パーキンソン病患者に対するデュアルタスクウォーキングにアプローチした論文

今回はこちらの論文を紹介します。

Treadmill training and physiotherapy smilarly improve dual task gait performance: a randomized-controlled trial in Parkinson's disease

Heiko Gaβner et al
J Neural Transm (Vienna). 2022 Jun 13;129(9):1189–1200.



パーキンソン病患者に対する個別の理学療法やトレッドミルトレーニングはシングルタスクの歩行に良い影響を与えることは知られています。
この論文ではデュアルタスクの歩行にどのような影響を与えるのかを検討しています。

・対象と方法


100名のパーキンソン病患者が対象となっており、年齢は30-90歳と幅広く、ヤール分類はⅠ-Ⅲ度と症状は比較的軽度です。
年齢と症状をマッチさせたグループを2つ作り、一つのグループはトレッドミルトレーニング、もう一つのグループは個別の理学療法を実施しています。

①トレッドミルトレーニング
先行研究を参考にして「①:5分間の準備運動としての歩行、②:5分間の快適な歩行速度での歩行、③:5分間のゆっくりとした歩行、④:②と同じ、⑤:③と同じ」のプログラムを8回実施した。
②個別の理学療法
個別の理学療法では姿勢の調整、バランス練習、柔軟性を高める運動を中心に8回プログラムを実施した。

両グループはそれぞれのプログラムに加えて、太極拳、ノルディックウォーキング、機械を使用した筋力強化を実施しています。さらに4回の作業療法と言語療法も実施しています。

・結果


ベースライン時とそれぞれ14日間の介入後の結果を比較しています。
①デュアルタスクでの歩行速度
トレッドミル群:4.2%向上
理学療法群:8.3%向上
交互作用はなし

②UPDRS partⅢ
両グループともに有意に点数が低下しました。
交互作用なし

③BBS
有意差は認めなかったものの改善傾向にあった。
交互作用なし

④2分間歩行
両グループともに有意に歩行距離が拡大しました
交互作用なし

・考察


どちらの群もパーキンソン病の症状を有意に改善させることが分かりました。歩行速度に関しては理学療法群の方が介入後に向上していますが、筆者はもっと期間をかければトレッドミル群の方が速度が向上するだろうと述べています。
この研究では認知課題を行っていないにも関わらず、デュアルタスクでの歩行速度が向上しています。認知課題を行うことでさらなる効果を認めるかどうかは不明ですが、認知課題を行うことで長期間効果を維持できるという先行研究はあります。退院後の追跡調査ができない環境であったため、介入後のフォローアップをできていませんが、今後は追跡調査を行えるよう検討していきたいと述べられています。

感想


とりあえずしっかり運動することが良いんだなと再確認しました。
日本ではこういった100人規模の集団に同じプログラムで介入した研究というのはあまりない印象です。おそらく、症状が多岐にわたるパーキンソン病には個別のリハビリが必要と考えるセラピストが多いからだと考えています。(私もその考えです)
LSVTといったしっかり体系化した運動も広まってきている中で、長期間の運動がパーキンソン病の症状に与える影響などを検討した研究がでてくればさらに理学療法の必要性は高まっていくんだろうなと思いました。

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