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【備忘録:論文version②】看護師の勤務継続意志に関連する職務満足と職場環境について

2本目の論文は「看護師の職務満足と職場環境の関連の調査から、看護職者が働き続けられる支援を考えよう」という趣旨の論文です。
ついさっきもプロジェクトで関わる医療関連の事務局の方とお話し、この話題でも一頻り盛り上がったところです。


今日の論文

「看護師の勤務継続意志に関連する職務満足度と職場環境について」

徳島文理大学研究紀要 第99号 令和2.3
岸田 久美*・三島 瑞穂* 喜多村定子***・長弘 千惠** ・吉永 純子**

研究背景

2021年度、看護師の正規雇用看護職員の離職率は 11.6%、新卒採用者の離職率は 10.3%、既卒採用者の離職率は16.8%で増加傾向。特に、新卒採用者の離職率は初めて10%を超えたとのことで、これは2005年の調査以来最も高い数字。慢性的な人手不足に陥っている病院も多く、その分看護師の方の心身に被る負担感は大きいですよね。
これまでの先行研究からは、こんなことがわかっているそうです。

看護職者の離職防止の因子として職務満足度が考えられ,職務満足度と離職の関連についての研究がなされてきた。職務満足度と患者満足度に関連性がみられ ,職務満足度が看護職者の離職や仕事継続意思に影響しているとされ,職員満足度を高める取り組みが必要(小林, 2006)であると報告3)され,看護職者の職務満足度が高 い病院に勤務する看護職者は,離職率が低いことが明らかになっている。

研究目的


看護職者の職務満足と職場環境に関する調査 を行い,職場,病院,看護への勤務継続意志に影響する 要因を明らかにし,看護職者が働き続けられるための支 援を検討することを目的とした研究です。

研究の進め方

89名の看護職者に協力依頼。無記式質問紙の配布と研究者用意の回収箱を設置。職業満足度測定尺度を用いているが、人間関係,看護管理,看護ケアに関する項目は「日本語版 NWI-R」という別の尺度から追加。そして職場環境、継続意志、離職の企図に関する項目との関連を調べた。

研究の結果(へぇー)

1)職場環境に対する 満足度が高まれば,職場・病院・看護職の勤務継続意志, 離職を考えなくなり,逆に,職場環境に対する満足度が 低くなれば離職の検討をするようになる
2)給与や労働条件など福利厚生など病院側の要因だけではなく,同僚や上司との関係性が勤務継続意志に影響している。
3)職務満足感の低群について ,看護職者の自律性が高まれば離職について考えない,看護職を継続することに影 響を与える,という結果

看護師さんたちから人間関係や若手看護師の教育について悩む声を多く聞きますが、上位者も忙しくて十分な教育ができない、患者さまからのクレームを受けたのちも対応で手いっぱいで振り返る余裕すらない中、上記3)の自律性、自発性が高まらず、離職に至ってしまう状況が多くあるようです。

そしてその解決のヒントとして、こんなことも考察されています。

1)勤務を継続するために看護職者として自律性を重視しており,専門性を高めながら自己啓発できる病院や職場環境で勤務することを望んでいる
2)職務満足度が高いことで ,社会的、心理的な充実感を得られることにより,専門職とし ての成長,将来への展望を描くことができる。生涯教育としてのキャリア開発は看護職としての継続意志に繋がっている
3)キャリアを考え目標を持ち続けることが重要であり,そのことを認識できるような教育,研修などの継続教育,看護職者の臨床実践に必要な能力を段階的に評価することができるクリニカルラダーの導入など体制を整えること により,目標の明確化につながり,看護職を継続,離職防止に繋がると考える。

興味深かったこと

○献身的な思いを持って看護の勉強をし、看護師になった方たちなので、日々の対応だけで終わるのでなく、ちゃんと職場で学習をし専門性を高めて、自分は自律的に動けると自覚できることが職務満足につながっていくことが、驚きもあったけど納得感もありました。学習の余裕がない職場がたくさんありそうな中、少しでもいいから、時間を作り出してマイクロラーニング的にでも教育や自己研鑽の場を作り出していけるようなサポートがより必要だと感じます。それが看護師さんたちの職務満足を生み出し、患者さんの満足につながる好循環になっていけばと願うばかりです。

○看護師さんたちのキャリア開発っていう視点はこれまでなかったなー。専門職として一度免許を取って経験を積み重ねるという印象もあったのですが、技術の進歩に伴い学習のアップデートや多様性がます中での対人スキルのブラッシュアップが求められ続けるからには、キャリア開発、やはり重要ですね。



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