見出し画像

【音楽ジャンル】ロシア及び旧ソ連構成国の現行Post-Punk/Indie Rockについて♯1

ロシア(と、隣接した国々)の現行のPost-Punk/Indie Rockの中には、忘れ去られた存在だった80年代/ペレストロイカ時期の前後に活動していたソ連時代のPost-Punkバンドの音楽性を直接的/間接的に取り入れたバンドが幾つもいて、一つのジャンルとなってロシア国外のリスナーからも注目されています。
その中から特に好きなバンドを六つに絞って紹介したいと思います。

(Russian Doomer Music、Soviet Wave 、New Russian Waveなどのこの辺りのキーワードについては既にウェブ記事など沢山あるのでご興味のある方は検索してみてください)


1 . Утро

ラテン文字表記: Utro
BANDCAMP

RussiaのRostov-on-Donという黒海近くの都市のバンド、Motoramaの別名義。
Motoramaは英語詩で歌うIndie Rock的な音に対し、Утроはロシア語詩でJoy Division的なダークなPost-Punkサウンドが特徴。
1stアルバムは2010年作。当時忘れ去られていた80年代のソ連時代のPost-Punkバンドへのリスペクトを感じさせる音で、その後のバンドへの影響も大きかったのではないかと。

Motoramaの一番好きな曲も貼っておきます。
これは3rdアルバムの一曲目ですが、2012年の2ndアルバムからフランスのTalitres Recordsからリリースをしていて、ロシア国外でも沢山ファンがいるバンドです。

Motoramaの2017年の来日ライブ前の貴重なインタビュー記事
https://www.bigromanticrecords.com/amp/motorama2017interview


2 . Молчат Дома

ラテン文字表記: Molchat Doma
BANDCAMP

Belarusの首都Minskのバンド。メンバーは↓
Egor Shkutko (vocals)
Roman Komogortsev (guitar, synthesizer, drum machine)
Pavel Kozlov (bass guitar, synthesizer)

この人達は、10代の頃はオルタナティブロックやUKポストパンクリバイバル、ヘビーロックを聴いて育った世代だとは思いますが、Depeche Modeなどの80年代New Waveやロシアの新旧のPost-Punkバンドをフェイバリットによく挙げています。
2021年末の時点で三枚のアルバムをリリース済。
1stアルバムは2017年にドイツのDetriti Records (discogs)からまずカセットでリリース(その後にLPでもリリース)
Detriti Recordsは基本的にカセットテープでのリリースが主体で、このバンドの音楽性とカセット特有の音質が上手く噛み合い、1stと2ndアルバムでこのジャンル特有のオブスキュア志向のPost-Punkの一つのフォーマットが完成したと思います。
(それと旧ソ連時代を連想するビジュアルワークも。ユーゴスラビアのLaibachのように全体主義へのアイロニーというよりはノルタルジー的なニュアンスが強い)
この時期のヨーロッパツアーでは行く先々で会場は満員、ライブは大変好評だったらしくDetriti Recordsのオーナーが何故こんなに人気になったのかきっかけが分からなくて不思議だったというような事をインタビュー記事で語っていました。
ちなみにTikTokで2ndアルバム収録曲のSudnoがバズるという出来事も起こっている。

その後、契約上のゴタゴタも多少あったようですがアメリカの大手インディレーベルのSacred Bones Recordsに移籍して3rdアルバムをリリース。
現時点でもロシア語で歌うバンドとしてはこれまでにないくらいの人気だとは思いますが、ワールドツアーもアメリカに突入すればさらに大きな人気を得る事になるのではと思います。

追記 2023.11
2022年の北米/ヨーロッパ/ラテンアメリカツアーのミニドキュメント。


3. Буерак

ラテン文字表記: Buerak
BANDCAMP

ロシアのNovosibirskの二人組。
フィジカルリリースはあまり無いのですが殆どの作品はbandcampや各種サブスクで聴く事が出来ます。
ライブ会場の規模など見るとロシア国内ではしっかりとした人気があるようです。
音楽性に関してはギターのフレーズも美しく特に新しい音源ほどPost-PunkというよりはIndie Rockといった方がしっくりきますが、インタビューではソ連時代のPost-Punkバンドへの言及があり、このバンドのシリアスになり過ぎずどこかシュールな雰囲気があるのはそういったバンドから影響を受けているようです(自動翻訳で読んだ内容なので不正確ですみません)
最初のしっかりとしたレコーディング作品と思われる2014年のEPに収録されたСпортивные Очкиは切ないメロディと疾走感のある名曲です。

リリース毎にちゃんとteaserやMVを制作してます。映像や写真とセットの方がこの人達のセンスがよく分かります。

ベース/ボーカル担当のメンバーのInstagramを見ると日本の漫画もちらちら映っています。いつかライブで来日して欲しいですね。

4. Конец Электроники

ラテン文字表記:  the end of electronics
BANDCAMP

ロシアのRyazan在住の一人プロジェクト。
同じくロシアのレーベルSierpien RecordsでCDやカセットのフォーマットでのリリースがある。
最初期のリリースになる2016年のEPに収録のНочь(night)は、無機質なビート、冷たく暗い音色に哀愁のあるメロディが乗るこの系統の音を代表する名曲です。

2019年にリリースされたProletarian Gothicも人気のある曲です。
自動翻訳で読みましたが、まさにGothic Rockといった詩に工場に行かなくてはならないという一節が挟まれます。
以前に活動してたLow Death Soundsというバンドの音を聴くと特にオブスキュアな感触のある音では無いのでかなり意識的に音楽性を変えたようです。


5. горемыка

ラテン文字表記: Goremyka
ロシアのSmolenskの二人組。
Molchat Domaと同じくDetriti Recordsからのカセットテープリリース有り。
BANDCAMP

初リリースが2020年なので上記のバンド達の影響を受けて活動した第二,第三の世代と言えます。
特にゴシックロック的な重く冷たい音が好きな人におオススメのバンドです。
他のジャンルでもそうですが、後発のバンド群の方がそのジャンルの特徴を強調する煮詰めた音になったりしますがこのバンドもそういったニュアンスがありますね。
それ故に、どの曲もハズレが無い代わりに強力なフックのある一曲がないという弱点はありますが、かっこいい音なので頑張ってリリースを続けて欲しいです。

追記 2023.11
しばらく活動休止していましたが再開したようです。嬉しい!


6. Blind Seagull

BANDCAMP
ロシアの飛地領カリーニングラードのバンド。
ボーカル/ギター、ベース、ドラム編成だけどシンセもよく使います。今回の記事の中では一番しっかりロックバンドらしいバンドです。
このバンドもDetriti Recordsからリリース有り。しかもカセットではなくレコードでかなりかっこいいMVも制作されていて必見です。

Detriti Recordsからのリリースは多少レーベルカラーに寄せてダークなRussian Post-Punk感が強調されてるけど
基本的にはヨーロッパの昨今のトレンドの強いビートに空間系のエフェクトを強くかけたギターが走る若々しい音が一番得意なのだと思う。
インタビューによるとPost-Punkは無機質な音のジャンルだけど自分達は意識的にエモーショナルな音にしていると語っています。

↓図書館だったり、お店の出入り口前?の謎スペースでのライブ動画が好きです。

追記 2023.11
2022年にイタリアのDarkwaveやPost-Punk系のインディーレーベルのAvant!からアルバムPersonal Decayをリリース。
レーベルが言うにはこれが正式な初のフルアルバムになるらしい。
今までより短尺の曲を詰め込んだ、駆け抜けるような内容で素晴らしいです。

サイドプロジェクトのGibel Sada (Гибель Сада) も始まりました。
Sovietwaveど真中、もしくは80年代のオブスキュアなポストパンクというかポジティブパンクみたいな音作りを狙ってると思うのですが、Blind Seagullと同じくエモ味が溢れてます。特にギターのフレーズが良いです。
Blind Seagullは英語の歌詞ですが、こちらの名義では露語を使用していています。
BANDCAMP

さらにEmo/Screamo系のバンドでも音源を作っています。
Сухоцвет
BANDCAMP

Spotify playlist

Spotifyで上記のバンドも含めたプレイリストを作ってます↓
今回の記事のバンドを気に入った人にはソ連時代の曲を現代Post-Punk的なアレンジでカバーするChernikovskaya Hataや、Molchat Domaとも共演する兄貴分的なPlohoの特に初期の音源や、Molchat Domaのギタリストがレコーディングに協力しているベラルーシのNürnberg、最近のリリース曲が良くなってきてるдосвидошьなども良いかなと思います。
あとMolchat Domaの1stと同時期にDetriti Recordsからカセットをリリースした、
DK Postoronnih(ДК Посторонних)も。

YouTube playlist

YouTubeのプレイリストです。
好きな曲を並べただけですが2009年のMotoramaの最初期音源から始めてリリース年順にしています。


追記

今回の記事の様なPost Soviet的なPost-Punkを多くリリースするレーベルなどをいくつか。

ロシア国内の現行Post-Punk系がメインのレーベル。
HИИ
Sierpien Records
Русский пост-панк
ICONIC PROMO

ロシア国内のアーティストに限らず貴重な再発音源が多い。
12 Chasov

ポーランドのgoth系のレーベルでロシアのバンドのリリースも多い。
Bat-Cave Productions

記事本文に何度も出てきた世界各国の現行Post-Punk/Synthwave/EBMをリリーするレーベル。
レーベルオーナーもアーティストで音源のクオリティも高い。
Detriti Records

ロシア、中欧、中東欧含む東欧諸国のPost-Punkを紹介するYouTubeアカウント。
一度、アカウントの乗っ取りにより全ての動画が削除されしてしまいましたが、新たにアカウトを作り直して復活されました。
過去の曲も少しずつアップし直している様です。
Krzysztof Utbult


こちらも音源紹介アカウント。


↓続きというかジャンルの範囲を広げて好きなバンドを紹介しています。

いいなと思ったら応援しよう!