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自己実現

母が、わたしの部屋に置いてあるzineに興味を持って読みはじめた。少し変わった製本に気付いて、これなに?と言うので、ドイツ装だよ、これもそう、こっちはスイス装、これはフランス装というらしい、製本特集をしている本も面白い、糸かがりと無線綴じ、本の開き、チェコやロシアの装丁がかっこよすぎるなどなど最近面白かった話も含めていろいろと話を聞いてもらった。もともと美術がすきだった母は、ふんふんと話を聞いてくれて、こういう面白いことを学ぶ機会があったら良かったな、とぼやいた。ドイツ装がすきかも!と関心を持ってくれたのが嬉しかった。母は、以前の私のように、人生の中でやりたいことを諦めてきた部分が多く、私が社会人になってからすきなことをしているといつも羨ましがられる。若い頃に子供ができて、自分のことを考える時間なんてほとんどなかった母。わたしはどうしても、自分がやりたいことを優先したい気持ちがあって、だから結婚やら子供やらを今はまだ考えたくない。そういう女性は多いと思うが、子供ができたら出来ないことが増える、というのがそもそもの問題だろう。女性も男性も大人も子供も老人も裕福も貧乏も、みんな均等に自分の時間があって自己実現する機会があれば良いのに。そういうわけで、母は今もまだやりたいことを全て出来てはいないから、わたしがひとつずつ叶えていることがたまに申し訳なくなるけれど、子に恵まれた母にだって、人には体験し得ない喜びがあったはずだ。そう信じて、私は私の道を突き進む。きっと母だって、子が楽しそうにしている方が幸せだろうから。

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