20‐21プレミアリーグ順位予想前編(1位~7位)
9月に開幕した20‐21プレミアリーグ。コロナウイルスの影響で今季の補強はおとなしいのではないかという声が多かったが、昨季と比べるとやや移籍金総額は下回ったとはいえ、どのチームも他のリーグに比べてかなりの額を費やした。そして、4試合を消化して補強が実を結びスタートダッシュに成功したチーム、そうでないチームと明暗が分かれた。
オフシーズンの補強、開幕4試合の出来、昨シーズンの傾向、監督や選手のキャラクターなどを参考に、少し遅いが順位予想をしていく。結果論と思われるかもしれないが、どんなチーム作りをしたのか見ないで予想しても「勘」の要素が強いため、あえて開幕して少し経ったこのタイミングで予想をしてみた。文章量は多いですが、たっぷり語っているのでぜひ最後までご覧ください。
(今回の記事は欧州カップ戦出場圏内の7位までの予想です。)
1位 アーセナル(ミケル アルテタ)
移籍市場
in:ガブリエウ マガリャインス トーマス パーティ ダニ セバージョス(レンタル継続) ウィリアン など完全移籍移行含めて合わせて8選手
out:エミリアーノ マルティネス マッテオ グエンドゥジ ルーカス トレイラ
オフシーズン満足度:100点
いきなり「え?アーセナルが1位?」と思った方も多いはず。しかし、彼らが優勝するチャンスは十分あると思う。
今季のアーセナルの動きは素晴らしかった。課題だった最終ラインにガブリエウ、サリバ(昨シーズンから決まっていたが)、さらにパブロマリの完全移籍移行と優秀な人材をそろえた。そして層の薄さと今季先行きが不透明な選手の多さが不安だった中盤にも、セバージョスのレンタル延長やエルネニーの復帰しいきなり完全復活しただけでなく、トーマスパーティーの獲得など嬉しいニュースが多かった。前線も経験豊富なウィリアンを獲得しただけでなく、オーバメヤンとの契約延長にも合意し完璧なオフシーズンだった。
昨シーズン途中レノの離脱の穴を完璧に埋めたマルティネスはチームを離れたものの、£20mの移籍金をクラブに残した。素行の悪さが目立ったグエンドゥジも放出し、調子を取り戻せないトレイラをレンタル移籍させたのも人員調整と、彼自身の出場機会を増やす面で大きいはず。
ピッチ上・戦術面
オフシーズンの完璧な動きを裏切ることなく、結果を残したのがアルテタの手腕。昨シーズン終盤から採用している守備時5バック、攻撃時4バックの可変システムを継続して使い、リバプールには力負けしたものの、3勝と結果を残した。ビルドアップの型が多く、前線だけでなく後ろも流動的であるため、相手からするとプレスがはまりにくい。また、左サイドの連携は見事で、オーバメヤンがスペースのある状況で前を向くと、必ずと言っていいほど内側を左WB(サカもしくはナイルズ)、外側を左CBのティアニーが走る。この形からフラム戦は得点を決めたし、FA杯決勝や、コミュニティシールドでも似たような形があったはずだ。
ファイナルサードでの崩しの質も非常に高い。前線に多くの人数をかけ、局面で数的優位を作ると、ワンツーやおとりとなる動きを利用して完全に攻略し、そこからシュートやクロスなど決定機を作り出す。多くのシュートを打つわけではないが、決定的なチャンスを作り出すことができるため、少ないシュート数でも効率よく得点を奪うことができる。
守備においても1つ1つ整備されていて素晴らしい。5‐4‐1のシステムだと、前に出ていくことができず、ズルズル下がってピンチを招く、もしくは高い位置でボールを奪えないという現象が起こりやすいが、そういった印象は抱かない。
まず、失った瞬間の切り替えが早く、足を止めることなくボールを奪いにチャレンジするため、ボールを失ってもすぐにボールを回収する機会が多い。仮にそこで奪えなくてもその間にほかの選手がしっかりと戻っているため、ロングカウンターを食らうシーンも少ない。陣形が整った状況で相手が後ろで回すと、1トップと2シャドーが連携してプレスをかける。(例えば1トップが中盤を切って、2シャドーがSBのコースを切りながらCBにプレッシャーをかけるなど)
前線がプレスをかけると後ろもしっかりと連動して前に出て、WBやダブルボランチの一角が前に出て、前線の3枚がケアしきれないスペースを埋めて自由に繋がせないようにしている。
後方に押し込まれると、5‐4‐1でコンパクトに守り、ライン間を狭くして、逆サイドも圧縮することでスペースを完全につぶす。1トップのラカゼットやエンケティアも守備に参加し、大事なパスコースをつぶすことで相手に攻撃のやり直しや、サイドへの散らしを自由にさせない。
このように前からプレスをかけて高い位置でボールを奪う形も、後方に押し込まれたとしてもゴールを決めさせない撤退守備の形もしっかりと準備できていて、それがチームに浸透している。
1位にした理由・1位になるポイント
1位にしたのは、選手層の厚さとこの選手がいないと崩壊するというチームとして依存している選手が少ないことが大きな理由。たしかに戦いぶりも素晴らしいが、選手層が厚く、2チーム分は簡単に作れる面も非常に大きい。特に開幕が1か月遅くなったこと、またオフの期間が極めて短いことを考慮すると、シーズン通してハイパフォーマンスを継続させることはほぼ不可能だろう。こうなると、選手層や、誰かに依存しないチーム力が非常に大事になる。
また、CLではなくELに出場というのもプレミアリーグ制覇という面では非常に大きい。ELはCLに比べて相手のレベルは格段に落ちる。グループステージなら、多少戦力を落としても突破できるはずだ。これもほかのライバルに比べて、有利な面。戦いぶり以外の面でもアーセナルを1位にした理由はある。
アーセナルが優勝するためにポイントとなるのは、取りこぼしを少なくすることと、ライバルチームが取りこぼしてくれること。直接対決だと、どうしても選手のクオリティではライバルとなるであろうリバプールやシティ、チェルシーなどと比べると劣るため、直接対決でも勝つことは難しいかもしれない。その一方前述したようにライバルチームはCLを戦うだけでなく、(後に述べるが)取りこぼす要素はたくさんある。アーセナルは、ライバルチームが取りこぼしてくれることを信じて、自分たちは勝てる相手にしっかりと勝つということがポイントになるだろう。
これらのことからアーセナルを1位と予想した。
2位 マンチェスター シティ(ペップ グアルディオラ)
移籍市場
in:ナタン アケ ルーベン ディアス フェラン トーレス
out:クラウディオ ブラボ ニコラス オタメンディ ダビドシルバ ルロイサネなど6選手
オフシーズン満足度:80点
DFラインを中心に質の高い選手を補強したシティ。アケは開幕から起用され個人としては素晴らしい守備を見せたと思う。出場した2試合では周りの選手の強度の低さ(特にメンディ)や判断の部分で苦戦したが、アケ自体は粘り強い守備が印象的で良かったと思う。ルーベン ディアスはリーズ戦に出場して安定したプレーは見せたものの、まだまだこれからという印象。私も含めてもう少し彼のプレーをチェックする必要がある。いずれにせよ、右からウォーカー、ルーベン ディアス、ラポルト、アケで4バックを形成すれば、かなり固いDFラインになりそうだ。
逆にトーレスは少し心配。出場してもこれという特徴は発揮できなかったし、まだプレミアリーグ、ペップのシティに適応できていない印象。まだシティでレギュラーを張るレベルには無いように見えた。
きちんとお金をもらって放出したのはサネくらい。(オタメンディはトレード要員だったので)そのサネも適正価格とは言えず、放出の面ではうまくいったとはいえない。とはいえ、選手層が薄くなったというわけではなく、現有戦力で十分やりくりできる範囲だと思う。
ピッチ上・戦術面
前述したとおり、昨シーズン弱さが露呈したDFラインにいい選手をそろえ、昨シーズンいなかったタイプの、右で張って縦に仕掛けられるトーレスを獲得したことで、個人的な期待値は非常に高く、開幕前までは優勝するのではと思っていた。ところが蓋を開けるとスタートダッシュには失敗。1試合消化が少ないとはいえ14位。納得いかない結果だろう。
アグエロ、ジェズスが離脱していることで、スターリングやマフレズが中央に入ったが、2人とも全く機能していなかった。恐らく、この2人が戻ってくれば攻撃の問題はある程度解決されるはず。もちろん得点取れて、ボールも引き出せ、中での駆け引きが巧みなFWが戻ってくることも大きいが、スターリングやマフレズが、得意としているWGでプレーできることも大きい。
一番の問題は守備。特に前からのプレスが全然連動しない。これでは攻撃もスムーズに始まらない。疲れがあるのかもしれないが、縦へのスライドが遅く、CBやボールを持ったキーパーに対して前線の選手がプレスをかけたとき、中盤が縦にスライドして前線の選手がケアしていた相手の中盤の選手に出ていくタイミングが遅い。
また、今後レギュラーから外れると思われるが、メンディの守備の強度があまりにもゆるく、せっかくハマりかけていてもメンディが前に出ていく判断が遅かったり、簡単に前を向かせたりすることでプレスが水の泡となることが多かった。
8月半ばまでCLを戦ったことが影響しているのか、個々の判断やチームとしての連携も酷く、あれだけ良い戦いを見せていたリーズに負けなかったことが不幸中の幸い。アグエロやジェズスが戻ってきて攻撃が機能することを期待してこの順位にしたが、このまま強度が上がらずミスや、疲れが目立つと2位すら難しいかもしれない。
(シティが大敗したレスター戦についてこちらの記事で書いているので、もう少し詳しく知りたい方はぜひ覗いてみてください)
2位にした理由・優勝するためのポイント
前述したとおりギリギリまでCLを戦っていた疲労の影響で、ここまではチームとしても個人としてもクオリティが低い。今季もCLを戦うため、アーセナルに比べて主力選手はよりハードになる。しかし、戦力は揃っているし誰かに対する依存度も低い。しかも昨シーズンの終盤は素晴らしい攻撃力を見せた。自分なりにこういった2つの感情の間を取って2位にした。ただ、前に述べた部分がより多く見えたら2位より下になってもおかしくないし、前に述べた部分の影響を感じさせないくらい後に述べた部分が見えたら優勝できるだろう。戦力、完成度はナンバーワンであるため、あとはそれを発揮できるコンディション、クオリティに持っていけるかが優勝へのカギだ。
これらのことからマンチェスターシティを2位と予想した。
3位 リバプール(ユルゲン クロップ)
移籍市場
in:コンスタンティノス ツィミカス チアゴ アルカンタラ ディオゴ ジョタ
out:ナサニエル クライン デヤン ロヴレン アダム ララーナなど6選手
オフシーズン満足度:70点
補強は的確で堅実なものだった。ロバートソンのバックアッパーとしてツィミカスを獲得した他、リバプールの中盤に必要だったボールを持てて、使う側になれるチアゴ、マネやサラーの代わりになれるジョタを獲得。特にチアゴはバーゲン価格で獲得できた。その一方、ジョタは£45mと高額の移籍金で獲得した。しかし、ディフェンスの穴となっていたファンダイクの相方(ジョーゴメスは攻守における準備力やビルドアップの面で不安、マティプはスピードの無さと怪我が不安)や、アーノルドの控え(若手のネコウィリアムズはいるが)は獲得せず。
放出した選手はフリー。クロップが就任した当初レギュラーとして活躍していたクライン、ロヴレン、ララーナの移籍は寂しいが、出場機会も減っており選手にとってもクラブにとっても放出は妥当だろう。
1番問題だったのが、ワイナルドゥムとの契約延長ができなかったこと。彼がいるといないでチームは大きく変わる。攻撃では、ビルドアップに貢献しつつ、ボックス内にも飛び込めるし、直線的に攻撃に関わることができる。守備でも単純な運動量や強度はもちろん、前に出るあるいはアンカーの脇を埋めるなどの判断の良さも兼ね備えており、弱点がなく常にチームに必要なプレーをしてくれる。彼との契約延長交渉がまとまらず、仮に出場を制限する(去年のエリクセンパターン)ことになると、チームは間違いなく停滞するはずだ。
ピッチ上・戦術面
スタンスは変えず運動量をベースにした4‐3‐3。難しい試合が多かったものの、開幕3連勝。今季も順調かと思われたが、アストンビラ戦ではまさかの7失点。アンラッキーな失点もあったが、攻守においてミスが目立ち、強度も低く、プレスも連動しない。
特に問題なのが、ジョーゴメスとアーノルド。この試合に限ったことではないが、二人の守備の緩さ、判断の悪さ、攻撃における立ち位置の悪さなどが目立っていた。ジョーゴメスは相手が裏に走っていても、まったく裏へのケアをせず、ボールが出てから対応するシーンが多すぎる。もともと、こういった傾向はあった選手だが、視野の中に裏に走っている選手が見えていても足が止まっていて、さすがに限界を感じた。攻撃面でも、パスコースを作る動き、ボールを持ってからパスをどこにつけるかという判断も悪く(これは本人だけの問題ではないが)これらの要素は完全にマティプのほうが上。
アーノルドに関しても1対1の対人の弱さは大問題。もともと得意としているタイプではないものの、ここまでひどくはなかったはずだ。カバーリングの意識も低く、CBの背中を守る守備がほとんどできていない。簡単に背中も取られるし、いくらクロスという武器があってもこれではSBとして頼りがいのあるプレーヤーとは言えない。
リバプールの右サイドは徹底的に狙われていて、リーズ戦やアストンヴィラ戦ではリバプールの右サイドを起点としていくつかゴールも生まれた。
また、個人としての守備はもちろん、チームとしての守備も悪く、取られた後すぐに奪い返す頻度は以前と比べて低いように見える。ハイプレスもシティ同様、中盤の縦スライドが遅く、なかなか連動しない。
攻撃に関しては、ボールを運ぶという部分以外は、そこまで問題ではないように見える。確かに昨シーズンのような、驚くようなスピード感のあるカウンターや、SBの攻撃参加からのクロスを入れる場面や迫力は減っているように感じるが、無観客の影響や疲労の影響もあるだろうし、あれを求めるのはさすがに酷だと思う。
3位とした理由・優勝へのポイント
クオリティの面では、昨シーズンやその前のシーズンと比べて低い。特にテンションが低く、ボールを奪われた後奪い返す迫力、そしてもう一度前に出て得点を奪いに行く迫力、こういった魅力的なクロップのサッカーは鳴りを潜めている。
また、選手層が薄いポジションがいくつかある。例えば、CB。マティプは怪我がちで、ファンダイクとゴメス以外は若手がほとんど。特にファンダイクが離脱なんてことがあったら大崩れするだろう。その他にも、右SB、アンカーなど層の薄いポジションはいくつかある。
また、数はいたとしてもレギュラーと被レギュラーとのクオリティに大きな差がある。リバプールは他のライバルチームに比べて、替えの効かない選手、依存度の高い選手が多い。アリソン、アーノルド、ファンダイク、ロバートソン、ファビーニョ、(個人的にはIHの2人も控えと大きく差があると思っているが依存度は低いので除く)そして前線の3枚(ジョタの加入でもしかすると軽減されるかも)。アーノルドの守備面は不安だが、代えを務められる選手もいない為、実質ゴメスとIH以外の8枚は替えが利かない。代役となる選手はいても、これらの選手がいるといないでチームの出来に大きく影響する。
特に今季は過密日程となるため、こういったチームは非常に不利となるはずだ。CLと並行して戦うとなればなおさら。クオリティの面、選手の依存度の面を考慮して、この順位にした。優勝するためには、個々の守備の判断、強度が上がって、替えが利かない選手が離脱しないことが鍵となるだろう。特にファンダイクやフィルミーノが長期間いなくなったらこのチームは終わる。今シーズンもこういった選手たちが無理を効かせてでも休みなく出場でき、ここからより質と強度を高められれば優勝のチャンスもあるだろう。
これらのことからリバプールを3位と予想した。
4位 エバートン(カルロ アンチェロッティ)
移籍市場
in:ベン ゴッドフリー アラン アブドゥラィエ ドゥクレ ハメス ロドリゲスなど5選手
out:レイトン ベインズ ジブリル シディベ モルガン シュナイデルラン モイーズ キーンなど8選手
オフシーズン満足度:100点
積極補強で注目を集めたエバートン。アラン、ドゥクレと守備力があり、走り回れる中盤の2選手を獲得。また、2列目には攻撃をけん引するハメスを獲得。さらに、最終日には課題となっていたCBのゴッドフリーを獲得。文句無しの補強ができた。
放出では、シディベがモナコに戻った。右SBにはコールマンがいるとはいえ、シディベの攻撃力は魅力的で、層も薄いためできれば残したかったが、元々レンタルということもあり、残念ながら残留はしなかった。モイーズキーンはPSGにレンタル移籍。果たして出場機会を確保できるのかは謎だが、名将トゥヘルの下で才能を開花させてくれることを期待したのだろう。リシャルリソンやディーニュなども残留し、盤石の体制を築いた。
ピッチ上・戦術面
4‐2‐3‐1、もしくは4‐3‐3がメイン。アランとドゥクレが加わった中盤の守備の強度は明らかに高くなった。ハメスの初期配置は右サイドだが、攻撃の時は自由に中央に入り、リズムを作る。逆サイドへの展開も見事で、さすがというプレーを随所に見せている。
昨季以上に今季はボールを保持することを心がけていて、カルバートルインにとりあえず当てて…という攻撃ではない。サイドを攻略するのがうまく、サイドバックの上がりを的確に生かし、クロスを上げればカルバートルインが合わせてくれる。合わなくても、セカンドボールを回収し、ハメスが違いを見せてくれる。主な得点パターンはこんな感じ。
守備は前からガンガン行くわけではないが、少しずつ制限をかけてロングボールをけらせればミナがはじき返してこぼれを中盤が拾う。無理して繋ごうとすれば中盤がつぶす。サボる選手もいないため、これを90分通して継続して行える。これというわかりやすい戦術や、見ていてわくわくする戦術ではないものの、無難に効率よく勝ち星を重ねる戦い方を選んでいる。流石アンチェロッティ!
課題はやはり後ろ。ピックフォードも良かった時と比べると不安定だし(ワールドカップの時の頼もしさは一体どこへ…)CBのスピード不足と前に出て潰す能力、カバーリング範囲の狭さはどうしても気になる。準備力も低く、あれ、大丈夫かな?把握してるの?みたいな場面が見受けられる。オールドタイプのCBだ。ここは新加入のゴッドフリーの活躍に期待したい。
後は、リシャルリソンの責任感が強すぎる問題。自分で何とかしようとしてしまい、周りが見えていないことがよくある。決して守備をサボるわけでもないし、まったく周りを使わないというわけでもないが、頑張りすぎなようにも見える。負傷から復帰したらそこの改善に期待したい。
4位にした理由・CL圏内に入るためのポイント
4位にした理由はやはり補強と試合の内容。すごい魅力的なフットボールをしているかといわれると微妙だが、勝つために必要なことを突き詰めている。いざというときのセットプレーも強みとなるし、チーム全体としての守備の組織も整っている。選手層もSB以外は中堅クラブとしては厚い。
CL圏内に入るためのポイントは、主力が長期離脱しない、カルバートルインが点取りまくる、グバミンが早く復帰して活躍すること。やはり層はCL争いをするクラブと比べると薄いし、控えとの差も大きい。特にSBに関しては怪我されると困る。後は、得点のとれるFWがカルバートルインくらいしかしない為、彼が点を取ってくれないと厳しい。特にサイドを崩して中に入れるという場面が多いため、そこで彼が決めてくれないとチームとしての攻撃の武器を失うことになる。
そして、昨シーズン怪我でシーズンを棒に振ったグバミンが早く戻ってくること。どうやら10月から11月に戻ってくる予定のようで、早く戻るというよりこれ以上怪我をしないこと、そして本調子を取り戻すこと。グバミンは中盤での守備力が高く、レスターのエンディディのような選手。グバミン、ドゥクレ、アランの中盤3枚はリバプールの中盤3枚に並ぶ強度と、運動量をもたらすはず。彼の復帰は、ドゥクレやアランの補強に並ぶニュースになる。
このようにこのまま好調を維持してCL圏内に入ることを期待して、エバートンを4位に予想しました。
5位 チェルシー(フランク ランパード)
移籍市場
in:エドゥアール メンディ チアゴ シウヴァ ベン チルウェル ハキム ツィエク カイ ハフェルツ ティモ ヴェルナー
out:ペドロ ウィリアン ロス バークリー ミシー バチュアイなど8選手
オフシーズン満足度:90点
大型補強で注目を集めた今季のチェルシー。課題となっていたGKには198cmと大型のメンディを獲得し、ディフェンスラインにはターゲットとなっていたチルウェルと、フリーで経験豊富なCBチアゴシウヴァを獲得。前線にも豪華な3選手を獲得した。
一方、経験豊富で必要なプレーを常にしてくれるウィリアンとペドロとの契約延長交渉がまとまらず、フリーで放出したのは少し残念。さらに、バークリーをレンタルで放出したが、彼は戦力として十分考えられると思っていたのでクラブの判断にはやや疑問が残る。補強は素晴らしかったが、抜けた選手のことを考慮し90点とした。
ピッチ上・戦術面
補強で注目を集めた半面、ピッチ上のこと関してはあまり語るポイントが少ない。これという特徴的な戦術や逆に圧倒的に問題があるわけでもないが、結果も内容もついてきていない。
昨季終盤は3バックを使っていたが、今季は4バックに戻した。2列目以降は試合によってメンバーや配置を使い分けていて、まだ最適解を見つけられていない印象。そのため、これというメカニズムがなく語るポイントが少ない。ブライトン戦では勝利したものの、中立で見た人の記憶にはブライトンの勇敢な戦いぶりが残っていて、試合をコントロールできなかったチェルシーがどんな戦いをしていたか記憶に残っていないはずだ。チームとしての戦術の浸透度だけでなく、選手の質でも叶わない(せっかく取った選手もほとんど出場できなかったこともあるが)リバプールには力負けした。WBA戦は不用意なミスが相次ぎ立て続けに失点。最終的に力でねじ伏せ勝ち点1をもぎ取ったが、ランパードの修正力が光ったわけでもない。かなり不安が残る3試合だった。
一方クリスタルパレス戦は好印象。パレスのスタイルも影響しボールを保持することができたが、簡単にプレスを回避し高い位置まで運ぶことができた。パレスのディフェンスラインの選手の質の低さもあったが、完全に試合をコントロールし、思うように得点が決まった。きれいな得点ではなかったものの、高い位置まで運べていたし、崩しきれなかったわけでもない為このクオリティを維持できれば、徐々に調子も上がってくるだろう。ツィエクが復帰し、怪我からのスタートだったチルウェルやチアゴシウヴァのコンディションが上がり、新加入選手が徐々にフィットすればCL出場圏内にも入れるかもしれない。
5位にした理由・CL圏内に入るポイント
5位にした一番の理由は最適解を見つけられていないこと。私自身も今のメンバーでチームとして結果を残しつつ、選手の特性を生かせるメカニズムが見つからないどころかイメージもわかない。最適解をできるだけ早く見つけ、浸透するかどうかがCL圏内に入るポイントだが、最後の最後まで見つからず、選手のクオリティ頼みになりそうな予感。相手とのパワーバランス的に勝ち点を稼ぐことはできても、チームとして浸透されているチームや同じパワーバランスのチームに対しては取りこぼしそう。取りこぼしをいかに減らせるかが、CL出場圏内に入れるかの大きなカギとなるだろう。
これらのことからチェルシーを5位と予想した。
6位 トッテナム(モウリーニョ)
移籍市場
in:セルヒオ レギロン マット ドハーティ ピエール エミール ホイビュア ギャレス ベイルなど完全移籍移行含めて7選手
out:ヤン フェルトンゲン フアン フォイス オリヴァ― スキップなど6選手
オフシーズン満足度:90点
実績十分の即戦力選手を補強したトッテナム。チェルシーほどのネームバリューはないかもしれないが、必要なポジションに的確な選手を獲得してきた印象。中でも両SBのドハーティとレギロンの獲得はかなり大きかった。SBの層も質も課題だったためこの補強は必要な補強である。また、中盤のホイビュアは早速チームの中心として素晴らしい働きをして、ボールを回収する能力の高さを新チームでも発揮している。
ケインの控えがいないことが課題となり、昨シーズンもケインの離脱期間は苦しんだが、カルロス ヴィニシウスやベイルを取ってこれたことで、ケインの負担も軽減されるはずだ。
一方CBを獲得できなかったことは唯一の懸念点。スピードの無さが目立つアルデルヴァイレルトやダイア―、ポテンシャルは高いけど判断ミスが目立つダビンソンサンチェスとトッテナムのCBは不安定な印象。もう少し現代的なCBを補強できれば良かったが、そうはならなかった。
ピッチ上・戦い方
一言で表すなら「The モウリーニョ」という戦い方。後ろでしっかりと組織的なブロックを作り、ボールを奪えばケインに預けソンフンミンを中心とした2列目以降の選手が飛び出し、そこをシンプルに使う。高い位置からプレッシャーをかける一方、後ろに広大なスペースを残してしまうサウサンプトンには、押し込まれながらも得意の形で5得点と快勝。同じく、守備の強度が緩く後方にスペースがあったユナイデットにも6得点と快勝。一方、相手が守備的でボールを持たされる側に回った試合や、相手が守備時に強固なブロックを敷くことで前方にスペースが無く、崩しきることが求められる試合では苦戦していた。守備の固さは素晴らしいが、崩しきるということはまだまだ課題。
押し込んだ時の攻撃のメカニズムは、右SBのドハーティが高い位置をとり右SHに入る選手(試合によって異なったが)が内側に絞る。逆に左サイドはソンフンミンが幅を取り、左SBのベン デイビスはそこまで高い位置を取らずにビルドアップに関与していた。これは昨シーズンからやっていた形。今季は、レギロンを獲得したことで今後このメカニズムに少し変化が生まれるかもしれない。
6位にした理由・CL圏内に入るポイント
恐らく上位との直接対決や、ボールを保持して自分たちで主導権を握ろうとするチームを相手とするとこのチームは相当厄介なチームになる。しかし、相手がトッテナムをリスペクトした重心の低い戦い方をすると、このチームは相当苦戦する。後者のチームと戦った時の取りこぼしが増えると、CL出場圏内に入ることは難しいだろう。
取りこぼしを減らすためには狭いところで崩しきる連携が必要。しかし、モウリーニョもトッテナムもこういったスタイルは苦手としている印象。カギとなるのはロチェルソやラメラ、ウィンクスなど狭いところで技術を発揮できる選手の質だ。恐らく崩しきる型をモウリーニョは用意できないだろうから、個人の技術や発想力で状況を打開できるこういった選手が、チームの助けとなれるかが大きなポイントとなるはずだ。
これらのことからトッテナムを6位と予想した。
7位 レスター(ブレンダン ロジャース)
移籍市場
in:ウェスレイ フォファナ ティモシー カスターニュ ジェンキズ ユンデル
out:ベン チルウェル ライアン ベネット ジョージ ハースト
オフシーズン満足度:80点
チルウェルがチェルシーに引き抜かれたが、その後釜としてカスターニュを獲得。自身初のプレミア挑戦だが開幕戦から素晴らしいパフォーマンスを発揮し、早速チームにフィットした。チルウェルの移籍の不安は完全に払拭した。スピードを兼ね備えた大型若手CBフォファナを高額の移籍金で獲得。まだ実力は未知数だが、ポテンシャルは間違いなく高いので移籍金に見合う活躍を期待したい。補強ポイントだった左利き右WGとしてはユンデルをレンタルで獲得。今季のレスターは注目を浴びるような補強はなかったが、堅実に将来性の高いプレーヤーを獲得した。
チルウェル以外にも引き抜きの噂はあったが、最終的にはチルウェル以外に移籍した選手はいないかった。
ピッチ上・戦術面
ボールを保持するスタイルは今季も継続。相手が前からプレスをかけてこなかったWBA戦、バーンリー戦はボールをゆったりと保持し、高い位置まで運ぶこともできた。ティーレマンスが後方でボールを散らし、プラートは的確なポジショニングを取るという関係性は見事。選手間の距離間もよく、常に複数のパスコースを作ることで自由にボールを回すことができている。
両SBの質も非常に高く、攻撃参加のタイミングも的確で守備においても不安が少ない。バーンズとジャスティンの関係性は特によく、バーンズの動き出しをスムーズにジャスティンが使ってあげたり、外側を効果的に上がることでバーンズに気持ちよくドリブルをさせてあげたり。
しかし、ウェストハム戦は、シティ戦でうまくいった形をそのまま採用したが、これは結果的には大失敗だった。プラートやマディソンが怪我で出られなかったことも大きいが、後ろ重心になりすぎて前にボールが入らず後ろで持っているだけになっていた。3枚のCBが横に間延びし、ラインも高かったので簡単に裏を使われ失点を重ねてしまった。
逆にシティ戦は相手をリスペクトしたうえで良い策だった。強豪相手への対策を苦手としていたロジャースが、シティ戦で素晴らしい準備をしたのは称賛にあたる。シティ戦でどんな戦い方をしていたのか知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
7位にした理由・ヨーロッパへの切符を確実にするポイント
今シーズンも基本的にはボールを保持してコントロールするスタイルは曲げていない。確かに相手との相性はあるかもしれないが、開幕2戦は完璧にゲームをコントロールし、安定したすばらしいポゼッションサッカーを見せていた。苦手としている強豪との対戦でも、しっかりとした対策を立てたことで昨シーズン終盤の残念な時とは生まれ変わった。
その一方ウェストハム戦ではシティ戦でうまくいっていたからといって同じシステムを使い、散々だった。果たして前線に人数をかけない相手に対して、シティ戦と同じ戦い方でいくべきなのか。元の形に戻して自分たちのスタイルを貫くべきだったと思う。監督のこういった判断のミスや、4バックに戻しただけで、これという変化を与えられない修正力の無さを考慮すると、上のクラブとは差があるように見える。
さらに、エンディディの長期離脱の影響で間違いなく勝ち点も失うだろうし、昨シーズンのように終盤に躓きを見せることだって十分考えられる。開幕3戦を見ると、もっと上にいる姿を1ファンとして見たいが、このくらいの順位が妥当だと考える。
さらに上に行くために必要なポイントは、エンディディの離脱期間でできるだけ勝ち点を取りこぼさないこと、相手を見たうえで戦い方を的確に判断すること、終盤に躓きを見せないこと。昨シーズンもエンディディがいない期間で多くの勝ち点をとりこぼしていて、今季はその期間もかなり長い。彼がいない期間にどこまで勝ち点を稼げるかは大きなポイントになる。
悪い時の昨シーズン、そしてウェストハム戦で見えたロジャースの判断ミスをできるだけ最小限に抑えること。想定のしようがなかったり、やろうとしたことがうまくいかなかったりするならまだ仕方ないと思えるが、明らかに結末が見えているのに迷い道をするのだけは避けてほしい。そして、昨シーズン大きく躓いた終盤までコンスタントに勝ち点を稼げる基盤を作れるかどうかがポイントとなるだろう。
これらのことからレスターを7位と予想する。
まとめ
私の予想はこちら
1位 アーセナル
2位 マンチェスターシティ
3位 リバプール
4位 エバートン
5位 チェルシー
6位 トッテナム
7位 レスター
最後までご覧いただきありがとうございました。次回は8位から13位までの中編です!ぜひこちらもご覧ください!