
【論文メモ⑤_研究成果報告書「コーチング心理学に基づくピアコーチングプログラム開発に関する研究」】
前回に引き続き、現在のクライアントワークで進めようとしちえる「ピア・コーチング」についての内容です。今回はコーチング心理学の介入効果を評価するための尺度の作成、プログラムの作成をしたのち、学生、勤労者を対象としてピアコーチングを実践した結果の有効性の報告書となりますが、その中でも興味を持ったのは、「尺度」の種類と学生、勤労者の結果の違いに着目!ちょっとマニアックですが、今の自分には超重要要素です!
今日の論文(研究成果報告書)
コーチング心理学に基づく日本におけるピアコーチングプログラム開発に関する研究
桜美林大学・心理・教育学系・教授
研究開始の背景
欧米でも日本でもコーチングに対する関心は高まっているが、コーチング心理学の介入効果を評価する客観的尺度の開発が十分でなかったり、コーチング心理学実践の方法やプログラムの妥当性の検証も十分に行われていない状況とのこと。
研究目的
コーチング心理学の実証研究の一つとして評価尺度の開発とピアコーチングの実践プログラムの開発、効果の検討を行う
研究方法
1)尺度開発にむけて
コーチングの介入による効果を評価するために「社会情動スキル尺度」を作成。社会情動スキル尺度とは、自己や他者の情動をどのぐらい理解できるか?、自己の強みを活用し所属する書式への貢献をできるかを5件法で問う。これらを学生170名と勤労者268名へ質問紙調査。その後妥当性、信頼性検討のために「自尊感情尺度」と「組織内自尊感情尺度」を実施した。
・ピアコーチングスキルの評価においては「コーチングポテンシャル尺度」の作成。これは1300名の一般成人にむけ、傾聴と質問、解決のための支援、承認、行動修正の求め方、フィードバックについて4件法で尋ねた。これも妥当性、信頼性検討のために「組織内自尊感情尺度」と「セルフエフィカシー尺度」を同時に調査に含める
2)ピアコーチング実践の効果検証
・大学生9名への介入:コーチング概念の説明とワークで構成。90分×6セッション。第1セッション前と第6セッショ ン後に社会情動スキル尺度、コーチングポテンシャル尺度とともにコーチングのイメー ジ、自分の将来についての考えなどについて 自由記述による回答を求めた。実施後はピアコーチングの感想を聞く
・勤労者18名への介入(全て男性、20−40代):1ヶ月の期間をあけ、それぞれ6時間、2回目4時間の講義+ワーク2回研修。ワークの題材は参加者が職場で実際に抱えているコミ ュニケーションに関することを課題。 研修参加前後に社会情動スキル尺度、2コーチングスキル効力感尺度、 組織内自尊感情尺度への回答、研修後に自由 記述による回答を求めた。
研究結果
1)尺度の作成
▪️社会情動スキル尺度
「自己感情 への気づき」、「他者感情への気づき」、「強みの活用」、「周囲との一体感」の4因子構造16 項目の尺度。
▪️コーチングポテンシャル尺度作成
「課題解決をさぐる 質問」、「アクノレッジメント」、「行動を促す フィードバック」「受容的態度の表出」の 4 因子
3)ピアコーチングの介入効果
学生:「自己感情への気づき」、「他者感情への気づき」、「強みの活用」、「周囲との一体感」といった 自己の行動への効力感はピアコーチングの 実施により低下するが、他者への支援への効力感は向上した。
勤労者:コーチング前後での社会情動スキル尺度得点を比較したところ、「強みの活用」において介入後に有意な改善がみられた。コーチングポテンシャル尺度では、介入後に 合計得点が有意に上昇
ピアコーチングの 効果評価として社会情動スキル尺度による 比較では、勤労者において部分的効果が認められただけであり、学生ではむしろ低下する という結果となったという。
これは、Grant(2007)によると、これまでの研究成果からも2日間コースでは解決志向コーチングスキルのみ改善し情動的知能には改善が認められず、13週間のコース では両者ともに改善したと報告しており、今回の研究の期間もいずれも短すぎで成果に到達しなかったと考えられる。研修参加でなく職場での継続というやり方が求められると説いている。
学生の低下の原因は、コーチング介入によって、もともとあいまいな 認識に基づく当初の高い評価がコーチング の実践のなかで新たな知識や経験が獲得さ れることで評価が厳しくなり低下した可能 性が考えられる。
しかしコーチングポテンシャル尺度は学生、 勤労者において変化をとらえることができ ており、ピアコーチングの実践の効果評価と して活用可能性が高いという結果となった
感想
尺度の作り方が参考になったし、クライアントワークでもピアコーチングを行っているの中で、効果検証をする時の尺度として拝借できそう。また一般的に言われているピアコーチングの効果はあるが、学生、勤労者ともに、効果評価があり、年齢問わずにピアコーチングの実施は有効そう。