シンガポールでの就労ビザ(Employment Pass)の申請手順 2019年版
海外で合法的に働くには、その国の就労ビザが必要になります。また、携帯の契約や銀行口座の開設など生活のあらゆる場所で身分証明書が必要になるため、生活の基盤にもなります。
この記事では、私が2019年10月にシンガポールで就労ビザを申請した際の手順について紹介します。
(注)ビザ申請の手続きは、シンガポール国内の法律改定や、申請者の状況によって変わります。実際のビザ申請方法は、人事やエージェントに確認してください。
就労ビザの種類
就労ビザの種類はMOM(Ministry of Man power)のウェブサイトに記載されています。
様々な種類がありますが、日本人に関係するのが主に以下の2種類です。ビザによって申請可能な要件が異なり、ビザの種類によってシンガポールでできることも変わってきます。詳しくはリンク先を参照ください。
Employment Pass: For foreign professionals, managers and executives. Candidates need to earn at least $3,600 a month and have acceptable qualifications. (専門家、マネジャーまたはエグゼクティブ向け。最低月収は3600ドル。その資格を満たしている者。)
S pass: For mid-level skilled staff. Candidates need to earn at least $2,200 a month and meet the assessment criteria.(ミドルレベルの技能のスタッフ向け。最低月収は2200ドル。評価記述に合致するもの。)
エンジニアなどは普通EPの方ですが、上記のページは非常に曖昧な書き方していて、本当にどっちなのか判断が付きづらいです。どっちの資格を満たしているか知りたい方は、シンガポール政府が無料のアセスメントサービスを公開しているので、こっちで検索してみてください。
シンガポールの就労ビザの注意点
シンガポールの就労ビザの注意点は、日本と違ってビザと会社が紐付いている点です。会社がスポンサーとなってビザが発行されるので、退職すると一定期間をおいてビザが失効し、国外退去となってしまいます。
例えば、雇用主が外資系でシンガポールから撤退を発表し、オフィスを閉じて従業員を解雇するみたいな事になった場合、しばらくするとビザも無効になります。
国外退去とならないためには、就労ビザが有効な間に次の就職先を決め、就労ビザが発行されている必要があります。
PR(永住権)の場合は、会社と紐付いているわけではないので、退職してもビザは執行せず、自由に転職活動もできます。
申請手順と申請に要する期間
申請手順は以下の通りです。
1. 雇用主からオファーレターをもらう。
2. IPA (In-principle approval) 申請に必要な書類を用意する(2週間程度)
3. IPAを申請する(申請から発行まで約2 - 3週間程度)
4.(初めての仕事の場合)シンガポールに入国する
5.(転職の場合)前職の退職手続きおよび前の就労ビザのキャンセル
6. (IPAで指示された場合のみ)シンガポールで健康診断を受ける(結果取得までに5日程度)
7. MOMで就労ビザを申請する(1時間程度)
8. カードが届く(登録後、5営業日)
1. 雇用主からオファーレターをもらう
まずは、就職先を見つけるところから。
・転勤の場合は、人事発令が内定した段階で会社からオファーレターが出ると思います。
・現地企業に直接雇用してもらう場合は、採用面接を受けて、内定をもらいます。シンガポールの会社は、リモートでの面接だけで内定を出す会社もあるようです(どれくらい一般的かは不明)。
2. IPA (In-principle approval) 申請に必要な書類を用意する(2週間程度)
このIPAは、シンガポールから「あなたに、こういう要件での就労ビザを発行しますよ」と許可をもらった証拠となる文書です。就労ビザそのものではないので、シンガポールに入国して、IPAとその他必要書類をMOM(Ministry of Mon power)に提出して、実際の就労ビザを発行して貰う必要があります。
IPA申請に必要な書類は、MOMのWebサイトに記載がありますし、会社から転勤で行く場合は、人事やエージェントが色々教えてくれるのでそれに従ってやればOKです。
私の場合、以下を提出しました。オンライン申請なので全てPDFにして提出します。
* 記入済み申請書
* オファーレター
* パスポート
* 学歴証明(大学が発行する卒業証明書の英語版)
3. IPAを申請する(申請から発行まで約2 - 3週間程度)
IPAの申請・受取りはMOMのWebサイトでオンラインです。私が約5年近く前にアメリカのJ1ビザ(研修用)を取得した際は、大使館で紙の申請でしたが、シンガポールは効率的です。
ここの手続きは人事またはエージェントがやってくれるので、特にすることはないと思います。
通常は、申請から約2-3週間でIPAが発行されます。
私の場合、申請後、1週間程度後に追加のドキュメントとして、なぜか卒業証書を要求され、提出後、さらに3週間近く待ちました。最初から出しておくのが無難です。
ここでIPAに就労ビザの種類が確定し、EPなのかS passなのか判明します。
4. (初めての仕事の場合)シンガポールに入国する
これがシンガポールで初めての仕事の場合は、IPAが出た時点でシンガポールへ入国します。
以前、アメリカので短期間働いた経験がありますが、アメリカの場合、日本国内の大使館でビザが発行されます。一方、シンガポールはIPA(ビザ発行の許可書)が出た段階で、渡航し、現地の政府オフィスでビザを申請して初めてビザが発行されます。
IPAが発行されると、通常、約1ヶ月以内にMOMで就労ビザの申請をする必要があります。IPAがいつ発行されるのか分からないのに、発行されたら1ヶ月以内にシンガポールで申請しないといけないので大変です。
よほどのことがない限り、IPAは1ヶ月程度出でるので、渡航時期を計算して、引っ越し準備をしておく必要があります。
5.(転職の場合)前職の退職手続きおよび前の就労ビザのキャンセル
転職の場合、次の職場で就労ビザの発行を申請する前に、前職の就労ビザをキャンセルする必要があります。
前述のIPAはあくまで「ビザを申請しても良いですよ」という政府からの案内であって、正式なビザではありません。正式のビザは、後述のMOMに行って申請して初めて発行されます。
この前職の修正ビザのキャンセルは、退職日の後、1週間以内に雇用主が行います。
もし前職の退職日を月末、次の職場の勤務開始日を月初にした場合は、次の職場の勤務開始してから前職のビザをキャンセルして、後述の就労ビザを申請する手続きになり、手順がちょっとチグハグな感じになります。これを考慮すると、前職の最終出社日と次の職場の勤務開始費日は1-2週間開けておくと良いでしょう。なお、前職のビザキャンセルとともに短期滞在ビザ (Short term visit pass)が発行され、30日間発行されますので、その間に次のビザを申請できます。
詳細は以下に記載ありますので、参照ください。
#### (IPAで指示された場合のみ)健康診断を受ける(結果取得までに5日程度)
ビザ申請時の要件として、就労ビザ用の健康診断結果があった場合は、MOMに行く前に健康診断を受けておく必要があります。
通常、初めてのビザ申請の場合は、健康診断を受ける必要があります。2回目以降は免除される場合があります。
病院は就労ビザの健康診断をサポートしている病院であれば、どこでも良いそうです。
なお、この健康診断は、HIVなど重い病気になっていない確認するためで、血液検査・X線・医師の問診で終わりです。だいたい5営業日程度で結果が出ます。
6. MOMで就労ビザを申請する(1時間程度)
健康診断の結果が出ると、MOMで就労ビザの申請ができるようになります。申請は予約制なので、事前にオンラインで予約しましょう。
予約が取れたら、予約日に必要な書類を一式そろえて、申請すると、顔写真撮影・指紋登録を終えて、就労ビザの申請が完了。だいたい待ち時間含めて1時間程度で終わりました。
7. カードが届く(登録後、5営業日)
だいたい申請から5営業日くらいで就労ビザであるカードが届きます。カードには、QRカードがついており、専用のアプリ SGWorkPass でQRコードを読むとビザの詳細(職種、会社、有効期限など)が閲覧できます。
以上で、就労ビザ申請が終わりです。
だいたいは、書類を用意して、提出して、待つの繰り返し。スケジュールが完全に確定できない中、ビザ申請と引っ越しが平行して走るので、ちょっと不安な気持ちになりますが、無事に発行されて働き始めると晴れ晴れとした気分になります。
本記事がこれからシンガポールで働くかもしれない人の参考になれば幸いです。