美オムソバ
私の初めてのオムソバは大学の学食だった。そのオムソバは今でも時々食べたくなる。 紡錘形に整えられた焼きそばの上に薄焼き玉子その上にケチャップと青海苔が乗っていた。黄色い玉子焼きにケチャップの赤と青海苔の緑が絶妙のバランスだった。その美オムソバは調理担当が決まっていたようでほかのおばさん達より若く見えた白衣のすらっとした女性が作っていた。
ある日いつもと違ってぞんざいに飾られたオムソバが出てきた。受け渡しの為の窓から覗くといつもの方がいなかった。あの美オムソバはその方でないとできないようだった。美しさに欠けるオムソバは味も違っているように感じたと覚えている。
女子は学内に新しくできたオシャレなカフェテリア風な学食に行く子が多かったが私は古い学食のそのオムソバを食べるのが一番好きだった。そう言えば、たらこスパゲッティを食べたのは壁の穴ではなくそのカフェテリア風の学食が初めてだった。隣の女子大では学食に高級ホテルが入ったというのでこっそり食べに行ったこともあった。学食のオシャレ化が始まった頃、バブル期のお話。
というような話を日記に書いた数年後、子供のオープンキャンパスの付き添いで久しぶりに母校を訪ねた。学食も解放されていたがメニューにオムソバはなかった。
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