にはすごく厳しいでしょ。あれと同じ。
 これがもう少し進化して、中高生になると、男の子に対して甘えながら尻に敷くような態度に出るわけですよ。
 同学年の男子や若い男の先生に対して「ねえあれ買って買って〜」とおねだりしている子を見た時はびっくりしたものよ。君にも買ってあげるよ、と言われたけど、逃げるように自分でお金を出したわ。怖すぎるもの。

 それでようやく気づいた。
 私が感じていた、周りの女の子と自分の漠然とした違い。おそらく周りも感じ取っていて、「同じ女の子の仲間として扱わなくていい」と判断されてしまった理由。
 私は、女の子特有のうっすらとした女尊男卑、さらには女の子の中でのヒエラルキーを見抜く力に欠けていた。まったくなかったと言ってもいい。

 どんなに可愛い服を着ても、可愛い髪型をしても、可愛いグッズを集めても、それは一人で着飾っているだけ。一人で可愛いものに埋もれているだけ。
 集団の中での力関係を理解してうまく立ち回らなければ、「集団の中の女の子」にはなれない。「ちょっと〜! ちゃんとやりなさいよ!」と言われて追い回される、「気の弱い男子ポジション」になってしまうのだ。

それでも私は一人で着飾る

 集団の中の女の子らしさというのは、可愛い服ではなく周りと同じような服を着て、可愛い態度ではなく周りと同じような態度をとって、可愛い雑貨ではなくクラスや学校の中に埋もれて生きることなんだ、と理解した。
 違うかもしれないけど、私はそう思っている。

 じゃあ、そうなりたかったか? というと、そんなことはない。
 だって私にとっては、私の服のほうが可愛いから。
 私の行動のほうが可愛いから。
 私の持っているペンやノートやぬいぐるみのほうが絶対に可愛いから。

 クロミは可愛いね〜、と言われて十年、二十年。私は一人だ。一人で可愛くしていたっていいじゃないか。
 それが世間の望む可愛さ、女の子らしさ、年相応の女性らしさに進化していかなくても、「ガラパゴス可愛い」を自分で磨いていけばいい。

 そして今思ったんだけど、お話に出てくるこういうタイプのキャラクターって、だいたい男よね。ベクトルは違うけど、「俺様は強いからそれでいいのだ!」とか「わたくしは独自の美学を持っているから偉いのです」みたいなやつ。なんか笑ってしまった。

セクシャルマイノリティは関係ある?

 私がアロマンティック・アセクシャルを自覚したのは年を重ねてからなので、小中学校の集団に馴染めるかどうかとはまた別だったんじゃないかと思う。
 でも、恋する乙女たちの気持ちはまったくわからなかったし、恋愛漫画も一応読んではいたけれど理解していないに等しかったし、少しはハンデになっていたのかもしれない。

 ちなみにうちの親は、「女の子らしい女の子が男の子の服を着ているのが大好き」というこれまた複雑なおしゃれ感覚をしており、物心つくまでは私、男の子の格好をしていました。
 それで余計に女の子らしいきらきらピンクフリル大爆発なファッションが好きになってしまったのかもしれないし、単にこだわりが強いだけなのかもしれない。

余談

 小学校の途中まで、私は辛い局面になると、自分が「太った気弱な目立たない男の子」になったような感覚に襲われました。「あっそれ僕です⋯⋯」と思う男性がいらっしゃったらごめんなさい。私の自己イメージなので、現実にいる男の子とはまったく関係ありません。太めの男性も女性も普通に素敵だと思うのですが、私の自己イメージの中では強烈に醜かったんです。多分、痩せていても同じように醜かったと思います。

 マラソンをしていて苦しくなった時なんてまさに、ものすごく太った男の子が全身の肉を揺らしながら「ふぅ〜ふぅ〜辛いよ〜」と言って走っている姿が、いつも自分に重なって見えていたものです。

 小さい頃ずっと男の子の格好をしていたせいなのか、周りの女の子たちからの扱いが男子と同じだったせいなのか、この呪縛はなかなか強力で、鏡を見てもなかなか納得できない厄介なものでした。イグアナの娘的なやつ?

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